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青木クンのお母さんへの告白

空に、厚い雲が立ち込めて来て、ポツポツと雨が頬へと落ちて来た。

目を見開いて、唇を震わせている青木クンのお母さんと、小刻みに呼吸だけを繰り返すことしか出来ないわたし。

国道を通り過ぎる車のエンジン音も、笑い合いながら歩く学生たちの声も聞こえず、

ただ、その時は無音でしかなかった。

最悪だ。

最悪のパターン。

よりにもよって、青木クンのお母さんに、全て見られていた。

なんて……答えればいい。

答えなければ……きっと青木クンのお母さんはこの腕を離してくれないだろう。

雨脚が強くなり、回りを行き交っていた人たちが慌てて走り出した。

青木クンのお母さんが、少し上を向いて空を見上げてから、わたしの腕を引っ張り上げ、座り込んでいたわたしを立ち上がらせてくれた。

「雨……やみそうにないみたいね。会社の駐車場に車を停めてあるから、家まで送るわ」

震えが止まらないわたしの肩に手を乗せて、促すように歩き出した。

さっきのドラッグストアまで一度戻ると店先へと店員がビニール傘を並べているところだった。それを二本手に取り、青木クンのお母さんが、直ぐにレジへと向かい精算を済ませてくれた。その間も、わたしの肩に手を置いたままだった。

わたしの今の状態を正直に話すと、この上なく青木クンを傷付けることになる。

でも、もう、嘘やあやふやな返答で逃げることなど出来ない。

ビニール傘を差して、前を歩く青木クンのお母さんはあれから、一言も喋り掛けて来なかった。わたしは、雨に濡れて、ビショビショになったサンダルと自分の足先を見つめながら青木クンのお母さんの後を歩いた。

青木クンのお母さんの会社は、ドラッグストアから二百メートルほど先にある横断歩道を渡り切った場所にあるビル内にあった。そして、ビルの隣の駐車場に停めてあった私用の車に乗り込んだ。


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