2.閣下視点
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閣下視点
他国に滞在している従兄弟から緊急連絡が入った。
「黒髪の少女の死体がオークションにかけられるぞ。」
という報告だった。
慌てて従兄弟に詳しい情報を聞くと、オークション側からの情報のため事実だということが分かった。
しかも今日から2日後の開催···参加するべく仕事の調節と念の為お金の工面をした。
お金は国から報奨として頂いた『金の盾』を売ってしまった。いい金になったが、それだけでは不安だったため父の私物も売ってしまった。
準備が整い御者のみを連れて転移を行おうと思っていたが、側近のレイブルに怪しまれて一緒に連れて行った。
レイブルはオークション会場に連れて行かれてとても驚いていた。
それは仕方ないことだ。私は堅物の男と呼ばれているくらい真面目だからな。
飲酒や喫煙もちろん女も買ったことがない。正真照明真面目である。
何故部下たちがお酒を飲み、タバコを吸うのか理解できない。
女もいまいち興味が湧かない。
何が楽しくて夜会で女と踊るのか、アクセサリーやドレスに自分の色を纏わせるステータスとは何だ???
それよりも鍛えている方が100倍楽しい!最高だ!
そんな俺でもオークションには何度か足を運んだことがある。仕事の時もあるが、1番多いのは父上と一緒に行くことだ。父上は古代の魔道具の収集に人生をかけている。古代の魔道具は突然見つかることが多い。その多くが海の中に沈んでいる。一攫千金を目指した者達がこぞって海へ潜り探索をし、発見された物はほぼ全てがオークションへ出品される。何故なら1番オークションが儲かるからだ。
俺はいつも嫌嫌参加していたが、一緒に行っておいてよかったと心の底から思った。
なんとオークション会場まで迷わず、緊張せずに行くことが出来た。
『父上!この時の為に一緒に連れて行ってくださったのですね。感謝します』と心のなかで盛大な拍手と感謝を伝えた。
オークション会場には無事10時間前に到着し、準備満タンだ!部下にはあまりの早さにゲンナリされたが···なぜだ?いつも早め早めの行動をするように伝えているのに。
それから暫くするとどんどんオークション会場には人が集まってきた。
中には知っている上位貴族や王族、処罰したことがある闇商人までもがいた。
それだけこのオークションの注目の度の高さが分かる。
俺は会場に来る前よりも『本物の黒髪の死体がある』という確信をし、胸をときめかせた。
いつの間にかレイブルまでもが興奮している。なぜだ?
それからオークションのオーナーの挨拶が始まった。
ワクワクが止まらない。
あのオーナーはいつも通り盛り上げ上手だ。俺も見習わなければと思った。
それからすぐに幕が開けた。
最初の品物はまさかの古代魔道具だった。
『初めて見る古代魔道具だ!!!』
父を連れてきたら喜んだかもしれない。
隣に座っていたレイブルは四角の箱のような物に興奮し、落札するべく挑戦していたが駄目だったようだ。あれをゲットしたのは王族だった。
隣の落ち込みようが···レイブルが古代魔道具好きだなんて知らなかった。帰ったら父の古代魔道具を見せてやろう!
そして最後に1番目玉な物が・・・客席のボルテージが最高潮に上がった!それはゆっくり現れた···あまりの衝撃に声が出ない、『心臓がぎゅー』っと鷲掴みにされた。
今までに感じたことがない高揚感・・・死体に恋に落ちた瞬間だった。
絶対に誰にも渡したくない。これは私の物だ。
私は今持っている全ての額を提示した。そしたらなんと落札することが出来た···信じられない、とても嬉しい。
思わず手が震えた。
そこから契約は早かった。
トントン契約を終え、馬車へ運んだ。
誰にも見せたくなくて淡々と話を聞き、早急に場所を後にした。
先程やっと家令達への説明が終わった。
とても疲れた。やっとこの遺体を好きなだけ眺められる。いい眺めだ〜!!なぜこれほど美しいのだろう?
どこで生きて何をしていたのか気になってしまう。目を開けて欲しい······
あぁ〜このフィルターがなければもっと良いのに。
何故この少女が生きている時に会えなかったのだ?
私はもう38歳である。この世界は40歳までに結婚をし、100歳までの間に子供を作る。それ以降は子供が殆どできないと言われる。何故だか分からない。
父上は私を85歳で作った。私が35歳になったら当主の座を降り、今は母上と一緒に悠々自適に好きなことをして暮らしている。
これから数多くの見合いが待っている。
結婚をしたくない···
この少女の死体と結婚できればいいのだが。
今日はこの少女を見ながら食事をする。
それを家令に伝えたところ後ろに倒れかけたが、、、何故ダメなのだ?
明日からはまた仕事で忙しくなる。
今日は私のわがままを聞いてもらおう。
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わぁ〜欠伸が···
気付いたら死体を見ながら寝ていた。昨日は普段飲まない酒が美味しく感じ、どんどん飲んでしまった。
もうこれから早朝訓練の時間か。朝が苦手の為毎回少し憂鬱だ。
だが今日からは違う。少女が部屋にいるだけでやる気が漲る。いつもの100倍頑張れそうだ。
少女へ「おはよう」と声をかけをする。思わずニヤけた。
そして心が温まった···そういや来週は魔物の一斉討伐があるなぁ。初めは行きたくなかったが、魔物の討伐で武功を上げると陛下から特別賞をいただける。
死体と結婚する権利をお願いすればいいのでは??
そうと決まれば頑張ろう!!
少女へ「いってきます。」と声をかけた。
次回は1週間後土曜日になる予定です!