6月ー3 『運命の分かれ道』
今日はいよいよ、ラブダイの主人公・遥斗がヒロインを1人選び、分岐ルートに話が進む運命の分かれ道の日だ。
ゲームのシナリオでは主人公が母親から2人分のプラネタリウムのチケットを貰い、プレイヤーの任意のヒロインを選択し、選んだヒロインの個別シナリオに進む。
俺は、桃花は、遥斗に選ばれて一緒にプラネタリウムに行くことができるのだろうか…。
そんな期待と不安を胸に今日も放課後、図書室へ向かう。
テスト勉強は終わったが、放課後みんなで図書室に集まって少しお話してから帰るのが恒例となった。
話には入ってこないが麗華も図書室内にはいて、俺たちの会話に聞き耳を立てるように図書室の隅っこで本を読んでいる。
そして運命の瞬間ー。
ゲームのシナリオを知っていて、人生がかかっている俺と麗華こと白雪さんは息を飲んだ。
「プラネタリウムのチケットが余っているんだけど、」
さぁ、誰を選ぶ?
「こないだのテスト勉強のお礼も兼ねて、海音先輩一緒に行きませんか?」
選ばれたのは海音先輩だった。
何も知らない海音先輩は、
「えー!嬉しい!行きたい行きたい!
楽しみにしてるねー!」
と元気にはしゃいでいる。
確かに、海音先輩は怪我をした遥斗を保健室に連れて行ったり、遥斗を含めた後輩たちに勉強を教えたりと遥斗に1番近いところにいたのかもしれない。
今回は俺のアピール不足だ。
俺の敗北…。
遥斗と海音先輩が一緒に帰り、栞ちゃんも帰っていくのを見届けてから、目配せをして俺と白雪さんはまた昨日の空き教室に集まった。
「ちょっと!どういうことよ!?
なんで私が…麗華様が選ばれないんですの!?」
「さすがに白雪さんはアピール不足じゃないかな?
きのうの登場時とかさ、もっと優しく声掛けたりさ、今日も俺たちに混ざってくればよかったのに」
「麗華様がそんなことするわけないでしょう?」
「どんだけ麗華様としてのプライドが高いんだよ…。
とはいえ、今回は俺たちの完敗だな。」
白雪さんもかなり落ち込んでいるように見えたが、怪しい微笑みを浮かべながら、
「でも一つだけ逆転する方法があるわよ。」
「え?」
「海音先輩の邪魔をすればいいのよ。
海音先輩とのラブエンドを迎えずに、ノーマルエンドに持ち込めばまたヒロインを再選択して、わたくし達のターンになりますわよ。」
確かに、白雪さんの言うことは一理ある。
ある一定数の好感度まで上げることができなければヒロインからの告白もされないし、主人公から告白をした場合もヒロインに振られるパターンもある。
それがノーマルエンド。
ノーマルエンドになった場合はそのヒロインとは友達のままになり、他のヒロインを再度選択してまた別の個別シナリオへとストーリーが進んでいく。
少し外道かもしれないが俺たちは海音先輩の足を引っ張ればまたチャンスが巡ってくる。
「ということで、明日からは遥斗と海音先輩のデートを尾行するわよ!」
というわけで、物語は海音ルートへと突入した。




