涼が好きだ
「そっか……。良かった。今日はマジでヤバイとか思ってたし。なあ、沙都……」
声のトーンが急に甘くなった。
「なに?」
「このまま……続けていいか?」
耳元で優しくそう呟く。
涼に……
涼に大人しく抱かれていたなら……
涼は……わたしを好きでいてくれる。
涼は……ずっとわたしを好きでいてくれる。
このまま、涼に抱かれていたなら
涼の気持ちを繋ぎとめておける。
「いいよ……涼なら、いいよ」
涼がわたしの制服のブラウスのボタンを一つずつ、はずし始めた。
ボタンを全開にして、ベストとブラウスを同時にはぎ取られた。
そして、わたしをフワリと抱き上げた涼は、そのままベッドの上に寝かせて、昨日と同じように覆い被さって来た。
お風呂に入ったばかりだったのか、洗いざらしの前髪から、涼の茶色掛った瞳が見える。
毎日見て来た涼の顔は男の子のわりに小さめだ。くっきりと縁取られた二重の目につんとした澄ました鼻。独特の薄い唇が、意地悪くも見え、幼くも見える。
視線を絡めたままゆっくりと顔を近づけて来て、わたしの唇を塞いだ。
眠るように眼を閉じた。
ついばむように、その薄い唇を何度か重ねてから、わたしの唇をこじ開け、舌を絡ませてきた。
わたしは涼が好きだ。
こうなることに何の違和感も無かったのは事実だ。
ただ、照れくさくて、恥ずかしくて、それを取り除けば、ごく、自然なことだった気がする。
触れ合う段階が早急過ぎただけで、心はちゃんとお互い繋がっていたんだと確信した。
指と指を絡めるだけでも、涼の気持ちが感じられて、身体中の力が抜ける。
目を閉じて、涼から漂って来るボディーソープとシャンプーの残り香にめまいがするほど酔っていた。
涼の唇がわたしの身体の輪郭を縁取るように下に下にと滑り降りて来て、両手を生乾きの涼の髪に指を絡めた。