表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第一章 田舎の診療所
8/55

8 医療センターの使者

お待たせしました第8話を更新しました!


前回、禁断症状を起こした朝田さんは、医療センターの方へ入院してもらう事になりました。しかし、晴翔君も一度医療センターで検査とかもしたいんですけどね……

 朝田(あさだ)さんには申し訳ないですけど、鎮静剤で眠ってもらいました。また、暴れられても困りますので、毛布はもちろん掛けてあげますけどね!

今村(いまむら)川本医療(かわもといりょう)センターに電話しといたからな!」

 桐生(きりゅう)先生です。

「えっ、電話したんですか!」

「ああ、知ってる先生がいるからな、明日の十時くらいに迎えに来てくれるそうだ」

「そうですか、ありがとうございます」

「うん、一応紹介状を出しといた方が良いぞ!」

「はい」

 私はそう返事をして診察室へ行きました。案西(あんざい)先生に電話をするためです。

「もしもし、ご無沙汰しています。今村ですけど」

『ああ、飛鳥(あすか)先生久しぶりですね、あの清川(きよかわ)村に飛ばされたって聞いたんだけど……』

「あ、はい……」

 えっと、そうですね…… 否定は出来ませんね……

『それで何をやらかしたの?』

「ちょっと、色々ありまして……」

上杉(うえすぎ)先生からちょっとだけ聞いたんですけど……』

 えっ、上杉先生は何を話したんだろう……

DID(解離性同一性障害)の患者さんがいるんですか?』

 あっ、そっちの事ですね! なんだかちょっとだけホッとしました。

「はい、それで色々と教えて頂きたいんですけど……」

『うん、それは構わないけど主人格を入れて何人いるの?』

「全部で四人です」

『うーん、上手く統合出来ると良いんですけどね』

「はい、時間が掛かるとは聞いてますけど……」

『うん、時間が掛かっても統合出来るなら良いんですけど……』

「先生はDIDの患者さんを治療した事はあるんですよね」

『ええ、ありますよ! でも、上手く統合出来たのは数例だけです』

「かなり、難しいんですか?」

『うん…… 主人格と交代人格の関係が上手くいっていると特にね! 患者がこのままでも良いと思っているとどうしようもない』

 このままで良い?

「病気のままで良いという事ですか?」

『あくまでも患者がそう望んだ時の話です』

「何か良い治療法ってありますか」

『うーん、有効な薬は無いからな…… でも、患者に行動日誌を書いてもらうと色々な事が判って来るかも知れない。それと催眠療法! 患者をリラックスさせる効果がある。まあ、そんなとこかな。一度医療センターに連れて行った方が良いかもね。清川村からなら川本医療センターが近いかな、長谷川(はせがわ)先生という精神科医がいるから連絡しておくよ』

「はい、ありがとうございます」

 そうか、行動日誌は効果があるかも知れませんが、催眠療法は何度か他の患者さんに試した事はあります。その事でリラックスしたり、ボーッとする事はありましたけど、あれってどこまで効いているのかよく判らないんですよね…… まあ、取り敢えずは明日ですね。


 翌朝、診察室のベッドに様子を見に行きます。朝田さんはまだ眠っているようです。

「先生、おはようございます」

 静子(しずこ)さんが来ました。

「おはようございます」

「主人はどうですか?」

「まだ、眠っています」

「朝食を持って来たので先生もいかがですか」

「はい、ありがとうございます」

「ううん……」

 朝田さんがお目覚めのようです。

「朝田さん、大丈夫ですか?」

 私が、優しく声を掛けました。昨日足を掛けて倒して、ちょっと酷い事をしましたからね……

「ああっ、頭が痛いです…… えっと、ここは何処ですか?」

「診療所です」

「診療所……」

「あんた、昨日のこと覚えていないの?」

 奥さんの静子さんが、迷惑そうにそう話します。でも、それなら私の行動も覚えていないかな……

「あまり大きな声を出さないでくれ」

 少しはアルコールが抜けたかな……

「まったく、私はあんたに殴られたんだからね」

「えっ、俺が……」

「朝田さん、アルコール依存症がかなり進んでいるようですので入院してもらいます。今日、医療センターから迎えが来ますので……」

 私がそう言うと、大和(やまと)さんは渋々了承してくれました。それを聞いて静子さんは安心したようです。


 午前十時、川本医療センターから迎えの車が来ました。

「おはようございます」

「おはようございます! お迎えありがとうございます」

「えっと、今村先生ですか?」

「はい、今村飛鳥ですけど」

「いやぁ、逢えて良かった! 私は精神科医の長谷川和樹(はせがわかずき)です。昨日桐生先生から電話があって話を訊いていたんですよ」

 あっ、桐生先生からの連絡ですか! 桐生先生の知ってる先生も長谷川先生だったようです。でも、昨日案西先生が言っていた長谷川先生と同一人物でしょうか……

「それで、患者さんは?」

「今、診療所のベッドに横になっています」

「昨日、大変だったそうですね」

「はい、ちょっと幻聴とかが聴こえているみたいで……」

「そうですか……」

 うん、桐生先生からの連絡だけのようですね。

「あの、案西先生ってご存知ですか?」

『プルプル、プルプル……』

「ちょっと失礼」

 あっ、電話ですね。

「はい、長谷川です」

 医療センターの先生ともなれば忙しいんでしょうね……

「あっ、ご無沙汰してます案西先生」

 えっ、案西先生?

「DIDですか?」

 えっと、DID?

「いえ、今清川村に来ていますけど」

 もしかして……

「ええ、知人の先生からの依頼がありましたので迎えに来たところでした」

 案西先生からは今、連絡があったようです。

「はい、確認します。失礼します」

 電話が終わった早々……

「今村先生、DIDの患者さんがいるんですか?」

「あっ、はい……」

「状況は?」

「さほど、生活に支障は無いみたいですけど、主人格が表に出るのが少ないようです」

「そうですか…… 一度、医療センターに連れて来てください」

「はい、そのつもりではいますけど、本人達に了承してもらわないと」

「まあ、そうですね」

「よお! 長谷川久し振りだな」

 桐生先生も診療所に顔を出してくれました。

「ああ、桐生、おまえ老けたな」

「おまえも同じ歳だろうが」

「まあそうだけど、こんなに若くて綺麗な奥さんどこで見つけたんだ!」

 えっ、ひょっとして私の事じゃ無いですよね……

正樹(まさき)君、仕事じゃないんだからゆっくりしてれば良いのに」

 慶子(けいこ)先輩も出て来てしまいました。

「おい桐生、どっちがおまえの奥さんなんだよ!」

「決まってんだろう、こっちが俺の奥さんだ!」

 そう言って慶子先輩の肩を抱き自慢気です。

「ちょっと、正樹君!」

 慶子先輩はちょっと迷惑そうな、恥ずかしそうです。

「うーん、やっぱり綺麗な奥さんだ!」

「あの長谷川先生、そろそろ戻らないと……」

 センターの看護師さんも一緒だったようです。

「それじゃ、患者さんのところへ行きましょう」

 そう言って診療所の中へ一緒に行きます。

「朝田さん、具合はどうですか?」

 まずは私が訊きました。

「はい、頭は痛いけどさっきよりは良いです」

「朝田さん、こちらは医療センターの長谷川先生です。入院中は先生の指示に従ってくださいね」

「はい、よろしくお願いします」

「看護師さん、車椅子を持って来て」

 そうして朝田さんは迎えの車に乗せられました。

「長谷川先生、こちらが紹介状です。よろしくお願いします」

「解りました。あとDIDの患者さんも一度連れて来てくださいね、出来る限り力になりますので」

「はい、その時はまたご連絡します。今のところはさほど問題は無いので」

「解りました。それでは……」

 そういう事で医療センターの車は朝田さんを乗せて行ってしまいました。

「今村、あいつは気をつけた方が良いぞ!」

「何かあるんですか?」

「あいつは今村の事が好きになったかも知れない」

「えっ、私ですか!」

「ああいう態度の時は、大体そうなんだよ」

「えっと、でも私は既婚者なんですけどね……」

「飛鳥、お昼から温泉に行かない? 食事も一緒に」

 えっと、夫婦水入らずなのに邪魔して良いんでしょうか……

「えっと、今日は遠慮しときます。他に色々仕事があるので……」

 そう嘘をつきました。そういう事で、私は診療所で仕事です。


 数日後、温泉街へ行った時でした。

「飛鳥ちゃん!」

 えっ、飛鳥ちゃん? その先には手を振っている晴翔君がいますけど…… まったく三十路前の私をちゃん付けで呼ぶなんて!

「ちょっと、あまり馴れ馴れしくしないでね(みなと)君!」

「えっ、なんで俺だと判った」

「そんな事を言うのはあなたくらいしかいないでしょう」

 まったく、いくら鈍感な私でもそのくらいは判るわよ! 失礼しちゃうわ。

「ひょっとして今日は、俺に逢いに来てくれたの?」

「違うから!」

「あっ、なんだよ晴翔(はると)……」

 その時、晴翔君の中で脳内会話があったようです。

「おはよう…… ございます……」

「えっと、晴翔(はると)君?」

「はい……」

 ナイスタイミングですね!

「晴翔君、丁度良かったこのノートに行動した内容を書いて欲しいんだけど」

「はあ…… あの、どういう風に書けば……」

「うん、そうね…… 仕事をした時も、どんな内容の仕事をしたのか、楽しかった事とか」

「解りました……」

 そう言うと晴翔君はノートを受け取ってくれました。

「あの、飛鳥先生それは晴翔だけで良いの、それとも私達も書いた方が良いのかな……?」

 その声はさっきよりも音程が高く可愛らしい声です。

(りん)ちゃんだよね?」

「はい」

「そうね、みんなに書いてもらった方が良いかな、文の前に名前を書いてね、簡単で良いから」

「はい、解りました」

「そんなんで僕達は治るんですか?」

 今度は(いつき)君のようです。

「うん、治るよ! 時間は掛かると思うけど…… それで、一度川本市の医療センターに行こうと思っているんだけど」

「良いんじゃないですか! 僕達のために先生が勉強に行くんでしょう」

 私が一人で行ってどうするの……

「そうじゃなくて、あなた達も行くのよ!」

「それって、俺達を入院させるのか!」

「飛鳥ちゃん、それって酷くない!」

「そうじゃ無いから! ここの診療所じゃ検査とかも出来ないし、私だけじゃなく他の先生の意見も訊きたいのよ!」

 まったく、樹君だけじゃ無くて湊君まで割り込んで来るんだから……

「解りました。それでいつ行くんですか?」

「それは女将さんに話をして調整するから」

「へえーっ、なんか楽しみだな」

 あれ、今のは樹君じゃないよね! 話がまとまったら、また湊君になってるようだけど……

 その後、私はえびす屋さんに来ました。晴翔君の事を女将さん…… 麻子(あさこ)さんに話さないといけないからです。

「こんにちは! 診療所の今村ですけど……」

「あら、飛鳥先生ちょっと待ってね」

 麻子さんにそう言われた時でした……

「こんにちは飛鳥さん」

 えっ、如月先生(きさらぎせんせい)! そこには麻子さんと如月先生が話をされてるようでした。


晴翔君の事でえびす屋さんに行った時、如月先生が…… また、会合とかで清川温泉に来ているのかな? ところで、晴翔君の母親って、麻子さんじゃないですよね……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ