ドラッグストアを出てから
どうにかドラッグストアに辿り着いて、所狭しと置かれている商品を見渡した。
シャンプーやリンス、化粧品などの置かれている棚では女子高生や中学生たちが、ハシャギながら笑い合っていた。他に、何人かのOLやカップルなどもいて、その中に紛れるように、店内を歩いた。
医薬品と書かれたプレートが見えて、そちらに向かう。
その中の一角に、避妊具などが置かれている棚があり、隣には妊娠検査薬が陳列されていた。検査薬にも種類があるらしく、二本入りの物などもあった。
手を伸ばす前に、辺りを見渡した。角の天井には盗難防止用のミラーが設置されている。
入口側を見ると、レジの店員は若い女性だった。男性より、気兼ねなく精算出来そうだ。
その中の一つを手に取り、直ぐに箱を裏返して目を通した。
使用方法や、使用時期や、判定方法などが書かれていた。
それを手にしたまま、入口側のレジに向かった。
無事に精算を済ませて、ドラッグストアを足早で後にした。
駅へと続く歩道に出たところで
「沙……沙都ちゃんだよね」
後ろから声を掛けられた。
ビクリとして、立ち止まり、肩に力が入った。
声の主は、さっきいたドラッグストアから追いかけて来たようで、息を切らせていた。
振り向くと、そこに居たのは、会社の制服を着た青木クンのお母さんだった。
「……」
突然のことで瞬き一つ出来ずにいた。
「あ……」
「やっぱり……沙都ちゃんよね。いつもと感じが違うから、もしやと思ったけど……」
わたしを見た、青木クンのお母さんの表情は硬いものだった。
厚い化粧を施したわたしに絶句したのだろうか?
「こ……こんにちは」
「今日は、買い物?」
「は……はい。今日は青木クンのところに行けなくて……すみません」
青木クンのお母さんが堅い表情のまま顔を横に振って
「ううん。いいのよ。沙都ちゃん、毎日光輝のところへ来てくれていたから、そんなに気にしないでいいのよ」
一刻も早くこの場所から遠ざかりたかった。
「す……すみません。あの、ちょっと急いでいるんで」
ペコリと頭を下げ、この場を逃げ出そうとすると
「ちょ……沙都ちゃん。ちょっと、待って」
青木クンのお母さんに腕を掴まれた。
振り返ると、自分と同じように余裕の無い顔をした青木クンのお母さんがいた。
「あ……あのさ。沙都ちゃん、さっきのドラッグストアで買ってたもの……」
そう言いかけた青木クンのお母さんを凝視した。
「あれ……妊娠検査薬だよね。ま……まさか光輝の……」
身体中の力が抜け出した。
気だけを張っていた身体の力がヘナヘナと抜け出て青木クンのお母さんに腕を掴まれたままその場にしゃがみ込んでしまった。