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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

【婚約破棄短編】ニセモノ聖女に追放されましたが、精霊たちが崇拝するので辺境で贅沢に暮らします

作者: ちいもふ
掲載日:2026/06/06

「エリア、君のような力のない聖女はもう不要だ! 我が国の宝であるベアトリスこそが、真の聖女に相応しい!」


 王太子の傲慢ごうまんな宣告と同時に、私の左手から聖女の紋章が消えた。



 派手な光の演出と、宝石を散りばめたような奇跡を操る「ニセモノ」のベアトリス。


 彼女が操っていた華やかな奇跡の正体。


 それは魔法でも神の加護でもなく、私が十年かけて精霊と結んできた『土壌浄化の魔力循環システム』を、魔道具で無理やり吸い上げていたものに過ぎない。


 私はただ、静かに微笑んだ。


「……ええ、存分に愛でて差し上げればよろしいわ。『偽りの繁栄』が、どれほどもろいものか知らないままに」




 王宮を去り、流れ着いたのは、地図からも忘れられた辺境の荒野。


 だが、足を踏み入れた瞬間、荒れ果てた大地に奇跡が起きた。


 精霊たちが、私を待ちわびていたかのように足元で踊り、枯れ木が瞬時に花を咲かせ、大地が黄金色に脈動を始める。




 その頃、王都では――。


 ベアトリスが手をかざすたび、大地は悲鳴を上げ、噴水から湧き出るはずの水は泥水に変わり、王都全域に深刻な「死」が浸食していた。


 彼女が精霊を呼べば呼ぶほど、契約を無視された精霊たちの怒りは国を焦がし、穀物は灰へと変わる。






 一年後。


 飢餓きがと暴動に塗りつぶされた王都から、変わり果てた姿の王太子が辺境の領主邸に現れた。


「エリア、頼む! ベアトリスは……詐欺師だったんだ! 精霊たちが俺たちを殺そうとしている! 戻ってきてくれ、王国を救えるのは君しかいない!」


 私は、窓の外に広がる、精霊の祝福に満ちあふれた領地を眺めた。


 紅茶の湯気が、優雅に立ち上る。


「戻る? 貴方はまだ勘違いをされていますわね」


 王太子の足元に、一通の契約書を放り投げた。


「貴国が枯れ果てているのは、私が去ったからではありません。貴方たちが『本物』を捨て、『偽物』という名の不純物を王宮に迎え入れた結末ですわ」


 冷ややかな瞳で、かつての婚約者・・・・・・・を見下ろした。


「私は、この地の領主として多忙なのです。……お帰りなさいませ。ニセモノと二人で、滅びゆく王都という名の棺桶かんおけの中で、心ゆくまで最期を看取って差し上げなさい」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


 聖女エリアにとって、国を去ることは「追放」ではなく「契約解除」に過ぎませんでした。


 本質を見極める目を持たない者に、本物の奇跡を委ねる道理はない――。


 そんな彼女の静かな矜持を感じていただければ幸いです。

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