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昼休み。小畑さんと図書室にいた。
ぼくは梯子にのぼって『普通魔道書~星~上』を取り出した。作者名はやはり、ノエミ・シモンだ。
本の隙間から、何かが落ちる。
「あ」
小畑さんが、それを掴んだ。
「しおり……ですね」
「そうみたいだね。前に読んだ人のかな」
「……違います。ほら」
しおりには、小さな字で、裏と表にメッセージが記されていた。
【私はちょっとした事情から、自分の世界に帰ります。困ったときは、いつでもあの隠し部屋が助けて
くれます】
そこで表のメッセージは終わっていた。そして裏。
【ps 藍田くん。この前借りていた本の続き、ぜひ読んでください。小畑さん、体調に気をつけて】
ぼくはしおりをおりたたんで、ポケットにしまった。
ぼくは紫門先生のいうとおり、前に読んでいた本の続きを、小畑さんは『普通魔道書~星~上』を、臨時の司書の先生のところにもっていった。慣れない手つきで貸し出し手続きをしてもらい、図書室をでる。
「そっか……あの流れ星は先生だったんですね」
「うん。すごい先生だ」
「……また会えるといいなー」
「会えると思う。なんとなく」
「……そうですよね! 会いに行くときは、一緒に行きましょうね!」
「もちろんだよ」
それっきり黙ってしまったので、ぼくは、ずっと思っていたことを小畑さんにいうことにした。
「ね、小畑さん」
「なんですか?」
「……敬語、やめない?」
小畑さんらしいといえば、小畑さんらしいのだけど、なんだかよそよそしくて、くすぐったい。
「そう……だね。同級生だもんね。じゃ、ため口にする」
口調を変えると性格も変わるのか、小畑さんは優しくじゃなくて、いたずらっ子のように笑った。
「あー! 藍田! お前また……」
渡り廊下の向こうから、君島が走ってきた。いつもはこないのに。
「正直にいえっていったのに」
「だーかーらー……。付き合ってるとかじゃないよ」
ね、と同意を促すために、横をみるが、小畑さんの姿はない。
渡り廊下の向こう側にいた。
「じゃあね、小畑君。また明日」
「ばいばい」
手を振って、君島を見る。
「……」
恨みのこもった視線が、ぼくをとらえていた。
「君島」
「なんだよ、リア充」
「空って綺麗だよな」
「なに? 彼女が出来ると詩人みたいになるの?」
「ばーか」
「まぁ、昨日の流れ星は綺麗だった」
「見たのか?」
「部活で体育館にいてさ、気分転換に外に出たらすっごいことになってるから、なんだあれ! って叫んだよ」
「あー。あれお前だったのか」
「え? 学校にいたの?」
「いーや。それよりほら、授業始まるぞ。急ごう」
「こら、おいてくな!」
しおりが落ちないように、ポケットに手をいれて、走る。
これは、いつか紫門先生に会うための、切符になるような気がした。




