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第13話 ガンナーふたり

ほのかはウィンドウを一通り確認すると、すぐに気持ちを切り替えた。


「…よし」


98式軽機弩を肩にかけ、周囲を見渡す。


「とりあえず、今日はガンナー二人だし」


軽く銃口を通路の奥へ向ける。


「基本は遠距離から攻撃ね」


「…うん」


79式軽機弩を構える。


昨日とは違う、今日はほのかと同じ武器種だ。


ほのかは続ける。


「小型は普通に撃って処理。群れは距離取りながら削る」


それから、指を二本立てた。


「熊とかタフなやつは」


「罠と麻痺弾」


ほのかは私をちらっと見た。


「最悪さ、銀盾でチャージの時間稼げる?」


私は一瞬だけ黙った。


銀のバックラー。


昨日、熊の爪を流した盾。


「…できる」


ほのかが、にやっと笑った。


「よし、頼もしい」


それから軽く拳を突き出す。


「じゃ、役割確認」


機弩の安全装置を外す音がした。


「私は後ろで射線管理、必要なら罠」

「しずくは前、盾で流して時間作る」


「…うん」


ほのかが親指を立てた。


「完璧」


コメント欄が流れる。


『役割分担きた』

『ガンナー×ガンナー構成』

『盾役ガンナー草』

『このパーティー変則すぎる』


ほのかは笑いながら言った。


「普通のガンナーは盾持たないけどね」


私は銀盾を軽く撫でた。


「…普通じゃないから」


ほのかが一瞬きょとんとして、次の瞬間に吹き出した。


「ふふっ、それ名言かも」


でも、すぐに真顔になった。

視線が、奥の闇を捉える。


「…来る」


私も、79式軽機弩を構えた。


「いくよ、しずく」


私は深く息を吸った。


「…うん」


二人の機弩が、同時に通路の闇へ向けられた。


「前方、モンスターの気配…たぶん犬」


ダンジョンハウンド。

昨日も戦った、初心者殺しのモンスター。


速い、群れる。


ほのかは続ける。


「数は…3」


一瞬だけ集中して、気配を探る。

そして軽く頷いた。


暗い通路の奥。

まだ姿は見えない、もうすぐ来る。


ほのかが言った。


「射程に入ったら、一気に狙い撃とう」


昨日とは違う、今日は二人だ。


「たぶんさ。ガンナー二人なら」


通路の奥で、影が動いた。


赤い目と低い唸り声。


「接敵する前に」


機弩の安全装置が外れる。


「いける」


私は照準を合わせた。


「撃て!」


二つの機弩が、同時に火を吹いた。


79式軽機弩の銃身が跳ねる。

乾いた発砲音が、石の通路に反響する。


弾丸が闇を切り裂いた。


ほのかの射撃は正確だった。


狙いは迷わないし、照準がぶれない。


犬の額に、ヘッドショット。


ダンジョンハウンドの頭が弾かれたように揺れ、そのまま勢いを失って崩れる。


私はその隣で、必死に引き金を引いていた。


狙いは、ほのかほど精密じゃない。


とにかく撃つ、弾をばら撒く。


当てるのは、ほのかに任せる。


私の役目は別だ。


弾丸が床や壁に当たり、火花が散る。

犬の動きが、一瞬だけ鈍る。


躊躇させる、それだけでいい。


ほのかが、次の弾を放つ。


二発目が、犬の眼を貫いて脳まで抜けた。


『うおお』

『役割分担きた』

『弾幕+精密射撃』

『これ強い』


三匹目の犬が最後に飛びかかろうとするが、先にほのかの弾が額に吸い込まれた。


ヘッドショット、犬の身体が光になる。

ほどなくして、三匹すべてが粒子になって消えた。


通路に残るのは、魔石と素材。

そして金属の光。


私は恐る恐る近づいた。

床に落ちているのは、長い鞘だった。


システムウィンドウが開く。


【ローグライクドロップ:89式制式太刀】

自衛隊制式採用の刀。

片手でも両手でも扱える。

軍の制式装備だけあって信頼性が高い。


「…太刀」


ほのかが覗き込む。


「おお」


ちょっと興奮している。


「また装備ドロップ」


『太刀きた』

『しずくガチャまた当たり』

『装備運やばい』


私はゆっくりと太刀を持ち上げた。

重さはあるけど、バランスがいい。


不思議な感覚だけど、使える確信がある。


「それ、普通なら筋力とか技量いるやつだよね」


「うん」


でも、ローグライク装備は違う。


私はゆっくりと太刀を抜いた。

刃が光を反射する、静かに空を切る。


「…使える」


ほのかが笑う。


「いいね」


機弩を肩に担ぐ。


「ガンナーなのに、どんどん近接装備増えてく」


私は少しだけ考えた。


それから太刀を背中に固定し、軽機弩を構え直す。


「…ロックは…盾のまま」


ほのかが頷いた。


「正解」


そして前を指さす。


「まだ奥にいるよ」


気配察知、視線が暗闇を捉えている。


「しずく」


機弩を構え直す。


「このパーティー、思ったより強いかも」


私は銀盾を握りながら、小さく頷いた。


通路を進みながら、ほのかが気軽な声で聞いた。


「そういえばさ、しずく」


機弩を肩に担いだまま、横目でこちらを見る。


「いまレベルいくつ?」


「…え」


私は少し考えた。

昨日、熊を倒して上がった。


「…2」


ほのかが頷く。


「お、同じだ」


軽く指を二本立てる。


「うちも2」


そしてすぐに笑った。


「じゃあさ、3になるまで頑張らないとね」


「…3?」


ほのかが顎で奥を指す。


「一層ボスの推奨レベルが3って話だし」


確か講習でも言っていた。

無理をするな、推奨レベルで挑め。


そのとき、ほのかの歩みがぴたりと止まった。


「…反応」


声が一段低くなる。

私はすぐに機弩を構えた。


暗い通路の奥、石影の向こうに小さな赤い光。


「…ラット」


違う、普通より大きい。

一回り、いやもっとだ。


毛が逆立ち、目が赤く血走っている。

システムウィンドウが、小さく表示された。


【強化個体】


ほのかが小さく言う。


「強化ラット」


そしてすぐに数える。


「4匹」


コメント欄がざわつく。


『強化群れ』

『初心者キラーきた』

『レベル2で4匹はきつい』


でも、ほのかは落ち着いていた。


「しずく、近づくまで遠距離で削ろう」

「たぶん、四匹全部は仕留めきれない」


視線を横に向け、私の背中の刀を見る。


「しずく、その太刀いける?」


私は背中の柄に触れた。

89式制式太刀、不思議と怖くない。


「…いける」


ほのかが、にやっと笑う。


「いいね」


機弩の照準を合わせる。


「じゃ、開幕削るよ」


赤い目が暗闇で揺れた。

79式軽機弩が震える。


銃口が跳ね、火花が散る。

薬莢が床に弾けて転がる。


弾丸が、洞窟の空気を裂いて飛ぶ。


私は、ほのかみたいに狙って撃てない。

まだ難しい。


照準を合わせて、ヘッドショットなんて芸当はできない。


だからばら撒く。

犬のときと同じだ。

接近をためらわせるための弾。


ほとんど祈るような気持ちで、私は引き金を引き続けた。


弾丸が壁に当たり、床に跳ねる。

ラットの足元をかすめる。


強化ラットたちの動きが、一瞬だけ鈍る。

その隙を、ほのかが狙い撃つ。


ヘッドショット、強化ラットの体が痙攣し、そのまま光に変わる。

二匹目も同じ、正確すぎる射撃だった。


『うめえ』

『鷹の目つよ』

『弾幕→ヘッドショット連携』


しかし、残り二匹はすぐそこまで来ている。

弾幕を抜けて、一気に距離を詰めてくる。


赤い目から推測される、飛びかかる軌道。

私は迷わなかった。


79式軽機弩を床に置く。

そのまま、背中の太刀を引き抜きながら銀盾を構える。


強化ラットが跳ぶ。

普通のラットより、明らかに速い。


爪が銀盾を擦る。

受けずに流す。


返す刃で、体を捻り太刀を振る。

強化ラットの腹が裂ける。


まだ倒れないが、動きは鈍った。


背後で、ほのかが動いた。

止まっていた足が、滑るように移動する。

射線を作る。


「しずく!右!」


私は瞬時に体をずらした。

次の瞬間、弾丸がラットの頭を撃ち抜く。


残り一匹が、怒り狂ったように跳ぶ。


銀盾を前へ出しながら、足を踏み込む。

直前で、わずかに盾を引いた。


懐まで誘う。


ラットが牙を開けるに合わせて、太刀が走らせた。


一閃と共に、赤い目が真っ二つに裂けた。

ラットの体が光に変わる。


ほのかが、軽く口笛を吹いた。


「やるじゃん」

「ガンナーなのに、普通に前衛できてる」


私は息を整えながら、小さく言った。


「…弾…なくなっちゃった」


床の軽機弩のマガジンは空だ。


ほのかが笑う。


「でも勝った」


そして前を指さす、光が残る場所。

ドロップが現れ始めていた。

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