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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
最終章 清川村を去った後
53/55

53 デジャブ?

お待たせしました第53話を更新しました!


今日は雫の実家へ挨拶に行く事になってましたけど、朝から変な夢を……

今村(いまむら)……」

 えっ、誰? でも、この声は何処かで聞いたことがあるんだけど……

「今村久しぶりだな……」

「……」

飛鳥(あすか)先生!」

 いきなり、大きな声で私を呼ぶ声? ハッ! あれ……

「あれ、ここは……」

 目の前には(しずく)が眉間に皺を寄せ、膨れっ面で立っています。

「もう、なに寝ぼけているんですか?」

「へっ!」

 私はパジャマ姿のままベッドの上でボーッとしていました。

「今日は私の実家に行くんですよね!」

 あっ、そうだ忘れてた……

「あっ、ごめんすぐに準備するから」

 あっ、美彩(みさ)先生にも連絡しないと……

「飛鳥先生、美彩先生にも言って無かったでしょう」

「えっ! どうして知ってるの!」

 私は雫の顔をみますけど……

「さっき美彩先生から連絡がありました遅刻ですよ! って」

「あっ、ごめん……」

「もう、それは良いですから早くしてください。もう九時回っているんですから」

「はい……」

 はあ、やってしまいました。急いで準備しないと…… でも、さっき夢の中で声を掛けて来たのは、誰でしたっけ? まあ、夢の中の話ですから良いですけどね。そう思いながら髪を整えてメイクをします。着て行く服はこれで良いかな。

 そして、準備が整いアパートを出たのは十時を過ぎていました。これだと今津(いまづ)に着くのは十二時を回ってしまいますね……

「雫、今津でお昼を済ませてから実家の方へ行こうか」

「お母さんがご馳走を準備して待ってるそうです」

「あっ、はい……」

 はあ…… 重ね重ねすみません。私が寝坊してしまうとは…… そういう事でなるべく早く急ぎましょう。あまりお待たせるのも悪いですからね。


 急いだお陰でなんとか十二時前に着きましたけど……

「あっ、お土産!」

 あっ、そうでした……

「ねえ、雫のご両親は何が好きなの?」

「えっと…… やっぱり水翔堂(すいしょうどう)のチーズ饅頭です」

 いや、それは……

「それは雫が好きなんでしょう」

「そうですけど、私が小さい時からパパもママもよく食べてたから」

 パパ、ママ? 雫は両親の事をそんな風に呼んでたのね。

「うん、それじゃそうしようか」

「はい」

 私は、雫お薦めの水翔堂さんでチーズ饅頭を買って雫の実家に来ました。一度来た事はありますけど、やっぱり緊張しますね…… しかし雫は、そんな私をおいてサッサと中へ入って行きました。

「ちょっと雫……」

 まあ、私も入りますけどね……

「あっ、飛鳥先生いらっしゃい」

「こんにちは、お邪魔します」

 何だか緊張しましたけど、前回同様優しく迎えて頂きました。

「あの、これ良かったら食べて下さい」

 私はさっき買ったチーズ饅頭を渡しました。

「あら、水翔堂さんの、これ大好きなのよ! ありがとう」

 喜んで頂きましたので良かったです。

「でも、飛鳥先生見違えましたよ!」

 雫のお母さんにそう言ってもらいましたけど…… そう言えば、前回ここへ来た時はスーツでしたね。ちなみに今日は淡いピンクのブラウスにグリーンのロングスカートで、一応カーディガンも持っています。

「飛鳥先生はこっちの方が良く似合っていますね」

「あっ、ありがとうございます」

 その後、リビングでお昼をご馳走になります。

「さあ先生、沢山食べてくださいね!」

 今回もお寿司をご馳走になりました。雫の話では、今津は漁港の町なので、何か特別な時はお寿司が定番らしいです。

「もう清川(きよかわ)村からは帰って来たんですよね」

「はい、今は城南中央(じょうなんちゅうおう)でクリニックをするための準備をしています」

「あら、開業するの?」

 あっ、そういう言い方をしたら、そう勘違いされますよね……

「あっ、いえ、私の知り合いの先生のところで勤務医をします」

「あら、そうなのね。でも、勤務をするなら総合病院とか大学病院が良かったんじゃ……」

 まあ、お母さんの言う通りそうなんですけどね……

「おい、飛鳥先生は前に大学病院の先生から言い掛かりをつけられて……」

 お父さんには気を遣ってもらいましたけど、まあそうなんですよね……

「飛鳥先生はね、ジェンダークリニックをそこでするんだよ」

「えっ、ジェンダー……」

 お父さんもお母さんも今ひとつ理解してはいないようです。

「はい、ジェンダークリニックと言って私と同じように悩んでいる人の為のクリニックです」

「はあ、でも患者はそんなに多く無いんじゃ……」

 まあ、普通はそうですよね。

「まあ、内科や外科みたいに多くは無いと思いますけど、予約も結構入っていますので」

「予約制なの?」

「はい、ジェンダークリニックは、まだまだ少ないクリニックなので遠くの街や隣県の方が利用しやすいように予約制にしました。その甲斐あって私の事を頼って予約を入れて頂いています」

 と説明しましたけど、予約制にしたのは、まだ開業してないのに問い合わせとか予約の連絡が殺到したらしいんですよね……

「あら、それなら患者さんも結構多いかも知れないですね」

「はい、でもジェンダークリニックの患者さんがいない時は内科の方も診ないといけませんので」

「まあ、それじゃ結構忙しいのね」

「はい」

 そんな話をしながら頂くお寿司は最高に美味しかったです。その日は夕方まで今津で過ごしました。


「今村、久しぶりだな……」

「えっ、誰!」

 この声は……

「俺だよ今村」

「二階堂君!」

「ああ、こっちに戻って来たんだな」

「二階堂君も日本へ戻って来たの」

「うん」

「梨菜も一緒なの?」

「ああ…… それじゃな……」

「えっ、ちょっと二階堂君……」

「ハッ!」

 ここは…… 隣では雫が幸せそうに眠っています。はあ、夢か…… そういえば、昨日も同じような夢を…… 私は起きてシャワーを浴びました。なんであんな夢を見たんだろう。

「飛鳥先生、今日は早いですね」

 雫も起きて来ました。

「うん、ちょっとね……」

 私はドライヤーで髪を乾かしながら雫と話をしています。

「飛鳥先生、朝食何にしますか?」

「私はトーストで良いよ」

「それじゃ目玉焼きも作りますね」

 はあ、何故あんな夢を見たのかな……

「プルプルプル……」

 あっ、私のスマホが鳴ってます。

「もしもし」

『飛鳥、久しぶり』

「えっ、梨菜?」

『うん、今まだ清川村にいるの?』

「ううん、城南市に戻って来たけど」

『それじゃ、今からすぐ城南医療センターに来れない?』

「えっ! 今から?」

「うん、義樹(よしき)がちょっと大変なの」

 えっ、二階堂君?

「帰って来てるの?」

「うん、とにかく早く来て! お願い……」

 そんな、朝早くに言われても……

「うん、解った……」

 何があったのか判らないけど、急がないと…… でも準備が…… ああ神様、時間を止めてよ! 着替えに朝食、あっ、まだ髪乾いてない…… はあ、助けて! メイクが決まらない…… 二階堂君(あいつ)の夢見た所為で……

「飛鳥先生、どうかしたんですか?」

 あっ、私、変だったかな……

「うん、今から医療センターに行って来る」

「何があったんですか?」

「えっと、大学の同期の、に…… 梨菜から連絡があって、すぐに来てって事だから……」

 本当は二階堂君だけど、呼ばれたのは梨菜だから良いよね。

「解りました! すぐに朝食出来ますから、先生は準備をしてください」

「ありがとう…… 雫」

 私は出掛ける準備をしました。服は、いつもの白いブラウスにカーディガンとブルーのスカートで良いよね。その後、朝食を食べてすぐにアパートを出ました。雫が準備をしてくれたので助かりました。


 連絡をもらって一時間後、私は城南医療センターに到着しました。

「あれ、飛鳥先生?」

 山脇(やまわき)先生です。今出勤されているんでしょうか。

「あの、梨菜が来てると思うんですけど……」

「あっ、冬野(ふゆの)さんね」

「はい」

 えっと、今は二階堂になってると思いますけど……

「ええ、四階の感染症病床にご主人が入院してるから」

「入院?」

「多分、ノロウイルスだと思うんだけど」

「大丈夫なんですか?」

「うん、たぶんね。早く行ってあげなさい」

「はい」

 私は山脇先生とは別のエレベーターで四階の感染症病床に来ました。

「飛鳥、こっち!」

 そこには大学の同期の冬野じゃなかった二階堂梨菜がいました。

「梨菜、いつ戻って来たの」

「十日くらい前かな…… 義樹が北山大学(きたやまだいがく)病院に行く事になったから私も何処かで医師が出来ないかなって! 飛鳥はどうするの?」

「私は知り合いのクリニックでジェンダークリニックをする事になってるの」

「えっ、それって開業医って事?」

「ううん、そこのクリニックで勤務医として働くの」

「そっか、でも折角ジェンダークリニックをするんなら北山大学のような大きい病院でジェンダー外来をやれば良かったのに」

「うん…… でも、大学はちょっといいかな…… それにジェンダー外来とかもそんな簡単に出来ないから」

「そうか、ところで玲華(れいか)はどうしたの? ここにいたはずだけど」

 あっ、そうか梨菜は知らないんだね。

「玲華は北山大学病院にいるよ!」

「なんで! 山脇先生からオーベンをやってもらってたよね」

 それは如月(きさらぎ)先生がね……

「よく判らないけど色々と事情があったみたいだよ」

「ふーんそうなんだ…… はあ…… 仕事どうしようかな……」

「ねえ、国際医療はどうなったの?」

「ああ、あれは元々五年契約なの! 義樹がスキルアップ出来るからって行ったんだけど、人手不足だし、設備も良く無いし、もう大変だったよ! おまけに義樹は変な病気になるし……」

「病気ってノロウイルスじゃないの?」

 そういう風に山脇先生が言ってましたよね……

「うん、症状が似てるからたぶんそうかなって」

 まあ、それにしても感染症病床に入院って、よっぽどなんじゃ……

「飛鳥、それじゃ中に」

 私と梨菜は白衣を着て中へ入ります。そこにはちょっと痩せた二階堂君が……

「二階堂君、大丈夫なの?」

「やあ、今村久しぶりだな……」

 何を呑気な事を……

「凄く痩せたんじゃないの? 大丈夫」

 梨菜も心配で仕方ないみたいですけど……

「うん、大丈夫! 明日くらいには感染症病床(ここ)を出て一般病棟へ移れるから」

「でも、北山大学へ行くんでしょう?」

「まだ、二週間くらいあるから、それより梨菜を北総の医師に出来ないか!」

「えっ、梨菜を!」

 二階堂君は色々と思うところがあるんでしょう。この五年間は二階堂君にも梨菜にも色々とあったんでしょうね……

「私は街の病院を探すから……」

 梨菜はそう言うけど……

「北総だったらいつでも大丈夫だと思うよ、あそこは基本的に医師が不足してるから」

「だから私は……」

 梨菜は北総のような山の病院は無理なのかな……

「まあ、城南中央とか訊いてみたら」

 そういう事で、なんとか二階堂君は大丈夫なようです。梨菜もどこかで勤務出来ると良いね!

久々に二階堂君と梨菜に会いましたけど、二階堂君は感染症で入院して、梨菜は無職に…… これからどうするのかな……

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