掛け違えたボタン [千文字小説]
二人で歩いた一本道。
それはいつから離れ離れになって、交わることをやめたのだろう。
それは“離さない”と決めた、ただ一つの道。
あなたはそれをどう思っていたのだろう?
どう思いながら、今を生きているのだろう?
あたしは、永遠にあなたを傍で感じられると思っていた。
でも、気が付くとあたしは一人だった。
気が付くと隣にはあなたがいなかった。
でもなんで、もっと早くに気が付くことができなかったのだろう?
あんなにあなたのことが好きだったのに、いつの間にか“あなた”という存在を忘れていた。
でも、あなただけを見るんじゃなくて、余所見をしていればよかったんだ。
そうすれば、こんなに悲しむことはなかったのに。
本当にあたしは馬鹿だ。
本当にあたしは馬鹿だと思う。
だって、そんなことをすれば、一途じゃなくなる。
そんな恋愛に意味などないのに。
それじゃあ、あなたと一緒になってしまうというのに。
そういった何気ない気持ちが、次々と虚無感に変わっていく。
きっと、あたしは“寂しがり屋”なのだろう。
だから、あなたを求めたのだろう。
真相はわからないけれど、きっと、本当は、そうなのだろう。
あたしだって馬鹿なだけじゃない。
それなりに信念を持ってあなたに立ち向かったはずだ。
それはあなたの隣にいれるようにするため。
あなたと並んで歩けるようにするためだった。
けれど、それはもはや叶わない夢でしかない。
あたしとしては辛いけれども、受け入れるしかないのだ。
所詮、あたしにはそんな人生しか待っていないのだから。
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あたしは、どれだけの時間を我慢しただろうか?
「ごめん!」
「仕事が長引いちゃってさ…」
「今から、どこ行く?」
そんな風に、軽くしか謝らないあなた。
でも、そもそも可愛くもないあたしがさ、 世間のいう“イケメン”の横を歩こうとしてたこと自体が大それたことだったんだよ。
うん! そう思うんだ。
あなたが浮気していたことを知った今ではね。
だって、おかしいじゃない?
いつも遅刻するときに限って、会社とは違う方から来る。
なんでなのかな?もっとましな嘘は吐けないのかな?
それとも、ましな嘘が吐けなかっただけなのかな?
ずいぶんの間、そんなことに気が付かなかった私も、もっと“まし”になるべきだけれど。
でも、もういいんだ。
君の過去を責めるのは、やめようと思うんだ。
だからさ、 今は泣いても良いよね?
君のいない、 この世界のために。。。