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青木クンの本音

 視線を床に落とすと、さっき青木クンが力任せに投げつけたと見られる缶コーヒーのスチール缶が凹んだ状態で足元に落ちていた。

 何気にしゃがんで、それを手に取った。

 顔を上げると、嬉しそうな顔をしていた青木クンが一変して真剣な面持ちになった。

 視線は、わたしが手にしている凹んだ空き缶へと向けられていた。

「ごめん。本当は、俺、全然余裕なんか無いんだ」

「青木……クン?」

「それ、投げつけて、凹ませたの俺だし」

 青木クンの眼に暗い影が差し込み、声のトーンも重くなってマネージャーと話していた時と同じになった。

「こんなことになって先輩たちに顔向け出来ないし、この先のことを考えると……全然余裕なんかないんだ。こうなってしまった以上は仕方ないと思うけど、俺が抜けたことに寄ってチームが乱れたりしないかと不安で押し潰されそうになるんだ」

 そう言ってベッドの上の白いシーツを両手で握りしめた。

 青木クンが本音を喋りはじめた。

 声を震わせて……

 本音を喋りはじめた。

「みんなに迷惑掛けて、どの面下げて復帰出来るんだとか……もう、野球が出来なくなるんじゃないのか?ってそんなことばっか考えてる」

「ごめん……青木クンごめん」

「だから……沙都ちゃんは悪くないんだって。俺こそ……ごめんね。俺の本当の心の内を打ち明けちゃったりして……」

「ううん。無理して笑顔作られるより、本当の気持ち言ってくれた方がいいから」

そう言って駆け寄り、青木クンの目線に合うようにベッドの傍でしゃがんだ。

「沙都……ちゃん。俺……全然カッコ良くないだろ? こんなことでメソメソしたりしてさ。呆れるよな」

 青木クンから眼を離さず思い切り顔を横に振った。

「ううん。そんなことない。それが……当り前だよ。誰でもそうなるって」

 青木クンが二コリと笑った。

「沙都ちゃん……優しいね」

 シーツから手を伸ばして、ギュッとわたしの手を握りしめて来た。

 冷たい手だった。

 青木クンの冷たい手を握り返して言ってしまった。

「わたし……が傍に居るから……元気出して」


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