夏休みに入って
次の日、いつも通り学校へ登校した。
教室へと続く廊下を歩いていると、あの真樹と呼ばれていたマネージャーの友達からは『厄病神』の声を浴びせられた。
教室に入ると、クラスメイト達からは、思った以上に数奇な眼で見られているのがヒシヒシと分かった。
そんな視線に挫けそうになったけど、教室の一番後ろの席にいる涼を少しだけ視界に入れて、気分を落ち着かせた。
わたしと視線を合わそうとしない涼だったけど不思議と姿を見るだけで気分が落ち着いた。背筋をピンと伸ばして、何事にも動じず、やるだけのことはやろうと心に決めた。
明日からは夏休みと言うこともあって、授業はなく、ただ、慌ただしく過ぎて行った。
そして、わたしはチアリーダー部の顧問の先生に、休部届を出した。
期間は未定だったが、一応夏休み中の間だけと、頭を下げた。
膝の調子も良くないこともあり、部活を休部することにした。
休むほどの怪我ではなかったが、毎日青木クンの病院に通う為に夕べから休部を決めたいたのだ。
続いて部室に向かって、キャプテンや先輩たちに頭を下げた。
同じ部の真菜は、休部すると告げたわたしに、
「沙都を応援する」
と言ってくれた。
「変わりに涼とのことも応援してね」
と付けくわえて来たので、二コリとだけ頷いてその場をやり過ごした。
学校から一旦家に帰って、私服に着替え、青木クンの入院する総合病院へと向かった。
病院に着いて、病室に向かうと青木クンと青木クンのお母さんが居て、昨日はパジャマを着ていた青木クンが私服でベッドに腰かけていた。
部屋も綺麗に片付いている。
「沙都ちゃん。来てくれたんだ」
わたしの出現に座っていた青木クンがゆっくりと立ち上がった。
「あれ? どう言うこと?」
綺麗に片付いている病室内を見渡しながらそう聞いた。
「うん。ごめん。連絡出来ていなくて。あのね、野球部の監督の勧めで転院することになったんだ」
「転院?」
「うん。監督の知り合いの病院。リハビリ施設が整っているらしくてね」
「遠いの?」
「うん。学校からは遠くなるかな?」
「高井さんだっけ? よかったら、転院先へ車で一緒に行きましょう」
青木クンのお母さんがにこやかに話しかけて来た。
「はい。青木クン歩けるの?」
「うん。少しくらいならね。コルセットしているし、痛みもそれほどないんだ。それに半分はスポーツ疲労骨折みたいなもんだし」
青木クンがくっきりした二重の眼をこちらに向けて舌を出した。
「スポーツ疲労骨折?」
始めて聞く言葉だった。
「そうなのよ。事故だけが原因じゃないんだから、高井さんは責任を感じないでね」
青木クンのお母さんが青木クンによく似た笑顔でそう言ってくれた。




