意識し過ぎのわたし
授業中は、全然身に入らなかった。
背中から、涼の視線を痛いほど感じていたから。
実際にわたしを見ていたのか、分からなかったが、変に意識し過ぎているわたしがいた。
昨日のことを思い出しているんじゃないのか?
ブラウスを脱いだわたしを想像しているんじゃないのか?
そんなことを考えると、体中の血液が両耳へと逆流し、象の耳みたいに大きくなり、真っ赤になってパタパタ動いているように思えた。
『沙都の耳真っ赤だ』とか思われているんじゃないか?
支離滅裂なことばかりを考えて、授業を終え、休憩時間に入っても、涼の席を見ることが出来ずにいた。
後を振り返れない。
大きなため息を付きながら、椅子に座ったまま、机に顔をひっ付けた。
消えて無くなりたい……
涼への気持ちは意識して無かった分、かなり自分へ打撃を受けた。
こんなに涼が好きだったなんて……
机に伏せったまま、また、大きなため息を付いた。
その日のお昼やすみ。青木クンからメールが来て一緒に食べないかと誘われたが、そんな気になれなくて、何かと理由をつけて断った。
今日は朝から、わたしの彼が出来たとその話で持ち切りだったから、苦しくて一人になりたかった。
青木クンに断りを言ってないのに、みんなに否定出来なかった。
青木クンを出来るだけ傷付けたくない。
人気の無い向かい校舎の二階の踊り場。
大きくため息を付いてしゃがみ込んだ。
「沙都……」
聞き慣れた涼の声がした。
見上げると朝からずっと怖い顔の涼が立っていた。
「涼……」
「あんまり……嬉しそうな顔してんじゃねえ」
「涼……」
「もうちょっとで、俺が沙都の彼だって言いそうになった」
立ち上がって涼の腕を引っ張った。
「涼……青木クン傷付けたくないの。だから……お願い、みんなに言わないで。ちょっと待って」
「沙都……」
腕を引き寄せられて抱きしめられた。
「りょ……」
唇で思い切り塞がれ、いきなり舌を絡めて来た。
腰を引き寄せられ、逃げられない。
「あ……」
昨日、何度も交わしたキス。
また、頭の中がボウっとなった。
涼の顔が恥ずかしくてギュッと目を閉じた。
何度も角度を変えて、カブリつくようなキス。
人が来たらどうしよう。
なんて、言いわけすればいい。
抵抗できないまま、膝の力が抜けそうだった。
「あふ……」
「沙都ごめん……もう、俺、沙都への思いは抑えねえから」
そう言ってまた、唇をかさねてきた。
「涼……」
「沙都は……誰にもやんねえ」
「涼が……好き」
授業開始のチャイムがなるまで、わたしは何度も涼とキスをしていた。