4月ー3 『桃花の部屋』
縁結びの大きな桜の木を横目に校門を出ると、何となく桃花の家への帰り方がわかった。
きっと桃花の身体が覚えているのだろう。
学校から15分ほど歩くいた住宅街にピンクの屋根に黄緑色の壁の家があった。
表札には桜野と書かれている。
形や大きさ自体は至って平凡だが、色だけ見るとファンシーな世界観だ。
周りの家は白や紺、茶色がベースなだけあって桜野家だけ浮いて見えた。
これがメインキャラとモブキャラの違いなのか?
意を決して家に入ってみることにした。
鍵は鞄の横ポケットに入っており、落としてとすぐ気づくように桜のチャームが付いたキーケースにしまわれていた。
-ガチャッ
「…ただいま-。」
「あらっ、おかえりなさい〜」
扉を開けると桃花そっくりな女性が挨拶を返してきた。
顔は桃花そっくりだが、若干背が桃花よりも高い。
桃花は目の高さよりも上で髪をまとめたツインテールだが、彼女は耳よりも下で結んだおさげツインテールだ。
歳は桃花よりも同い歳か少し上ぐらいに見える。
もしかして桃花のお姉さんか?
いや、でも桃花の家族構成に兄弟はいなかったような…。
「どうしたの〜?ママの顔そんなに見つめちゃって。
何かついているかしらぁ?」
「…!んーん、なんでもない!」
「あら、そう?ふふっ、まぁいいわ。
早く中に入りなさ〜い。」
まさかの桃花ママだった。
ゲームではお母さんの描写は一切出てこないのでわからなかった。
こんなに若く見えるお母さんが出てくるのはゲームあるあるではあるが現実で目の当たりにするとやはり驚く。
俺は戸惑いながらも洗面所で手を洗ってから2階にある桃花の部屋に向かった。
桃花の部屋に入るとそこはピンクの色味が強い女の子の部屋だった。
壁紙は一般的なクリーム色をしているが、置かれている家具や小道具のほとんどがピンクや黄緑色のパステルカラーで桜モチーフの物が多い。
入口から見て右斜め横にあるベッドにはいつも一緒に寝ているであろう桜のモチーフを耳につけた白いの大きなうさぎのぬいぐるみがドスンと寝転がっていた。
このうさぎは桃花が好きなサクラビットというキャラクターだ。
入口から正面の勉強机の上にも勉強をする桃花を応援するかのように小さなサクラビットのぬいぐるみが2匹並んで座っていた。
桃花の部屋を見回してみると入口のすぐ右横にある本棚の中に気になるものがあった。
光の反射なのか一冊だけきらきら輝いて見える白い本があった。
手に取ってみるとその本にはタイトルや表紙の絵がない。
真っ白なただの本。
でも何か気になる。
本を開いてみるとちゃんと文章は書かれていた。
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-このゲーム世界への転移者として選ばれた者へ。-




