4.脱出成功
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パッと目が覚めた。思わず目を開けてしまったが誰も居なかった。
どこだろう?目の前にはキングサイズのベットが置かれている。それ以外は何もない。寝るための部屋のようだ。
そういや自分が売られたことを思い出した。悲しくなってきた···しかも死体らしい···手を動かすとしっかり動く。
『私、生きています』と叫びたい。
昨日は馬車を降りてからの記憶がない。
そして今はお尻が物凄く痛い···台車のまま馬車にはもう乗りたくない···ガタンガタンと揺れる車内のせいでお尻を強打したから痣があるはず。日本の生活がどれだけ快適だったのか思い知らされる。
すると突然ぐぅぅ〜盛大なお腹の音がなった。
「お腹が空いた」
ここまで全くお腹が空かなかったが急にお腹が空いた。精神的疲労かな?と解釈し、勇気を振り絞り動いてみると身体がボディースーツのような形の透明な物で覆われているのに気がついた。
あれ?これ移動の前にフィルター?って言ってたような···
足や手を動かし、フィルターごと動けるようだったので、そのままの状態で部屋の中に何か食べ物がないか探したが見つからなかった。しかし僅かに開いたドアを見つけその隙間からそーっと覗いてみると隣は部屋だった。そしてなんとテーブルの上にフルーツが山盛り置かれていた。
今までで1番早い速歩きで思わずガブッとかぶりついた。
いつぶりの食事か分からない・・・モグモグ、シャクシャク
物凄く美味しい。全部食べ終えてしまった。その後部屋の中を散策した。
そういえば食べるのに集中してフィルターのことを忘れてた。出たり入ったり自由にできるようで問題なく食べ物を食べれた。
部屋の中はとても広くお風呂やトイレまで揃っていた。
フィルター越しで手を洗えるのか試してみると無事洗えた。
それを見て急にお手洗いに行きたくなり、無事済ませることが出来た。
もちろんフィルターは脱ぎました。
ある程度散策をし終えると急にこの部屋の持ち主が気になった。
この部屋の持ち主は誰だろう??
それに自分がずっと目を閉じていたことや、寝ていたことで何故購入されたのか全く意図が分からない。
なにかヒントになる物を探すために暫く散策したが、見つかったのは武器やコイン、衣類だけだった。それから自分の元いた場所に戻った。
幸いにも死んだふりは楽だった。横に丸まった体勢だったからだ。
それから部屋が暗くなると誰かが帰ってきて「ただいま」と千織に言った。声は素敵だが、死体を購入しさらに喋りかけるような男は怖い。
絶対に生きているとバレないようにしなければ···
フィルターがあってよかった。
その後1週間部屋の主がいない時にお手洗いや食事を済ませ、夜は死んだふりを継続した。
日中部屋を掃除に来る使用人がいるが、寝室には入ってこないようで適当に死体のふりをしている。
部屋の中を自由に使っているのに使用人にも部屋の主にも「よくバレないよなあ」と思った。
あとなぜだがわからないが、定位置に身体を戻すとトイレに行きたいという気持ちがなくなる。
バレずに済むためラッキーだった。
男は毎日「おはよう、いってきます、ただいま」と声をかけてくれる。
また「瞳が見たい。好きだよ。死体でも構わない」などをブツブツ呟いている。
本当に怖い。私は生きたい。早く死体愛好家から逃げたいが、まだ逃げれていない。
1度逃げようと試みたが、部屋の外には誰かが歩く足音が聞こえ、ベランダから庭へは到底降りれる高さではなかった。
しかしチャンスが巡ってきた。
死体愛好家が今日の朝物凄く残念そうに言っていた。
「今日から1週間魔物討伐のお仕事に行くから帰ってこれなくてごめんね」って最後は泣きながら言ってた。
そんなに好きなのかとドン引きだか私はチャンスを活かす。
いつか逃げる日を夢見て死体愛好家さんの家にあった周辺の地図は頭に叩き込んでいる。あまりにも暇すぎて誰かの日誌まで読み込んでしまった。
15日晴れ 今日も可愛かった。朝から力溢れ出しその勢いのまま訓練に行くと案の定部下を潰してしまった。部下に物凄く謝ったが許してもらえるだろうか?
16日曇り 今日は唇がプルプル潤っていた気がする。思わず口づけたくなったが我慢した。この熱を訓練で発散させたら国王陛下に呼ばれて怒られた。お前のせいで何人休職してるとおもってるって···弱いから悪いんだろう?
17日雨 雨の日は最悪だ。仕事が増えるから大嫌いだ。室内訓練なんてほとんど意味をなさない。あぁ早く帰って眺めたい。いらいらしながら街の整備を行ったが無事に片付けることができて安心した。帰ろうとすると国王陛下から呼び出された。お前どこもかしも規制するとはどういうことだ?だって規制しなければそこら中に馬車の車輪が泥にハマって帰りが遅くなるだろう?
かなり自己中な人間の日誌だったけど、、、良い退屈しのぎになりました。日誌さん、ありがとう。
それから千織は夜になるのを待った。廊下の足音が聞こえなくなったのを合図に、死体愛好家さんの部屋からマントやお金のようなもの、メダルやナイフを頂戴し逃げ出した。
部屋を出る前に一応「死体愛好家さんありがとうございました。」と一言お部屋に伝え、誰にも見つからずにお屋敷を抜け、闇に消えた。
読んでいただきありがとうございます