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7.閣下とひょろ男と大男

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閣下視点


馬を走らせ急ぎ屋敷に戻った。


この討伐依頼を受けなければよかった。自分の欲に負けてしまった。

あの少女の死体があるだけでよかった。結婚なんて考えずに···いるだけで良かった···


馬が頑張って走ってくれたためすぐに屋敷に着いた。1日かかるところを半日で着いてしまった。


馬をそのまま屋敷の玄関まで走らせると、馬から飛び降りてすぐに家令を呼び付けた。


ゼェーゼェー

慌てて走ってきた家令が駆け寄ってきたが、家令が声を発す前に「どういうことだ?」ととても低い声で問い詰めた。


そのまま執務室へ移動し、家令は状況について説明をした。




ことの発端は

旦那様が討伐に出て4日目 その日は衣替えの日でした。旦那様がお帰りになる前に衣装部屋の衣替えを従事者2名が行っていたところ、その内の1名新人の従事者が誤って旦那様の寝室に入ってしまい、それに気が付いたもう1名が慌てて寝室に行き連れ戻そうとしたところ、死体がないことに気づき発覚ししました。





死体の件は分かった。すぐに発覚したのは良かったが、寝室には入室禁止と通達していたのにもかかわらずどういうことだ???


「なぜ寝室に入る?俺は屋敷で働く者全員に通達を出したはずだぞ?新人?意味が分からない。普段から入っていたのか?お前の指示か?」


「入っておりません。もちろん私の指示でもありません。私は坊ちゃまに忠誠を誓っております。」



「は?よく言うな。お前、俺の死体をどうにかしようと父上に話していたろう?ハハハ もうすぐ騎士団が来るぞ?この城の者は全員拘束する。」


「へ?坊ちゃま。」



コンコンコン

「失礼します。閣下!騎士団20名ほど到着をし、屋敷の者全員を拘束するために動いております。」


「あぁ分かった。リトス、家令も拘束しろ。」


ハッとつぶやいた騎士はあっという間に家令を拘束した。


「1人ずつ尋問をする。それ以外は牢屋に入れて監視しておけ。」


「ハッかしこまりました。では1人ずつ連れていきます。」と伝えて、家令を連れて行った。


家令は坊ちゃま···と後ろで叫び声を上げていたが連れて行かれた。


閣下と呼ばれるこの男は屋敷に戻る途中に自分が持つ騎士団に連絡を取り、城へ呼び出していた。

そのため誰1人と逃げ出すことができなかった。




それから1人ずつ尋問をしたところ、死体を持ち出したものは居なかった。

ただ屋敷の物を売り捌いていた者、屋敷の情報を売っていた者、日頃から主の部屋へ侵入しおぞましいことをしていたメイドが居た。


家令は何もしていなかったが、自分が管理している屋敷での犯罪の数々によってその責任を取るか達で辞めることになった。ただしちゃんの機会をあえて父上の元で一からやり直しをすることになった。

罪を侵していない使用人も古参の者以外は首にした。

本人が罪を犯していなくても、他の使用人がした犯罪を見て見ぬふりをしていたからだ。



「ハァー」ため息を付いた。屋敷の犯罪の多さはもちろんだが、死体を運び出したものが居なかったからだ。


今はリトスに領地内に怪しいものや黒髪少女の死体を持った者が居ないか調べてもらっている。


ちなみにリトスは黒髪少女の死体について知っている1人だ。レイブルと同様側近の1人である。レイブルは主に軍部の仕事を、リトスは侯爵家の騎士団を任せている。




そういや先程尋問中に従兄弟から通信魔道具に連絡があった。いつもなら出るところだったが、イライラしていて出なかった。


もっと早く出ればよかったとこの後とても後悔をした。

 



『おおおおーいオニキスいるか???いるなら出てこい。お願いだ!!!』



うん?誰だ?屋敷の入口の方から誰かの叫び声が聞こえる。

するとリトスが慌てて走ってきて、「ラピスル様がいらっしゃってます」と告げた。




急いで入口へ向かうと従兄弟のラピスルがいた。なんだ?連絡が取れなかったから押しかけてきたのか?暇人か?



こちらに気づいたラピスルが「一生のお願いだ。大切な者を助けるために力を貸して欲しい」と泣きながら訴えてきた。


思わず「は?」と呟いた。コイツはいつもフラフラと冒険者をしながら上手く嫌なことからすり抜けている男だ。好きな者がいる?初めて聞いたぞ。

討伐に来るとは聞いていたが女を連れてきたのか?



まずは話を聞いてやることにした。

泣いているラピスルを支え執務室へ案内をした。


開口一番ラピスルから「何故電話に出ない?」と訴えられた。


私もそれどころでなかった話をした。死体がなくなってしまったこと、屋敷の者の犯罪などがあり、今動いている最中だと話した。


すると「え?」とラピスルが驚いた。


「お前、いつ無くなったのか?」


「わからない。発覚したのが一昨日で、知らせを聞いたのが昨日だ。」

俺まで泣きそうだ···


「特徴はあるか?洋服とか・・・」



なんだ?ラピスルは知ってるのか?

「黒い服を着た女性だ」

 


え?あの子供のことか·······どういうことだ?死体?生きてたぞ?····ブツブツラピスルが呟いている。



「おい、ラピスル知っているのか?」



「あぁもしかしたら知っているが、知らないかもしれない」

ラピスルは盛大に困惑していた。あの子供は生きていた。死んでいない。触ると柔らかく温かく····想像したらニヤけそうだ。死体は冷たいよな?どういうことだ?



「教えてくれ。間違っててもいい。何でもいい。教えて欲しい。」

オニキスもオニキスで必死にお願いをした。


「あぁ分かった。教えるが交換条件がある。お前が持っている黒髪黒目の情報を教えてくれ。」



「は?あれは無理だ。一族の者しか見せることが出来ない。」

コイツ何を言っている?わかりきったことだろう?



「今回俺は黒髪黒目の子供を保護している。その子の意識がもう4日も戻っていない。お前の死体も関係しているかもしれない。」

必死に今回来た経緯を伝えた。



「はあ?黒髪黒目?そんな者が居るのか?死体の関係者か?」


黒髪黒目で生きている?信じられない。


返事をする前に代々の当主しか開けることが出来ない金庫を開け資料を全て取り出した。それを持ってラピスルに黒髪黒目の少女のいる場所に案内するように促した。


ここで調べるよりも会ってから調べたいと思ったからだ。


従兄弟のラピスルを急かせて、2人は馬に跨り急いで宿に向かった。戻る最中お互い無言だった。


必死に馬を走らせているのもあるが、もしかしたらお互い同じ少女に恋をしているかもしれないと思ったからだ。


宿屋へは思ったよりも早く着いた。何故なら門は当主のため顔パスで通ることができたからだ。

宿に無事到着すると、宿の女将に驚かれたが「気にするな」と伝え、早足で部屋へ向かった。


部屋では相変わらず意識が戻っていない少女が横たわって居た。

その横にはチャイブがなぜか少女の身体を抱きしめ、ラピスルと閣下には「身体を温めていた」と言い訳をした。



閣下は、自分の家にいた少女であることに涙した。

しかもなぜか生きている?

どういうことか···頭はパニック状態に陥っていたが、まずは意識を戻すことと考え、3人で資料を読み漁った。

すると資料にはこう書いてあった。


ーーーーーーーーーーーー


黒髪黒目の女性が現れたら、ゆっくり休ませろ。

彼女は異世界から突然この世界に落ちたと言っていた。

異世界での直前の記憶が自分の死ぬ場面だったと、、、そのため何故自分が生きているのか分からないと言っていた。

この世界に慣れるのには時間がかかるようだ。

何度も気を失った。何度も泣いていた。それを繰り返すことで次第にこちらの世界に身体が適用するようだ。

さすがに1ヶ月目覚めないときは恐怖だったが···

私は彼女に寄り添った。心も体も全て守った。

だから彼女の夫の座を掴めた。

嬉しいー!!


ただ1つ嫉妬することがある。私に内緒で神に会っているようだ。私の彼女が···神に嫉妬をして狂いそうだ。



あぁ〜彼女が大好きだ。



当主の日記の一部抜粋···


ーーーーーーーーーーーーーーー

膨大な資料から探し出すのに丸1日かかったが···


うんとりあえずよかったと納得しようとする3人であった。

心のなかでは『そんな大切なことを日記に書くなよ』3人ともに心のなかでツッコんだ。



「安心したな」 チャイブが呟いた。


あぁ···と2人が呟いた。3人の心は一致していた。「早く目覚めて欲しい」と。


それから目覚めるまで更に2日を要した。

チャイブとラピスルは冒険者業を休み、千織に付き添った。 

閣下は起きたら城に連れて帰れるように、城は侯爵家の騎士団の面々が臨時で働く手配をした。あまりにも首にした者が多かったため回らなかったのである。 


ただそれによって後々騎士団の者に色んな才能があるのが発覚するのだが···

従事者、執事、庭師、料理など騎士にも関わらず何でも出来るスペシャル集団になる。

ちなみに家令はリトスが行うことになった。

騎士団団長が家令を務める···異例の出来事である。

軍部での仕事はレイブルに任せて退任しようとしたが、陛下が認めなかった。

ただ1週間のみ特別休暇をもらい、今はチャイブとラピスルと一緒に千織のお世話している。



読んでいただきありがとうございます

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