恐れずに
命運の終わりを悟ったサテリアは恐怖に身体が固まったまま、ただ呆然とリアナを見つめていた。
「そう……ですね。」
リアナは今しがた言われた言葉を噛み砕くようにゆっくりと繰り返す。
「サテリアお嬢様……。」
俯きながらリアナが呟いた。
突然名前を呼ばれ、叱られるのかと驚くサテリア。けれど、ある疑問が浮かぶ。
(そういえば、リアナはお嬢さまと言ったことはあるけれどサテリアお嬢様なんて言っていたかしら……?)
疑問に思っているとリアナが勢いよく顔を上げる。
「サテリアお嬢様!あぁ……成長されて……。」
リアナがまるで長く待ち望んでいたかのように言い、声を震わせて涙を流した。
「……?」
「お嬢様、ついに気づいたんですね!」
あぁ、やっとことの時が……とリアナは歓喜の涙を流す。
「……??」
リアナの言っていることが分からずに首を傾げていると、リアナが感極まったというような声で言った。
「サテリアお嬢様が淑女としての作法を身につけられるようにと心を鬼にして接してきましたがあまりサテリアお嬢様は理解しておられないようでした。頭を悩ませた結果、淑女の基本から教えていこうと思いました。」
そんなこともあったっけ。とサテリアは少し申し訳ない気持ちになる。
「なのでまずは、主従関係についてお教えしようと思いました。主従関係が分からなければ社交場でも馬鹿にされかねません。そのため、あえてメイドらしからぬ態度で接し、お嬢様が注意をしてくださる時を待っておりました。」
そこでリアナは言葉を切って、
「やっとお分かりになって下さったんですね……。」
と感動に声を震わせていた。
「……え、ええ。」
サテリアはとにかく自分が迷惑を掛けていたんだなと思い、とりあえず話を合わせておくことにした。
「では……。」
リアナが跪き、話し始める。
「今までの無礼、申し訳ありませんでした。」
突然謝られたことに驚いて、サテリアは少し戸惑うが
「いいえ、私を思ってのことでしたから。私こそ、申し訳ありませんでしたわ。」
礼儀作法に気をつけて静かに言う。
(話の内容は突然言われて少し理解が出来ていないけれど、とにかく淑女らしく振る舞わなければ叱られるわね。)
これからはリアナがいる時は死ぬ気で礼儀作法に気をつけようと決意を新たにするのだった。
「おはよう、リアナ。」
「おはようございます。サテリアお嬢様。今日の御予定は……。」
軽い騒動があった次の日。
逆行前は公爵邸にいるときまでは礼儀に気をつけていなかったが、礼儀作法は身についているのでこれからは公爵邸の中でも礼儀作法に気をつけようと固く誓ったサテリアはまずは溜まっている仕事を片付けることを決めた。
そして、今日は特に予定がない。
早速、お気に入りの青いドレスに着替えたサテリアは木製の見事な彫刻が施された綺麗な机と椅子がある部屋に向かった。
(ここは、今よりも小さい頃にお父様に頼んで作ってもらった部屋だっけ……。)
逆行前もよくいた部屋だからか、サテリアのお気に入りの部屋でもある。
椅子について、気合を入れる。
「よしっ!」
溜まったお茶会の招待状を前にして、気合を入れたというのに早くに少しやる気が無くなってきたサテリアであった。
5話でリアナが登場しましたが、リアナの容姿についての記述が抜けていましたので追加致しました。
御手数ですが見てくだされば嬉しいです。お願いします。