いつものメンバーで
部活が終わって、みんなと校門で待ち合わせた。
チアリーダー部のわたしと真菜が一番早かった。
「やっぱ運動部は遅いね」
真菜がポニーテールに結んでいた髪をほどきながらそう言った。
「うん。後かたづけとかあるもんね」
グラウンドの方を見ると、陽に焼けた青木クンが手を振りながら走って来た。
「沙都ちゃん」
青木クンの笑顔にドキンとした。
でも、このドキンは好きな人に向けてのドキンじゃなくて
彼女になったその日に青木クンを裏切ったわたしの良心が、ドキンとしたんだ。
青木クンの笑顔には、わたしに対しての疑いなどひとつもない。
ドキン
「沙都ちゃん……なんか……みんなからお祝いのカラオケとか聞いてびっくりした」
そう言いながら、わたしの目の前に立った青木クンはとても嬉しそう。
「うん。ごめんね。いつものグループにつき合わせちゃって」
「ううん。それだけ沙都ちゃんが人気者ってことだろ?」
そう言って……
さり気なく、わたしの手に触れて、握りしめてきた。
これって……
「お~。さっそく恋人繋ぎですか?な~んか当てられるな~。このままじゃ、わたし、完全にオジャマ虫だな。もう、みんな早く来~い」
真菜、ソワソワとグラウンドに向けて大声をあげた。
わたしは、青木クンの手を振り払えずにいた。
そして、後悔した。
こうなる前に……真菜にだけでも事情を話すべきだったと。
今日のこのカラオケも中止して貰えば良かった。
いつもの乗りに乗っかって、ズルズル来てしまった。
涼とのことを隠そう、隠そうとする思いが結局何も言い出せず、何も行動出来なかった。
涼とあんなことがあって、正直今日の授業中だって、涼とのことでいっぱいだった。
恥ずかしいのはもちろんだけど、いつもそばにいた幼なじみの涼が急に男の子として変貌したんだ。思い出すだけで胸がいっぱいになった。涼の手とか吐息とか匂いとか、何度も鮮明によみがえって来たんだ。その度に顔が熱くなって、冷や汗が出て来ていた。
今まで涼は傍にいたけど、わたしから、最低ニ十センチの距離はずっと保ってくれてた。
たまにジャレあって、身体に触れたりしたことはあったけど、その度にゴメンと言って
謝ってくれてたのは涼のほうだ。
今思えば、涼は確かにわたしに優しかったし、いっつも気を使ってくれてた。
辛い時だって、何も言わず、傍にいてくれてた。
鈍感。
涼の気持ちにも、自分の気持ちにもあんなことが無いと気付かないわたしは、この上ない鈍感女だ。