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5.閣下ため息と涙

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「ハァー」

本日何度目のため息だろうか。



「閣下いい加減にして下さい。」

あまりにため息をつく閣下にレイブルが注意をした。



「あぁごめん」

閣下の心はここにあらずである。

今少女は何しているだろうか?寒くないだろうか?

俺が居なくて寂しくないかなど 少女のことで頭がいっぱいだった。


毎日毎日見る度に好きになる。「大好きだ」と叫びたい。最近少女を見るとなぜか分からないが、出逢った時よりも肌艶が良くなり瑞々しくなった。

あと毛が伸びたような気がする。それをレイブルに話したところ盛大に引かれた···「目は大丈夫でしょうか?」と言われて王宮侍医を呼ばれそうになって困った。

何故かそこから国王に死体の件がバレた。

呼び出しされたかと思うと「死体に会わせろ」と迫って来たが、速攻断った。この男に少女を見せたら、何をされるか分からない。きっと全てを調べ尽くすはずだ。私すら触れてないのに···そんなの許せるはずがない!!!

それから何度も言われても断っている。


国王陛下とは腐れ縁のせいで総隊長に任命され面倒事を何度も押し付けられた。

ハァ〜嫌になる。だが1つだけこの男の良いところがある。

それは報奨制度だ。結果を出せば褒美をもらえる。これはいい制度だ。俺は何度も貰っているから、今回の討伐でも貰う予定だ。



「閣下いい加減にしてください。」


あぁ意識が少女へ傾いてしまった···


「なぜこの魔物の討伐を引き受けたのですか?貴方じゃなくても良かったはずですよ。」



この魔物討伐は新人の騎士の教育の一環で行うものであった。

総隊長が参加するようなものではない。



本心は言えなかった。

今死体と結婚したいと言ったら怒られそうだ···


「新人のレベルを確認したかった」と適当に答えた。 


レイブルは疑っているがようだが「そうですか」と話を終えた。



今日でもう5日目なる。恋い焦がれ日に日に何かしらの症状が出ていた。

初めは耳鳴り、手の震え、体の震え、今は黒髪少女の幻想が見え始めた。

明日で終わる。今回たまたま強い魔物が現れて武功を上げることができた。

早く帰って国王陛下に報奨をお願いしたい···

そんな事を考えていると屋敷から早馬が届いた。


なぜか嫌な予感がした。


家令から書かれた手紙を受けると、あまりのショックに立ちくらみを起こした。



レイブルや他の部下達が心配そうに見ている。


「閣下どうされましたか?」


泣きそうだ。こんな動揺は初めてである。今まで何をされても泣かなかった·····


そんな様子を見たレイブルが手紙を勝手に確認すると

ギョッと目を見開いて「閣下!もうここは大丈夫なので行ってください。」と伝えた。



閣下は涙をポロリと一粒落とし、駆け出した。馬番から自分の愛馬を受け取り一心不乱に走り出した。



そんな光景を見てレイブル以外の部下は顔に出して驚いた。泣く姿はもちろんあんなに慌てている姿を見たことがない。

いつも堂々とし、男が憧れるかっこいい男だった。


「レイブル様 閣下はどうされたのですか?」と1人の部下がレイブルに様子を窺った。


レイブル自身は表情には出ていないが唖然としていた。子供の頃からお互いを知っている。それだけに今の閣下のあの様子······死体に対する執着は相当なものだと思い知った。


「あぁとても緊急な用事が入っただけだ。お前たちは気にするな。そして今の事は決して漏らすな。」と部下たちへ伝えた。


レイブルは討伐報告が終わり次第、親友の絶対叶うはずのない恋の手伝いをしに行くのだった。



ーーーーーーーーー



その頃、千織はバレないように全速力で城を抜け出してから、慎重に動いていた。


それもそのはずである。オークションという場所で自分が金銭のやり取りをされたことがショックだった。今頃身体にズシンッと何かが重く伸し掛かったような気がした。

もし捕まれば最悪オークションどころか奴隷になるかもしれない。

不安にかられていた。


それでも自分がこの世界で生きるために何度も自分を鼓舞して街へ向かった。


街には早朝着いたがしばらく様子を伺った。早朝のため誰もいなかったからだ。朝日と共に門に人が集まってきた事を確認し、自分も門の列に並んだ。


街に入るのは簡単だった。

検問をしているようだったが、咄嗟に訳あり外国人と偽った。


検問所の騎士から

「身分証を出せ。」と言われた。


千織は

「アリマセン」と片言で答えた。

そうすると騎士から銀貨3枚保証金として必要だと説明を受けた。


お金の単位が分からず、死体愛好の部屋からくすねたお金のようなものを全て出した。

騎士は丁寧にお金の単位を教えてくれ、無事検問所を通ることが出来た。



千織は安堵した。

身分証がなかったが、その場で外国人の振りをして金銭を払うことで街に入れた。

なぜか話始めはキツイ喋り方をしていた騎士だったが、後半は物凄く優しかった。なぜだろう?

とりあえず「アリガト」と伝え、騎士から言われた身分証作りの為にギルドへ。




騎士はフードの子供を見送って「可愛かったな」と呟いた。


初めは明らかに旅慣れてないフードを被った者を怪しんだ。しかも小さい子供だ、珍しい。話しかけたらオロオロし始めた。物凄く怪しかったが、フードの隙間から上を見上げた時に顔が見えた。

「物凄く可愛い」···とても驚いた。気が付いたら、手取り足取り丁寧に説明をしてしまった。隣の列を担当していた先輩に睨まれた。だか何だか今日は1日頑張れそうだ。





門から中に入ると中世の町並みが広がっていた。

レンガ造りの建物が並び、まるでおとぎ話の世界に入ったようだった。


街を歩いている者たちは統一感がなかった。千織のようにフードを深く被った者から、ドレスや騎士服、はたまた冒険者のような姿の者もいた。


千織は周りを伺いながら、きっちりフードを被り冒険者ギルドへ向かった。


途中歩いてると屋台からいい匂いが漂っていた。


「お腹空いた」と思わず声に出た。

死んだふりをしてから、フルーツしか食べていなかった。

正直はじめは久しぶりの食事だったため美味しかった。

それが毎日続く······日本のフルーツと比べてしまい、美味しくなった。

ぶどうは渋く、りんごはパサパサ

日本に帰りたいと心で泣いた······


ハァーとため息を付き、お腹は空いたがまずは身分証を作るために気持ちを切り替えた。



門から冒険者ギルドまで40分かかった。思ったよりも時間がかかりヘトヘトだ。ふぅーーー息を整えて冒険者ギルドの門を開けようとしたとき、

「おい邪魔だ」と突然声をかけられ、後ろを振り向くと、

「ヒッ〜」と思わず声が出てしまった。3mは超える大男が見下ろしていた。


「チャイブ驚いているよ。ごめんねちびっこ。」

と今度は大男の横から、ひょろ男が声をかけてきた。


「すまん」と言われ、全力で大丈夫です言うかわりにブンブンブンと必死に頷いた。




フフフッ

「ちびっこは何しに来たの?」


何故笑われたのか分からないけど、

「身分証を作りに。」と簡単に答えた。


「身分証だけなら簡単だよ。左奥のカウンターでやればいいよ。じゃあまたね。」と

フード越しから頭をナデナデ・・・撫でられた。


言われた通り千織は身分証を作るために左奥のカウンターへ向かった。これもまた簡単に作ることが出来た。

文字は読めなかったが水晶に手をかざして、勝手にカードが出てきて完了。

免許証とかマイナンバーのような感じのような使い方が出来るみたい。

しかもクレジットカードのような機能もあるらしい。前世より便利だった!


カードの仕組みがとても気になり、色んな角度から確認をしたがどうやっても分からず、「疲れた」と心の声が出ていたようだ。


その声に心配をしたギルドの職員がおすすめの宿を紹介してくれた。 


泊まるところ探してるって言ったかな??


とりあえず休みたいと思っていたので、有り難くギルドが紹介してくれた宿へ向かって歩き出した。  



その頃冒険者ギルドでは、

小さな子供が店内から出ていく姿に大人達は釘付けだった。


最初はあまりにも冒険者が似合わない子供だと誰もが思った。 何で来たのかと・・・・・

しかし受付とやり取りしている明るい声や、可愛らしい仕草、時折フードの隙間から見える笑顔や照れた顔にむさ苦しい冒険者が男女ともにメロメロになってしまったのである。

子供が外へ出た途端大騒ぎである。

この日を境にちびっこ冒険者を守る会が結成され、千織は常に街で見守られていた。

ちょっかいをかけようする者には千織の知らない間に制裁されていたのである。



トボトボと歩いているとまた30分かかった。 


「すみません。お部屋を借りたいのですが?」とロビーのような場所から奥へ向かって声をかけた。


奥からふくよかな女性が現れ

「ごめんなさいね。」


なんと部屋がなかった・・・今は魔物の討伐でいっぱいって言われた。


ガーンと頭の中で鳴ったような気がした。やっと休める···と思っていた···常に気を張り久しぶりに歩いた身体は限界を迎えていた。

ヘナヘナと座り込んだ・・・もう歩きたくない。




すると「部屋がないの?」と後ろから声をかけられた。  


あれ?さっきの人?ひょろ男だった。


うんと頷いた。


「俺達2部屋あるから1部屋譲るよ!」とひょろ男が頭をナデナデしながら言った。


何で頭を撫でるの?良くわからないけど、

「え?いいの?」と聞いてみた。



「うんいいよ。」とひょろ男が答えてくれたけれど、

大男はいいのかなと見上げてみると「いいぞ。」と答えた。



怖そうな大男は優しいのかもしれない。  

「ありがとう」と千織は満面な笑みでお礼いい、ふくよかな女性から説明を受けた。



その後ろで大男とひょろ男はグホッと声を漏らし、心臓を抑えた。


千織は1週間部屋を借りることにした。

1日銀貨2枚、朝夕食事付、風呂はないけど言えばお湯をもらえるとのことだった。

幸いお金は足りたので無事に借りることができた。


説明を受けた千織は後ろを振り返り2人に向けて

「あの1週間だけ借ります。ありがとうございます。」と伝え、自分の部屋へ向かった。



階段を登り3階303号室だった。

「わお〜」と思わず呟いた、、、

ドアノブがギリギリ届くぐらいの高さにあり、ドアが物凄く重かった。

なけなしの力を振り絞りドアを、ぐぐぐぐぐぅーーーと全力で力を入れて開けるとベット2つと木製の丸テーブルに椅子が2つ、お手洗いがあった。


とてもシンプルだけど落ち着いた。

死体愛好化の部屋はあまりにも広すぎて前世の私からすると慣れなかった。 


着いて千織は眠気がやってきてそのままベットに倒れ込んで寝てしまった。




コンコンコン

ノックをされたがぐっすり眠っていた千織は起きなかった。


部屋に侵入する者がいた・・・


読んでいただきありがとうございます!

次もまた1週間後の予定です!

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