45 湊の決心と奏音の思い
お待たせしました第45話を更新しました!
湊君が突然、飛鳥の手を握り温泉街の路地裏へ…… 一体何をするつもりなんでしょうか!
私は湊君に手を引っ張られ路地裏へ連れて行かれました。
「ちょっと、手が痛いんだけど!」
「あっ、すまね……」
私は手を振り払い手首のところを撫でました。まったく、力任せに引っ張るから痛いじゃない!
「ねえ、晴翔君は?」
私はツンツンした態度で不愉快そうに訊きました。
「ちゃんと晴翔の許可はもらっている。ただどうしても言いたい事があったから……」
えっ、言いたい事? もう、言いたい事ってなんなのよ!
「それで、どうしたの?」
私の気分は更に不愉快です。
「あっ、いや、その…… 俺は、飛鳥ちゃんの事が好きだ!」
「……!」
「えっ、ちょ、ちょっと何言ってるの!」
私は顔が真っ赤になってしまいました。それって絶対に無理! だって、患者さんっていうか交代人格だよね! 絶対あり得ない。
「いや、いや、だから、もう俺も晴翔と一緒になるつもりだから…… でも、晴翔が自分の気持ちだけは伝えた方が良いって言うからよ! だから消えるまえに……
それでも、もうそのまま消えてくれれば良かったのに、また晴翔君も余計な事を…… でも……
「うん…… 解った…… ありがとう……」
私が最悪の気分でそう言った時でした。
「あっ、居た!」
華純さんと雫が私のそばへ駆けつけてくれました。
「湊、私の飛鳥先生を勝手に連れ回さないで!」
「いや、俺はちょっと話があったから……」
「話ってなによ!」
いや、雫、その話はもう良いから……
「いや、だから、その、樹と凛が出てくる事はもう無いんだよな!」
えっと、その話は訊いてないけど……
「あの二人は晴翔君と統合してるから大丈夫よ! あとはあなただけだから、湊君」
「そ、そうか…… 樹も凛も隙あらば晴翔を乗っ取ろうとしてたようだからよ」
「ちょっと、適当な事言わないで! 樹君や凛ちゃんがそんな事する訳無いでしょう」
雫はちょっとムキになってるかな……
「いや本当なんだ、樹は大学に合格したら表に出ている時間が長くなるから、それをきっかけに乗っ取るつもりだったんだ! 凛だって晴翔に優しく接していたけど、“私が表に出るから大丈夫だから“ とか言って、晴翔が表に出る時間をなるべく少なくして乗っ取ろうとしてたんだ!」
「やっぱりそうなんだ……」
「飛鳥先生、あんな奴の事を信じるんですか!」
雫は不機嫌そうにそう言いますけど……
「イマジナリーフレンドの湊君がそう言うなら間違いないと思う」
「飛鳥ちゃん、最後に信じてくれて嬉しいぜ! ありがとう。晴翔の事、頼んだぜ!」
「えっ、湊君……」
湊君は言いたい事を言ったあと、多分晴翔君と統合したと思います。
「あれ、ここは何処だ……」
晴翔君に戻ったみたいだね。
「晴翔君!」
「あっ、飛鳥先生。看護師さん達もどうしたんですか?」
「うん、湊君の話を訊いていたんだけど……」
「そうか…… あいつはもう、僕と一緒になったんだ……」
「晴翔君、気分はどう?」
「…… なんだか全てを失った気分です」
まあ、そうだね…… 三人の人格を失ったんだから……
「あいつ、何か言ってましたか」
「うん、樹君と凛ちゃんが晴翔君を乗っ取ろうとしてたって!」
「ええ、それは何となく解っていました。だから湊から色々と情報を聞いてましたから」
「酷い、晴翔君はそれを信じたの」
雫はそう言いますけど、彼女はよほど湊君の事を嫌っていたのかな……
「看護師さん、湊だから信じられるんだよ! 樹や凛は、ちょっとね…… でも、公務員になれたのは感謝してますよ」
やっぱり、晴翔君と湊君は他の二人とは違った絆で結ばれていたのかな……
「飛鳥先生、何かあったときは、また診療所へ行っても良いですか?」
「うん、何でも相談にのってあげるからね!」
それにしても、人格が違うとはいえ、私の事を好きだと言った湊君、私の事を頼ってくれる晴翔君…… どっちも同じ目をしてるんだよね…… それにしても湊の奴本気だったのかな、アラサーの私を捕まえて……
お盆も終わり、奏音ちゃんの夏休みも終わりが見えて来ましたけど、まだ退院出来ないのかな……
「飛鳥先生、こんにちは!」
えっ、奏音ちゃん!
「やっと退院出来ましたよ」
「えっ、そうなの、いつ退院したの? 連絡してくれれば迎えに行ったのに」
「だから連絡しなかったんです。でも母に迎えに来てもらいましたけど」
何だか私に気を遣っているのかな……
「それより晴翔君はどうなったんですか?」
ああ、晴翔君ね……
「晴翔君の病気は取り敢えず大丈夫だと思う」
「それって、凛ちゃんや湊君には、もう逢えないって事ですよね……」
「うん…… そうだね……」
奏音ちゃんにはあまり本当の事は言わない方が良いかな……
「先生、晴翔君は今どうしているんですか?」
「晴翔君は役場でちゃんと働いているよ」
「晴翔君に逢えますか?」
「うん、仕事が終わったあとなら良いんじゃない。連絡してみたら」
「うん、そうですね!」
そう言って、彼女は診療所から出て行こうとしましたけど……
「飛鳥先生、何故私が居ない間に凛ちゃんが消えちゃったんですか? どうして湊君も……」
奏音ちゃんはそこが一番知りたかったんだね。
「奏音ちゃん、原因は湊君と凛ちゃんの喧嘩が原因なの」
「でも、あの二人の喧嘩は珍しくないですよね!」
「まあ、そうなんだけど…… 二人が脳内で喧嘩するから晴翔君に被害が及んで、私が注意をしたら、凛ちゃんがお盆前に消えちゃったの」
「そうか…… 凛ちゃんは、もう無理だと思ったんだね」
「えっ、何が……」
「湊君に一度メールをもらった事があるの」
「メール?」
「うん、凛ちゃんが晴翔君を乗っ取ろうとしてるって、最初は信じられなかったけど……」
「それは湊君がメールしたの?」
「はい、絶対に秘密だって!」
「それを信じたの?」
「だって、湊君は晴翔君のイマジナリーフレンドなんですよね! だから……」
うーん、電話で話せば凛ちゃんにも解るからメールにしたんだ。
「そうか、知っていたんだ」
「はい、でも、湊君まで消えなくても……」
「湊君は晴翔君の事をいつも一番に考えていたからね、それにもう自分の役目は終わったと思ったんじゃない、だから……」
「でも、結局は湊君が一番苦しかったんじゃないのかな……」
「そうだね……」
「でも、私が帰って来るまで居て欲しかったな……」
そうだよね…… 凛ちゃんにしろ、湊君にしろ、奏音ちゃんが一番仲が良かったもんね!
「飛鳥先生、私晴翔君に逢ってくれるように連絡する」
「うん、そうだね」
やっぱり、この二人は仲良しだね!
「先生、診療所で逢っても良いですか」
まあ、そうね、この村には喫茶店とかも無いから仕方ないかな……
「良いよ! ついでに一緒に夜ご飯も食べようか」
「良いんですか?」
「うん、二人分も四人分も作る事には変わりないんだから」
「えっ、飛鳥先生が作るんですか」
「うん、他に誰が作るの?」
「えっと……」
食事は雫か華純さんが作ると思っていたのかな…… まあ、華純さんは作れるとは思うけど、雫はちょっとね…… 努力は認めるけど。
その夜、仕事終わりの晴翔君が診療所へ来ました。
「飛鳥先生、どうかしたんですか?」
へっ、私……
「奏音ちゃんから連絡があって診療所に来てって事でしたけど……」
うーん、話が読めん! 何だか私が晴翔君を呼んだみたいじゃない……
「晴翔君、奏音ちゃんが帰って来たから、細やかながら退院祝いをね! それで晴翔君にも来てもらったの」
という事にしておこう…… まったく奏音ちゃんは何を考えているんだろう……
「あっ、晴翔君……」
「やあ、退院おめでとう」
「うん、ありがとう」
奏音ちゃん、晴翔君に話があるんじゃなかったの? 私はそう言いたかったんですけど……
「ねえ晴翔君、凛ちゃんや湊君は何か私の事言ってなかった」
「さあ、どうかな…… 凛は気づいた時には居なくなっていたし、湊は飛鳥先生に話があるから変わってくれと言って、いつの間にか消えてたからな……」
「そうなんだ……」
二人が話をしている間、私は夜ご飯の仕上げをします。とは言っても今日はカレーです。人が多いときはこれが一番です。それにカレーが嫌いな人はいないと思いますから。
「ねえ奏音ちゃん、葉月さんには退院した事は言ったの?」
「えっ、LINEはしましたけど」
「ふーん、そうなんだ」
葉月さんに連絡が行ってるなら彼女達が来ても可笑しく無いはずなんだけど…… 何もないのは不気味です。
「さあ、準備出来たらからみんなで食べようか」
「はい」
まあ、取り敢えず晴翔君の事も奏音ちゃんの事も一件落着というところでしょうか……
晴翔君の事も奏音ちゃんの事も取り敢えず一件落着です。あとは、飛鳥が清川村を去る日が近づいています。




