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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第一章 田舎の診療所
5/55

5 星野晴翔

お待たせしました第5話を更新しました!


今回は村立病院での初勤務ですけど、そこに晴翔君が現れました……

今日は村立病院勤務の日です。建物自体はちょっと大きめの立派な物ですが…… 中には看護師さんが二人、医療事務の女性が一人だけなんです。以前は入院施設もあったみたいですけど今は無理です。それに医師は日替わりで今日は私が一人だけです…… まあ、何かあったら連絡するようにと慶子(けいこ)先輩から言われてますけど、ちょっぴり不安です。

今村(いまむら)先生、早速ですけど、患者さんです」

 看護師の上村(うえむら)さんです。

「はい、診察室へ入れてください」

 患者さんは二十歳くらいの若い男性ですけど…… いや、彼は確か晴翔(はると)君…… 私はカルテを確認しますけど、初診ですね。

「おはようございます。どうしましたか?」

 私が笑顔で彼に訊きますけど……

「えっと、頭が痛くて熱ぽいんですけど」

 私は聴診器を使って診察して、咽頭と扁桃腺も確認します。

「うーん、喉の炎症もないですね、熱は?」

「三十六度八分です」

 看護師の上村さんがそう言います。

「熱ぽいのはいつからですか?」

「昨日、仕事が終わってからだそうです。あっ、いや終わってからです」

 あれ、この間えびす屋さんで見掛けた時よりテキパキ答えてますね。この間は女将さんの話にうん、うんと元気なさそうに頷いているだけだったのに……

「そうですか、ちょっと風邪気味なのかも知れないですね」

「先生、注射してもらえませんか?」

「えっ、注射?」

「はい、そしたら気分も良くなると思うんですけど……」

 いきなり注射ですか……

「すみませんけど、これくらいの症状では注射は出来ないんですけど」

「あっ、そうですか……」

 彼がそう言った後でした。

「そんなのどうでも良いんだよ! 患者が注射しろって言ってんだろう!」

 彼はいきなりそう言います。私はびっくりしました。

「ちょっと、晴翔君!」

 私がそう言うと……

「あっ、すみません、失礼しました」

 なんだか、ちょっと変ですね、感情の起伏が激しいんですけど……

「注射は出来ないけど、頭痛薬くらいなら出せるけど」

 晴翔君は誰かとブツブツ話しているような、でも一人ですよね、なんでしょうかこれは……

「あっ、はい、お願いします」

「上村さん、アセトアミノフェンを三回分お願いします」

「はい」

「……」

 相変わらず晴翔君はなにかブツブツ言ってるような……

「晴翔君、一回二錠飲んでね。続けて飲む時は四時間以上間隔を空けて下さいね」

「はい、解りました」

 そう言って彼は診察室を出て行きました。何だろうこの感覚、凄く違和感を感じます。彼は何か他の病気があるような……


 夕方、徳間(とくま)先生が帰って来ました。

「今村先生、変わった事は無かった?」

「あの、白水郷黒木(しらみずごうくろき)星野晴翔(ほしのはると)君は以前診察した事がありますか?」

「星野晴翔? いや、初めて聞く名前だと思うけど……」

「そうですか……」

「その患者さんがどうかしたの?」

「はい、それが……」

 私も上村さんもちょっと躊躇しました。だってなんて話せばいいのか……

「先生や上村さんに注射をしろって騒いだそうです」

 えっと、もう一人の看護師の西島(にしじま)さんが説明してくれました。

「そうですか、暴力を振るわれたとかは無いんですよね」

「はい、私が一言声を掛けたら、急に元に戻ったように失礼しましたって……」

 徳間先生も不思議そうな顔をしています。

「何だか二重人格のような感じですね」

 二重人格ですか……

「しかし、何もなくて良かったよ! 怪我でもされたら大変な事になるからね」

 まあそうですね、そうなると大問題ですけど……

「まあとにかく、今後星野晴翔は注意した方が良いかな」

「はい」

 そういう事でその話は終わりました。

「今村先生、診療所へ戻るんですよね」

「はい」

「補充の薬品が来てますので持って行ってもらって良いですか、今村先生の薬も来てますので」

 あっ、私のエストラジオール吉草酸エステル! 良かった間に合って…… 予定では明後日くらいで二週間になりますから、明日にでも打ってもらわないといけませんね。


 これで村立病院での私の勤務も終わり診療所へ戻って来ました。

「あっ、飛鳥(あすか)おかえり!」

「慶子先輩、女性ホルモンが来たので明日にでも打ってもらって良いですか」

 私は嬉しそうに笑顔で言います。

「うん、良いけど…… それって他の薬品も来てるのよね」

「はい、車の中にあります」

「だったら薬品庫に保管するのが先でしょう」

 私達四人は薬品を総出で保管庫へ移しました。と言ってもダンボール二つ分ですけどね!

「それで初勤務はどうだった?」

「はい…… 晴翔君が来ました」

「えっ、何しに来たの?」

 まあ、具合が悪くて来たんですけどね、私は今日の事を先輩に話しました。

「えっ、あの晴翔君が大声を上げたの?」

「はい」

「晴翔君って、ちょっと可笑しいよね!」

「はい、私もそう思います」

「こうなったら飛鳥の出番だね! 私は専門外だから」

 まあ、確かにそうなりますけど……

「でも、向こうから病院に来ないと、診察もカウンセリングも出来ないから」

「まあ、そうだね…… 症状にも気付いてないかも知れないしね」

 それにしても、この村で精神障害…… 場合によっては精神科医療センターに行ってもらう、いや、連れて行くか迎えに来てもらうか考えないと…… それにしても、統合失調症とはちょっと違うし、パーソナリティ障害の可能性があるのかな…… もしかすると他の精神疾患なのかも知れません。そうなると私で太刀打ち出来るでしょうか……

「飛鳥先生夕食にしませんか、今日はお肉が安かったのでしゃぶしゃぶですよ」

 (しずく)がそう言って準備をしてます。でも、そこは焼肉とかじゃないんだね……

「うん、ここで食べるの?」

「はい、慶子先生や華純(かすみ)さんも一緒にです」

 私は不安を隠しつつみんなの前では笑顔を忘れないようにしました。

『プルル、プルル、プルル……』

「はい、出羽(いずわ)診療所です」

 慶子先輩が対応していますけど、どうやら急患のようです。

「女将さん、どうしたんですか?」

 えっ、女将さん? まさか晴翔君?

「はい、解りました。すぐに伺います」

 そう言って先輩は電話を切りました。

「先輩、何かあったんですか?」

「うん、えびす屋さんなんだけど、お客様が嘔吐と熱があるみたい」

「私が行きます」

 私はすかさずそう言いましたけど、先輩は私の魂胆を見抜いているみたいです。

「飛鳥、晴翔君と接触出来るチャンスだけど、私も行こうか!」

「先輩、私が先に行って状況を見て報告しますので必要な物を持って来て欲しいんですけど」

「うん、そうだね、解った!」

 そういう事で、私はメディカルバッグを持ってえびす屋さんへ向かいました。


「こんばんは、出羽診療所です!」

 私が声を掛けると、女将さんが出て来ました。

「あっ、飛鳥先生お願いします」

 私は患者さんがいる部屋へ案内されました。

「ここです」

「失礼します」

 そう言って中へ入ると、患者さんはちょっとぐったりしています。

「もう、大丈夫ですよ」

 そう言って私は聴診器で診察をします。胃と腸が弱ってます。

「まだ、気持ち悪いですか?」

「はい……」

「熱を測りますね」

 耳で測る体温計で熱を測ると三十七度七分ありました。

「熱はそんなにないですけど嘔吐で身体が衰弱してるかも知れないので点滴をしますね」

 その後、点滴をした甲斐あって少し落ち着いたようです。整腸剤と吐き気止めの薬を処方しましたので大丈夫でしょう。

「女将さん、このお客様は明日お帰りですか?」

「いえ、今日お見えになって二泊される予定です」

「そうですか、明日は旅館でゆっくりされた方が良いと思います」

「はい、解りました。飛鳥先生有難うございます」

 その後、私は慶子先生に連絡をしてからロビーへ戻りました。

「女将さん、明日の朝もう一度様子を見に来ますね」

「ええ、飛鳥先生お願いね」

 そう話をして旅館の外に出た時でした。

「ちょっとやめてくださいよ!」

 えっ、何してるの! 男性が二人で女の子の手を引っ張っています。

「おまえ、晴翔だろう! 何、女の子みたいにしてるんだよ!」

 えっ、晴翔君!

「私は晴翔じゃなくて(りん)です!」

「解った解った、それじゃ凛ちゃん、一緒に飲みに行こうよ」

 凛と名乗る晴翔君は嫌がっています。

「ちょっと、何をしてるの? いじめ?」

「あんた誰だよ!」

「関係ない奴は黙ってろよ!」

 二人の男性は私に威嚇しています。しかし、その隙に晴翔君は私のそばに来ました。

「私は出羽診療所の医師です」

 私がそう言ったらちょっと慌てたように……

「チェッ、行こうぜ!」

 そう捨て台詞を残して行ってしまいました。

「晴翔君大丈夫?」

 私が声を掛けると、彼は顔を顰めて……

「私は晴翔じゃなくて凛です」

 えっ、凛ちゃん…… その直後!

「あんた、俺達に関わんじゃね!」

 えっ、なに、凛ちゃん? 晴翔君? 誰! 私は理解出来ません!

「ちょっと(みなと)、割り込まないでよ! 今は私のターンでしょう」

 凛と名乗る晴翔君は誰に言っているのか判りませんけど反論しています。これは、わざとやってるの? それとも……

「男二人に連れて行かれようとしたくせに何言ってんだよ!」

 今度は凛と名乗る女性から口調の悪い男性に変わったようです。これって一体どうなっているの?

「そうやって見てるんなら助けてくれても良いでしょう」

 えっ、また変わった? これって……

「おまえらいい加減にしろよ! 人前で」

 今度はまた別の人……

「あの、あなたは多重人格なの?」

 私は少し躊躇しながら訊いてしまいました。

「あっ、その…… 僕は(いつき)と言います。信じられないと思うけど他に湊という男と凛という女の子がいます」

「それと、主人格の晴翔君の四人なのね」

「はい、あの、あなたは?」

「私は出羽診療所で医師をしている今村飛鳥です。専門は一応精神科よ」

「それじゃ、俺達がこのままだとどうなるのか判るのか」

 また変わった! でも、躊躇してそう言うのは湊という気合の入った男性のようです。

「それはカウンセリングをしてみないと判らないわ! 良かったら明日診療所へ来ない! 色々と話を聞かせて欲しいわ」

 すると樹と言った男性が訊きます。

「俺達は病気なんですか!」

「あなた達は解離性同一性障害だと思います」

 私がそう言うと……

「それは治るんですか?」

 また変わった! 今度は凛という女の子に変わって不安そうに両手を胸のところで組んで訊いています。

「ええ、時間は掛かるけど治るって訊いた事があるわ! だから、明日必ず診療所へ来てね」

 私がそう言うと晴翔君は行ってしまいました。しかし、本当にいるんですね、私は初めてそういう症状の人を見ました。

晴翔君の正体が判りました。これって解離性同一性障害…… 飛鳥に治す事が出来るでしょうか……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 飛鳥さんが忙しくも幸せそうなところがいいです! [気になる点] 晴翔くんが主人格、凛ちゃん湊くん樹くんはイマジナリーフレンドでしょうか? 解離性同一性障害の知り合いの方が過去にいましたけど…
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