表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

涼と抱き合って

 ドアが開け放たれたまま、月明りだけが差しこむ薄暗い部屋の中で、思い切り涼に抱きしめられた。 涼の力強い腕が背中にグイグイと食い込む。熱と熱が重なりあって、体中が火照りだした。二人の重なり合った影がお互いの吐息と同じように揺れる。

 流れ出して止まらなくなった涙が涼のTシャツを濡らす。

 身体に込められていた腕の力が抜け、涼が泣きじゃくっているわたしの頬を両手で包み込んだ。

 唇が重なり、熱い舌が入り込んで来た。

 会わなかった時間を埋めるような激しいキス。

 そんな涼の思いに必死で答えるように口内で舌を絡め合った。

 唇が離され、もう一度抱きしめられた。

「俺が……全部悪いんだ。沙都にこんな思いをさせて……達樹に怒られたよ。青木に殴られる覚悟で沙都をとり返して来いって。でも、毎日、青木のとこへ通っている沙都のこと聞いて、もう、俺への思いなんか、フッ切れたんだろうって思ってた。そんな二人の仲に割り込んでもバカみたいだし……俺から青木に直接言うから。沙都は渡せないって……言うから」

「涼……」

「もう沙都は、誰にもやらない。どんなことしても、絶対に離さねえ」

「涼……わたしも……もう、涼から離れない」




 それから涼は、眠れない夜を過ごしていたわたしのベッドの横で、ずっと手を握っていてくれた。

 わたしに会えなくて、サッカーに没頭し過ぎて、先輩とケンカになった話や、達樹と水華のエッチな話など、わたしの笑いのツボを押さえた話ばかりをしてくれた。

 水華が達樹にメロメロだってことは気付いていたけど、涼の話に寄るとそれは逆で、達樹の方が、かなり水華にイカレテいると、涼が笑い飛ばした。

「これ以上は男同士のエロい話は女には聞かせられないな」

そう言った涼のほっぺを指で掴んで

「わたしのことは、言って無いでしょうね!言ったら殺すよ」

「いいましぇん。じぇったいいいましぇん」

痛そうにそう言ったので、指を離してやった。

「でもなー。色々聞かせて貰ってるから、俺が言わないわけにはいかないし……」

「な……何それ?いったいあんたたち、どんな話をしてるのよ!」

「イヤ……ほら、今後の勉強みたいなもんだし」

「はあ?」

今度は両頬を指で掴んでやった。

「おえん。おえん……ゆうへぇ」

涙目になって、許しを乞うてきた。

「お前……元気じゃねえか」

 両頬を摩りながらそう笑い掛けて来た。

 そんな涼が憎たらしくもあり、可愛くもありで、どうしようもなくて、今度はわたしから涼の唇に触れた。

 突然のことで、キョトンとしている。

「クッそんなことすっと……やっちまうぞ」

 そう言って、ベッドの上にいるわたしの隣に潜り込んできた。

「え?」

「エロネタ見付けてやるかんな」

 わたしを両腕で抱き寄せてきた。

「そんなネタ提供してやらないから」

 そう言ったものの、わたしの顔を胸に閉じ込めて、髪を撫でて来るもんだから、ドキリとした。

「嘘だよ。沙都は、絶対大事にするって決めたから。これで、粗末に扱ったら青木からとり返す意味がないしな。だから、今日はこのままゆっくり寝ろ」

 優しく何度も髪を撫でられ、これ以上の安心は無くて、まるで、小さな子供に返った気になって、言われるままゆっくりと目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ