タンホイザー
官能と肉欲の女王に
愛されし者、タンホイザーよ
肉欲と快楽に溺れし者よ
苦痛を退け、陶酔の淵に沈み
貞淑なる聖処女を見いだせ!
エリザベートのもとへ帰れ!
そしてその見いだせし心を歌え
いざや、歌合戦の幕を開けろ!
おお、嘆かわしきか
汝、タンホイザーよ狂気に堕ちたか
官能と肉欲の讃歌を吟じるか
おお、なんたる悲劇を演じるか
歌合戦の勝利は汝でなく
精神の愛を頌えし、ヴァルトブルクに輝く
去れ! 官能と肉欲に溺れし者め
罪を清める巡礼の道を行け!
しかし聖処女エリザベートは
苦悩に沈む彷徨える者の魂に
精神の愛を見いだして祈った
神よ! 愛の形を知らぬ者を赦せ!
エリザベートは祈った
来る朝も、深ける夜も祈った
肉体を酷使し、魂で祈った
身体が枯れ果て、命の灯火が消え去るまで
「これが愛の形なのです
苦痛を厭せず肉体もて
沈黙もて人の幸福を祈る
それで命を失おうとも……」
聖処女エリザベートの祈りは
神に通じ、タンホイザーの心にも
そのタンホイザーの眼前を
エリザベートを悼む葬列と鐘の音
命なげだす愛に応えるは
また、命なげだす愛のみ
肉欲に翻弄されし者もまた
回心とともに命の灯、消えゆく運命
おお、見よ法皇の杖を!
消えた命が若葉に宿り
芽吹いているではないか
祈りの愛は、死なないのだ!