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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
最終章 清川村を去った後
48/55

48 浜田さんの検査

お待たせしました第48話を更新しました!


飛鳥が城南市に戻っている時に浜田さんが診療所へ来たようで、江下先生が大変だったようです。

 私は清川村(きよかわむら)へ戻って来ました。

飛鳥(あすか)先生!」

 早速、(しずく)に声を掛けられました。お土産の催促かな……

「雫、ちゃんとお土産買って来たからね」

「もう、そんな事はどうでも良いんです! 先生はどうなるんですか?」

 えっと、どうなるって…… お土産の心配じゃないの? というより彼女にとってこの事は重大な問題のようです。

「もちろん帰るわよ」

「いや、だから…… やっぱり、医療センターへ行っちゃうんですか?」

 もう、よっぽど私と一緒にいたいのか、それとも不安なのか……

「ううん、私も美彩(みさ)先生のクリニックで雇ってもらう事になった」

「えっ! 本当ですか」

「本当よ!」

「それじゃ、これからもずっと一緒なんですね!」

「うん」

「良かったね、雫さん」

 華純(かすみ)さんがそう言いますけど……

「飛鳥先生、美彩先生って前に清川温泉に来てた人ですよね」

「うん」

「ところであの先生、何歳なんですか? 凄く綺麗な方でしたけど、何となく年齢不詳ですよね……」

 華純さんもそこのところは気になるんですね……

「私が小学六年の時に三十前後だったと思うから、もう五十歳前後だと思うけど……」

「いや、それは無いですよ! 今でも三十代で通用すると思いますけど……」

 いや、それはいくらなんでも言い過ぎでしょう。でもまあ、実際には五十歳は超えているはずです。私が小学生の頃、研修生だったとは絶対にありえませんから! そう考えるとやっぱり美彩先生は美魔女ですね!

「飛鳥先生、そんな事より浜田(はまだ)さんなんですけど」

 私達の話に割って入って来たのは江下(えした)先生です。

「浜田さんがどうかしたの?」

「浜田さんは検査とかしなくても良いんですか? 私じゃ手に負えませんよ」

 浜田さんは慶子(けいこ)先輩の時からの患者さんで、認知症では? と診療所へ来ていますけど…… 物忘れはあるみたいですけど、認知症とは思えません。それに、病状も進行しているとも思えませんので経過観察中ですけど……

「浜田さんはうちの診療所にもう十年くらい通っているけどね」

「えっ、十年!」

「うん、私が大学を卒業して温泉に遊びに来てたとき、先輩が見学に来ないって誘ってくれて、私はその時に浜田さんと初めて逢ったんだけど」

「その先輩の方が、慶子先生なんですか?」

「うん、そうだけど、なんで?」

「だって、私の事をずっと慶子先生って呼ぶんですから……」

 浜田さんは誰でも慶子先生だからね……

「でも、私の事は華純さんって言ってくれますけど……」

 えっ、華純さんはちゃんと呼んでもらえるんですね…… でも、前は看護師さんと呼ばれていたような……

「飛鳥先生が城南(じょうなん)市に戻っている時に私、慶子先生って呼ばれ続けて…… もう大変だったんですよ」

「そうなの?」

「まあ、いつもの事ですけどね……」

 苦笑しながら華純さんがそう言いました。

「でも、認知症じゃなくても他に病気が隠れているかも知れないので一度検査をした方が良いんじゃないですか?」

 まあそうですけど…… 検査費用を出すのは患者さんですし、今更検査という理由では…… なにしろ十年経ってますからね。

「まあ、でも娘さんと話をしてみましょう。前にも新薬を試して欲しいとも言われましたので……」

 とは言いましたけど、いざ電話をするとなると緊張します。

『もしもし、浜田ですけど……』

出羽(いずわ)診療所の今村(いまむら)です。お父様の件でお電話しました」

『あの、お薬を出してもらえるんですか?』

「いえ、そうではなくて…… 一度検査をしてみようと思っています」

『診療所でですか?』

「いえ、医療センターです」

『あっ、でも父は入院は嫌がると思いますけど……』

「いえ、検査だけですので日帰りです。認知症は進行してはいないと思いますけど、他に病気があって似たような症状があるのかも知れませんので……」

 そういう事で来週にでも診療所へ来てもらって紹介状を出す事にしました。あと長谷川(はせがわ)先生にも連絡しておかないと……

「飛鳥先生、どうでした?」

 早速、江下先生です。

「ええ、来週にでも診療所に来てもらって紹介状を出そうと思っています」

「医療センターですよね……」

「はい、この辺ではそこしかありませんから」

 この後、医療センターの長谷川先生にも電話をしました。

『飛鳥先生、お久しぶり! どうかしましたか』

「先生、うちの患者さんで軽い認知症の方がいまして検査をお願いしたいんですけど……」

『解りました! では追って連絡します。飛鳥先生も来るんですか?』

「いいえ、患者さんと娘さんが行きますのでよろしくお願いします」

『あっ、そうですか解りました』

 まあ、長谷川先生には青山(あおやま)先生がいますからお邪魔はしませんよ。そういう事で晴翔(はると)君や奏音(かのん)ちゃんに続き浜田さんもある程度は解決しそうです。


 一週間後、浜田さん親子がやって来ました。

「あっ、慶子先生おはようございます!」

「はい、おはようございます」

 もう、この挨拶はお決まりですね! 慣れました。

「浜田さん、ご気分は良いですか?」

「はい!」

「それでは娘さんは待合室でお願いします」

「はい、お願いします」

 今日は折角診療所へ来てもらったので、簡単ないつもの検査をしました。いつもと同じ結果が出ると思ったんですけど……

「浜田さん凄い! 全問正解です」

 えっ、全問正解…… 私はちょっと疑問を感じました。認知症とは断言していませんけど…… その可能性があると診療所へ来てる人が検査問題を全問正解は可笑しいです。その後、音楽療法をしている浜田さんに話をしました。

「浜田さん、百から七を引く計算で全問正解は凄いですね」

「飛鳥先生嫌だね、たまたまたい!」

 やっぱり、今日の浜田さんは可笑しいです。朝の挨拶では慶子先生だった私が、今は飛鳥先生になっています。

「浜田さん、やっと私の事を『飛鳥先生』って言ってくれましたね!」

 何だか浜田さんはハッとした表情をしています。

「飛鳥先生、検査ばしたらありのままの結果が出るとよね!」

「それって、浜田さんは認知症では無いという事ですか?」

「自分自身じゃそがん思うとる」

 それって、私達の事を騙してたの……

「それじゃ、ある程度は演技をしてたという事ですか?」

 私の表情は、少し険しくなっているかもです。

「…… そがんたい! 妻が死んでから一人で淋しかったと、でも診療所に来っごとなっていろんな人と話ばすっごとなってから楽しゅうなって…… 病人じゃ無かぎ診療所には来られんけん……」

 なんと浜田さんは十年の間、認知症の振りをしていたと……

「浜田さん、病気じゃなくても診療所へ来ても良いんですよ」

「しかし、そいは迷惑でしょう……」

「でも、月に一度健康診断を兼ねて来て下さい。とくに、こんな田舎じゃ、引き込まれた方が大変です」

 すると、浜田さんは……

「そいぎ、医療センターの検査は中止でよかね?」

「いえ、それはやりますよ!」

「えっ、なんでね!」

「元々、この検査は何か他の病気があるんじゃ無いかと調べるのが目的でしたから!」

 私がそう言ったあと、浜田さんは大きく頷いて……

「そいぎ、頼んどくばい!」

 そう、頼まれました。それにしても十年もの間、ずっと演技していた…… 診療所での楽しい時間を過ごすために……

 その日は、医療センターへの紹介状を書いて浜田さんに渡しました。来週の火曜日に検査をして、週末には結果が出ると思います。まあ、さほど悪い結果が出る事は無いと思いますけど……

「飛鳥先生、検査の結果次第では、医療センターへ行ってもらうんですか?」

「江下先生は何も思わなかった?」

「私は……?」

「飛鳥先生、浜田さんは本当は……」

 華純さんは何か気付いたみたいですね。

「浜田さんは認知症では無いです」

「どうして、そう言えるんですか?」

 江下先生からそう訊かれましたけど……

「計算問題をあんなに出来るのはありえないから」

「でも、毎回同じ問題でしょ! 流石に覚えていても……」

「本当に認知症なら覚えられないから」

「それじゃ、浜田さんは認知症じゃ無いんですね」

 華純さんからも訊かれましたけど、何か解っていたのかな……

「うん、どっちにしても来週の検査で解ると思います。認知症ならMRI画像で脳が萎縮してたりするから」

「はい、そうですね……」

 本当、今まで浜田さんの事を解ってあげられなかったのは、ちょっと反省ですね。


 今日は、医療センターで浜田さんの検査があっているはずです。

「飛鳥先生、浜田さん本当に何も無いんでしょうか?」

 雫がそう言いますけど……

「雫は何か気になるの?」

「いえ、そうじゃないですけど……」

 まあ、私も気にはなりますけど、今日の検査で認知症ではないという事は解ると思います。いつも楽しそうにおちゃらけた浜田さんでは無く、真剣に心の内を打ち明けてくれた訳ですから信じましょう。その時、電話が鳴りました。

「飛鳥先生、医療センターの長谷川先生ですけど……」

 えっと、何かあったんでしょうか?

「はい、今村です」

『飛鳥先生浜田さんですけど、本当に認知症なんですか!』

 えっ、浜田さん今日は一切演技無しなんでしょうか……

「あっ、まだ軽度なんですよ! それできちっと検査をした方がと…… それに、ほら、他の病気が隠れているかもですし……」

 ああ、ちょっとやらかしましたね。

『ああ、そうなんですね! それじゃ詳しい事がわかったら、また連絡します』

 長谷川先生は信じてくれたのかな、それとも……

取り敢えず、浜田さんも大丈夫そうです。詳しい検査をする事で、すべてが判るでしょう。

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