総合病院に運ばれて
青木クンとわたしは、二人一つの救急車に運ばれた。
膝を擦り剥いただけのわたしは、青木クンの付き添いとして乗り込んだ。
救急車に乗り込んだ時、救急車の後にパトカーが滑り込んで来て、三人ほどの警官がゾロゾロと降りて来た。そして、女の人たちに支えられていた女子高生を取り囲んだ。
体格のいい警官たちが笑顔一つ見せず、サラリーマンの男性や理髪店のオジサンに話しを聞いていた。
それは、とても怖い光景に思えた。
わたしと青木クンは被害者で、怖い思いをしたが、これから置かれるその女子高生の立場を考えると寒気がした。でも、一番不憫なのは、わたしを庇って、怪我をした青木クンだ。
さっきまで、元気にわたしに話しかけて来ていた青木クンだったのに今はぐったりとしたままだ。
担架の上に乗せられた青木クンの手を泣きながら、ずっと握りしめていた。
総合病院に着いて、青木クンは救急搬入口から救急治療室に運ばれた。
救急治療室の前に置いてある待合の椅子に座り、閉じられた扉をジッと見つめていた。
救急治療室の前は薄暗がりで、一人切りのわたしは、寂しい思いと、不安な思いが交互して、何とも言えない気持ちになった。
ここに来てからすぐに、警察官と救急隊員に青木クンの身元やわたしの身元を事故の状況などを聞かれた。
ただでさえ関わったことのない人たちの前で、受け応えする中で、心ぼ即手、終始震えていた。
取り調べが終わり、わたしは一人、この場所に取り残された。
青木クンをそのままにして、家には帰れない。
どうしよう。
青木クンの身になにかあったら……どうしよう。
そう思うと涙が止めどなく流れて来た。
その薄暗がりの中で、ハンドタオルを眼にあてて泣いていた。