主従関係の復活
リアナの豹変ぶりに少し引いたサテリアはふと気づく。
ネイアナが怪訝な瞳でリアナを見ていることに。
それは、嫌悪というより引いている瞳だった。
(こ、これは良くない気がするわ。)
それに気づいたサテリアは事態の収集を試みる。
「色はそれでいいわ。いつできるかしら?」
「一週間後には…。」
「わかったわ。」
リアナに代金を払って貰う。
「ネイアナ、お騒がせして申し訳なかったですわ。お詫びの品を後日届けさせるのでこの事は内密にお願いしますわね。」
サテリアが行った事態の収集は口封じだった。
(バレては家門に泥を塗る行為だわ。)
ネイアナは申し訳なさそうな顔をして、
「承知いたしました。」
と言った。
「ですが、いいのですか…?お詫びの品などなくとも、私は口外する気はありませんが…。」
「いいのよ。迷惑をかけたのだから。」
ネイアナに謝罪をした2日後。
「この手紙を出してくれる?」
お詫びの品と手紙をリアナに差し出す。
「ネイアナにですね。」
「ええ。頼んだわ。」
お詫びの品は首都の職人に急ぎで作ってもらった、裁縫道具を渡してもらった。
とりあえずこれで口封じはできただろう。と満足するサテリア。
ネイアナは初めからそれを広めようなどとはしていなかったのだが。
「さて…。」
どうしようか。と思案にふける。
(リアナにはどうお仕置きをしようかしら。)
リアナは今回、常連の店に迷惑をかけた。
それは平民ならまだしも、公爵家のメイドがである。
その失態はそのまま家門の恥となる。
家門に泥を塗る行為をしては処分は免れないだろう。
けれどリアナはサテリアが生まれた頃から支えてきてくれた味方だ。これからクリス殿下やアマリアと対立するからには味方は多い方がいいだろう。
なので軽く注意するぐらいがいいのだろうが……。
どのような言葉を使うべきか、悩んでしまう。
「どうしましょうね…。」
熟考した末、思いついたのは諦めのような答えだった。
(本音を伝えましょう…。)
「お手紙とお詫びの品を業者に渡してきました。」
リアナが手紙を届け終わり帰ってくる。
サテリアは額に冷や汗を浮かべながら意を決して口を開く。
「リアナ…。」
「はい。なんでございますか?」
リアナは不思議そうに首を傾げる。
「今回の件についてなのだけれど…。」
「はい。申し訳ありませんでした。」
今回の件について切り出した途端、リアナは頭を下げた。
そうして物騒なことを言い出した。
「どうぞ私を解雇してください。あぁ、それともサテリアお嬢様にあれほどご迷惑をおかけしましたから、解雇以上の罰を…。」
「ま、待ってちょうだい!」
リアナの放った言葉を理解できず、思わず止めてしまう。
「あ、あのね。別にその件であなたを罰するつもりなんてないの。むしろ、私が生まれた頃から支えてくれているあなたには感謝しているのよ。けれど…。」
そこでサテリアは一度言葉を切って
「あの言動はどうしたの?リアナ。」
サテリアはリアナの急変した態度に疑問を抱いていた。
「それはですね…。」
リアナは少し気まずそうにしてから口を開いた。
「実は、サテリアお嬢様が実の妹。いえ、それ以上に可愛くて…。あまりの可愛さに我を失ってしまったのです。その…。いつもは抑えているのですが……。」
そう言ったリアナの目に嘘はないようだった。
「いいわ…。リアナ、私を可愛がってくれていたのは嬉しいけれど……。ただ、人前では抑えるのよ。」
「は、はい!ありがとうございます!サテリアお嬢様。」
リアナはパアッと顔を輝かせて笑ったのだった。
ここに、本来の主従関係が復活したのだった。