理想を求めて、
『最強になりたい。』
そう思った。
『誰にも負けたくない』
そう願った。
"誰にも負けない人"
それが僕の理想だ。
彼らは僕の理想を知り、手を差し伸べてくれた。
「我々についてこないかい?
——君を"最強"にしてやろう」
嬉しかった。
這いつくばるだけの人生が終わる。
底辺から上がれる。
"強く"あれる。
これ以上ない幸せだ。
何を犠牲にしてもいい。
僕にはもう、失うものがないから。
彼らの研究所に訪れた。
無機質な白が永遠と続く廊下。
不思議とワクワクした。
これで自分は最強になれる、そう思ったから。
彼らは筋肉を弄った。
——誰にも負けない体格、そして力をつくるために。
彼らは僕の身体の欠陥を機械で補った。
——"完璧"をつくるために
彼らは僕の脳を弄った。
——誰にも負けない頭脳をつくるために。
そして、彼らは様々な事を教えてくれた。
たくさんの知識をつけてくれた。
何にもない僕を最強にするために。
改良された脳、筋肉のおかげで何にも苦ではなかった。
運動も、勉強も、簡単にできた。
楽しかった。
これで強くなれる。
嬉しかった。
——そして、とうとう彼らを追い越した。
世界を追い越した。
最強を手に入れた。
だけど、足りない。
何かが足りない。
何が足りない。
今、僕は最強なのに。
何が足りないんだ。
これが願っていた事なのに。
ふと、気づいた。
彼らは何の手術を施した?
彼らは僕の身体に小さな機械を何個も埋め込んでいた。
かけた指も、治らない傷も今は鈍い光を放っている。
今考えてるのは本当に僕なのか?
——今の僕は『最強の人』と言えるのか?
いや、言えない。
今の僕は、機械だ。
これは、僕の望むものじゃなかった。
でも、もう遅い。
全てが終わった今は受け入れるしか道はない。




