学校をさぼって
病室を出てから、学校には帰らず、そのまま家に帰った。
家は、ママもパートに出かけた後だったらしく、誰もいなかった。合鍵で家の中に入り、そのままカバンを机の上に放り投げて、ベッドに倒れ込んだ。
仰向けになったまま、天井を見上げると、涙が頬を伝い始めた。
青木クンを放っておけない。
あんなに弱気になっている青木クンに、別れようとはどうしても言えなかった。
この先、監督や野球部員たちやマネージャーに責められて、もっと弱気になるんじゃないかと思うと……別れようとは言えなかった。
そして、自分の中にも確かなものが芽生えていた。
涼と青木クンとの間で揺れ動いていた気持ちが、はっきりとした形で、現れていた。
このまま……青木クンの傍にいて、助けになりたい。
無力なわたしだけど……助けになりたいと思った。
だから、もう……涼とは付き合えない。
今までどおり、ただの幼なじみの関係に戻ろう。
涼が好きだけど……
涼が好きで堪らないけど……青木クンの彼女になるとそう、心に決めた。
眼を瞑れば、涼の顔ばかりが浮かんで消えた。
涼の笑った顔や、拗ねた顔がまるでスライドショーのように浮んで消えてを繰り返した。
そして最後に、涼に抱きしめられた時のことを思い出した。
あの時、何度も好きだと言ってくれた涼。
わたしも……呪文に掛ったように涼が好きと答えていた。
抱きしめ合って、初めてお互いの肌の温もりに触れて、幸せで……心が満たされていた。
「涼……」
嗚咽を吐きながら何度も涼の名前を呼んでいた。
そして、泣き疲れて、そのままの格好で眠りに落ちた。




