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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
最終章 清川村を去った後
51/55

51 内視鏡講習

お待たせしました第51話を更新しました!


清川村から帰って来た早々、内視鏡の講習をする事に…


今回は更新にちょっと時間が掛かりました。

 私は城南市(じょうなんし)に帰って来て上杉(うえすぎ)クリニックの見学をしましたけど、内装工事とか内視鏡やレントゲン、電気設備など諸々がもう少し工事がかかりそうです。でも、ジェンダークリニックの予約が少しずつ入って来てるというのは嬉しいですね! だから私も患者さんの力になれるらように頑張らないといけませんね。

飛鳥(あすか)君、明日は大学病院の方へ行ってもらって良いかな」

「はい…… 何をするんですか?」

「内視鏡の講習をね! 僕も行くから」

「あっ、でも午後からは北総(きたそう)へ行きますので……」

「あっそうか、でも挨拶だけなんだろう」

「はい」

「それじゃ、講習を少しくらい延長しても大丈夫だよね!」

「はあ……」

 上杉先生って、こんなに強引な人でしたっけ……

「あの…… 私は」

 (しずく)も北総へ行かないとだよね……

「雫も北総へ行くんだから明日は一緒ね」

「はい」

「雫さんは明後日からクリニックでお仕事よろしくね!」

 すかさず美彩(みさ)先生からお願いされました。

「はい」

 そういう事で今日はこれで解散です。


「ただいま!」

 私と雫は久々に実家へ戻って来ました。

「あっ、お帰りみんな待ってるから行ってね飛鳥も雫さんも」

 姉にそう言われて、座敷の方へ行くと……

「飛鳥、雫さんお帰り!」

 お父さんお母さん、それに姉夫婦と子連れの女性がひとり……

瑞稀(みずき)来てくれたんだ!」

「うん、お邪魔かなと思ったんだけどね!」

 瑞稀の腕のなかで眠っているのが瑞穂(みずほ)ちゃんかな。

「ねえ、瑞穂ちゃんはいくつなんだっけ!」

「まだ一歳だよ! お姉さんの結婚式の時が妊娠一カ月だったんだよ。あれから二年だからね」

「そうか、いつ生まれたの?」

「三月三日」

「へぇー、雛祭りの日だね」

「うん」

 うわー小さい子は可愛いな、みんな小さい時はあんなんだったんだよね。

「お手てが小さくて可愛いね」

「でも、もう掴まり立ちするからね」

「そうなの、凄いね」

「もうしばらくしたら、立って歩くから目が離せないよ」

 そう言って苦笑する瑞稀です。

「さあ、みんなで乾杯して夕食にしようか」

 父の一言で夕食です。その後、みんなから清川村(きよかわむら)の事をいろいろ訊かれましたけど、久々に楽しいひと時でした。

「飛鳥、明日はどうするの?」

 母からそう訊かれました。何か頼まれるのかな……

「明日は雫と一緒に北山(きたやま)大学で内視鏡の講習! その後、北総に挨拶に行かないと」

「内視鏡の講習って必要なの?」

 姉からそう言われますけど……

「人に検査するのにぶっつけ本番は駄目でしょう」

「そうか、検査に行って医師から今日初めてなのでよろしくとか言われたら怖いよね」

「まあ、それ以前の問題だと思うけどね」

「それじゃ唯香(ゆいか)、お爺ちゃんとこよろしくね」

 姉はお爺ちゃんとこへ行きたくないから私に訊いたのかな……


 翌朝、私は雫と一緒に北山大学病院へやって来ました。

今村(いまむら)先生ですよね」

 えっと、この方は…… 上野教授(うえのきょうじゅ)ですよね。

「あっ、おはようございます。今日は講習をして頂けるということでありがとうございます」

「いえ、あなたが雫さんですね、よろしく」

 雫は私の背後に隠れながら小さい声で挨拶しているようです。

「あっ、検査室で甲斐(かい)先生がお待ちですよ」

 えっ、甲斐先輩が講師なの……

「あっ、はい」

 そう言って検査室へ来ました。

「おはようございます」

「おはよう飛鳥! 雫さんもよろしくね」

「あっ、玲華さん…… よろしく」

 雫は相変わらず借りて来た猫のようです。

「あれ、玲華が講師なの?」

「なに、私じゃ不満なわけ!」

「そうじゃなくて、表で上野教授にあって、甲斐先生がお待ちですよって……」

「うん、私も甲斐だから」

「あっ、そうか……」

 まぎらわしい……

「それにしても講習にワンピーを着てくるとはね」

「ちゃんと白衣は着るんだから」

「まあ良いけどさ、でもまさか、私があなたに講習をする時が来るなんてね」

「だって五年間、清川村でゆっくりしてたから」

 その時、上杉先生も検査室に入って来ました。

「飛鳥君、来たね。それじゃ始めようか」

 そして、講習は始まりました。

「飛鳥君も咽頭の仕組みは解ると思うけど、丁度声帯の下の所、下咽頭に食道への入口があるんだけど」

「塞がっているんですよね」

「えっ、そうなの?」

 何だか玲華の態度が可笑しいんですけど……

「玲華ちゃんは知らなかったの?」

 上杉先生いくらなんでもそんな事は……

「そんなの知ってるに決まってるじゃない」

 やっぱり玲華の態度が可笑しいです。

「それじゃ、まずは人形を使ってやってみようか。雫さんもスコープを持って補助をしてね」

「はい」

 そういう事で、私は人形の口にマウスピースを付けてスコープを挿入しますけど…… 声帯の下部にある食道の入口へスコープが入りません。

「本来は、患者さんに唾を飲み込んでもらって、そのタイミングを見て入れて行くんだけど、人形ではスコープの先端を少し下向きにして入れてみたらどうかな」

 はいった!

「はい、すんなり入りました」

「飛鳥はどうしてそんなに簡単にやってのけるの?」

「えっ、簡単じゃないよ! 上杉先生の説明が解りやすいんだよ」

「まあ、僕の説明が良いかどうか別として、上手く出来る方が良いでしょう」

 上杉先生の今の言葉はちょっと気になりました。私が上手い方が玲華にも都合が良いようですけど、どういう事……

「あとは、ゆっくりと入れていくだけだよ! 胃内視鏡は食道に入るまでが大変なんだ」

「大腸内視鏡は意外と楽だけどね」

「玲華、そうなの?」

 玲華はお気楽そうにそう言いますけど……

「大腸は下行結腸から横行結腸へ進むのが大変なんだ。玲華ちゃんはすんなりいったの」

「あそこはただ直角に曲がっているだけでしょう」

「直角というか人によっては鋭角になってる人もいるからね」

 確か大腸の形って人によって違いますよね……

「そんなにやり難いかな」

「玲華ちゃんが検査した患者さんは偶々やりやすかったのかな…… 大腸は人によって形が歪でね図に書いてあるような形ではないんだよ」

「えっ、そうなの!」

 えっと、玲華はやった事あるんじゃないの?

「まあ、大腸の話はいいけど飛鳥君、今どこまで来た?」

「あっ、幽門を過ぎて十二指腸の入口まで来ました」


「うん、それじゃそろそろ本番にしようか」

「えっ、本番!」

「もう、十時過ぎたから患者さんも早くやりたいだろう昨日の夜から飲まず食わずだろうから」

「……」

 患者さんって……

「それじゃ玲華ちゃん、麻酔をするから、雫さん麻酔をやってみようか」

「えっ、私ですか!」

 雫も私もちょっとびっくりですけど、玲華が一番驚いている……

「なあに、ジェル状の麻酔液を舌の上に乗せるだけだよ。玲華ちゃん口を開けて」

 雫は上杉先生に言われた通りジェル状の麻酔液を注射器のような物で舌の上に乗せます。良いな、私もやってみたかったな……

「飛鳥君もやって見たかった?」

 上杉先生にそう言われましたけど、私そんなに物欲しそうにしてたかな……

「内視鏡の準備は看護師さんがやる事が多いから覚えてもらわないとね」

「えんえい!」

 玲華が何にか言ってますけど……

「玲華ちゃん、十分くらいはそのままね。唾液が溜まって来たら出しても良いけど、雫さんスポイドで出してあげて」

「はい」

 その間に本番用の内視鏡を準備して、あとは玲華の麻酔が完了するのを待つだけです。

「上杉先生、玲華は何故検査をするんですか?」

「そうだね、偶に酸っぱい物が上がって来るらしいんだよ」

「それって、逆流性食道炎じゃ……」

「多分ね、だから検査をして治療をしないとね」

 玲華が喋れないのを良い事に色々と話をしました。

「よし、そろそろ良いかな」

 準備完了のようですけど……

「玲華大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ! ちょっとだけ麻酔液を飲んじゃったけど」

「玲華ちゃん大丈夫だよ害がある物じゃないから」

 本当かな…… その後玲華はベッドに横になります。口のそばにはシートを敷いたうえにバットを置きます。

「それじゃ玲華ちゃん始まるよ」

「飛鳥君!」

 私は玲華にマウスピースを咥えてもらい口の中へ先端が緑色に点滅しているスコープを入れていきます。玲華の声帯が見えて来ました。

「飛鳥君、その下部に食道への入口があるからね」

「はい」

 私がもう少し先へ入れると……

「玲華ちゃん、唾を飲み込んでみて」

 玲華がゴクッとした時、食道への道が開きましたので、すかさずスコープを入れます。

「先生、入りました」

「凄いね! まさか一発で入れるとは」

 そうして進んで行きますけど……

「何これ! 真っ白だよ」

「うん、立派な逆流性食道炎だな」

 その時、玲華が『おえっ』とエズキました。これは嘔吐反射というやつです。

「玲華ちゃん、もう少し我慢してね!」

 もう少し行くと噴門を通り胃に到達しました。スコープを動かして確認しますけど異常はないようです。

「飛鳥君、少し空気を入れて」

 私が空気を入れると胃が膨らみ確認しやすくなりました。

「こっちの方が検査しやすいですね」

「うん、だけど……」

「げふっ!」

 今度は玲華がゲップをしました。

「うーん、玲華ちゃんの噴門は、ちょっと緩いみたいだね」

 その後、幽門を通り十二指腸まで来ましたけど、問題は無いようです。もう一度スコープを戻しながらポリープとか炎症部が無いか確認しながら抜いて行きます。

「玲華大丈夫?」

「うん、ちょっと横になってて良い?」

 相当キツかったようです。

「あとは、スコープの洗浄だけど、雫さん良いかな」

 そして、上杉先生から指導してもらい洗浄をします。まずはスコープのレンズ部分をブラッシングして洗浄機へ!

「なんだかベトベトしてますよね」

 雫、それは体内に入れてるからね…… 玲華の体液はとくにベトベトかも知れないけど……

 そういう事で、私達の内視鏡講習と玲華の内視鏡検査は終わりました。

玲華に練習台になってもらい内視鏡講習が終わりましたけど…… 玲華はちょっとグッタリです。

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