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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第五章 性別適合手術
44/55

44 夏の終わりの出来事

お待たせしました第44話を更新しました!


私達がえびす屋さんに来た時、湊君に呼びとめられました。なんだか神妙な面持ちで言葉少なめに俯いてしまいました。どうしたのかな……



飛鳥(あすか)ちゃん、大変なんだよ! (りん)が……」

 (みなと)君はそう言うと俯いたまま黙り込んでしまいました。彼がこんな仕草をするのは珍しいです。一体何があったんでしょうか……

「何があったの?」

「俺が悪いんだよ!」

 湊君はそう一言言って拳を握り締めます。

「……」

「飛鳥先生、凛が何処にも見当たらないんですけど……」

 えっと、今のは晴翔(はると)君かな……

「それって、統合……?」

「よく判らないですけど、凛が居ないんです」

 晴翔君が普通にそう言います。でも、凛ちゃんが統合されたって…… 何故!

「あいつはもう嫌気がさしたんだ! 俺が酷い事を言ってあいつと喧嘩ばかりしてたから……」

 うーん、湊君がここまで落ち込んでしまうとは……

「でも、凛ちゃんも結構酷い事を言ってたと思うけど」

 私はそう言いますけど…… 湊君は何も言わずに晴翔君と入れ替わったみたいです。

「飛鳥先生、これって大丈夫でしょうか……」

 晴翔君も複雑ですよね……

「うーん、大丈夫とは思うけど…… 何か支障が出た時は診療所へ来てね! 来れない時は電話でも良いから」

「あっ、はい……」

 でも、これで凛ちゃんが統合されたのなら、あとは湊君ですけど…… 彼はイマジナリーフレンドですからね…… そして、えびす屋さんの中へ入って行くと……

「飛鳥先生!」

 今度は穂乃花(ほのか)さんがいました。

「先生、凛は本当にいなくなったんでしょうか」

 穂乃花さんは、凛ちゃんの事がお気に入りで、本当の娘のように接していたと思います。

「穂乃花さん、凛ちゃんは晴翔君が作り出した人格だから統合されて良かったと思いますよ」

 私はそう言いましたけど……

「そうかも知れないけど、どうせなら湊が統合されれば良かったのに……」

 まあ、そう言われましても……

「でも、湊君も時間の問題かも知れません」

「……」

 そう言って私は温泉がある方へ入って行きました。

「飛鳥先生、湊君も時間の問題って言ってましたけど、統合されるという事ですか?」

 江下(えした)先生が気になったのか、訊いて来ました。

「うん、湊君があそこまで落ち込んでいたら、もう表に出て来ようとは思わないでしょう。元々イマジナリーフレンドは脳内で一方的に会話をしてるようなイメージですから」

「はあ…… そんなもんですか?」

「例えば、幼い時にお気に入りのお人形さんやぬいぐるみに話しかけた事とかないですか?」

「うーん、それは、たぶんありますけど……」

「そんな感じです」

「はあ……」

 まあ、専門外の江下先生には判らないでしょうけどね!

「まあ、このままいけば、自然と統合されるかもって事よ!」

「そうなると晴翔君は完治ですか?」

「うん…… 前からすれば積極性も大分出て来たから大丈夫だと思うけどね」

 温泉の湯船に浸かり、江下先生とそう話をしましたけど、本当にこれでおしまいなんでしょうか……

 この日は、晴翔君の事もあったので、私達はあまり温泉を楽しむ事が出来ませんでした。その所為か温泉を出た後は何も話す事なく家へ帰りました。


 あの出来事があってから数日後、お盆に突入です。江下先生は今日から川本市(かわもとし)の実家に帰省されます。華純(かすみ)さんは、休診中の診療所に来ています。本当に帰らなくて良いのかな……

『プルプルプル……』

 あっ、電話です。急患でしょうか? 華純さんが対応していますけど……

「飛鳥先生、奏音(かのん)ちゃんです!」

 奏音ちゃん? どうしたのかな……

「もしもし奏音ちゃん、どうしたの?」

『飛鳥先生、凛ちゃんが元の場所に戻るってどう言う事ですか!』

 えっと…… 晴翔君が連絡したのかな……

「うーん、よく解らないけど、居なくなっちゃったんだよね……」

『それって、晴翔君と統合したって事?』

「多分ね…… でも、何故知ってるの?」

『私のスマホに "今までありがとう。私は元の場所に戻ります" ってメールが来ていたんです』

 凛ちゃんは消える前に仲が良かった奏音ちゃんにメールをしていたようです。

「そのメールは晴翔君のスマホから送られているの?」

『えっと、発信先のアドレスはそうです。文章の最後に凛と書いてありますけど』

 うん、やっぱり間違い無いですね…… 凛ちゃんは自ら統合したのかも知れません。

『先生、何かあったんですか?』

「うん、いつもの事なんだけど、二人の喧嘩がエスカレートしたみたいね!」

『そっか…… でも、晴翔君大丈夫かな?』

「大丈夫よ! 晴翔君はあの二人の喧嘩が無くなってホッとしてるようだから」

『それなら良いんだけど』

「ところで、身体の方はどうなの!」

『はい、歩行リハビリをしています。このまま行けば二十日前後には退院出来そうです』

「そうか、順調だね!」

『はい』

 うん、良かった。何とか夏休み中に清川村(きよかわむら)に戻って来れそうですね!

 その日の夜、私と雫と華純さんは、えびす屋さんに来ています。お盆中は温泉三昧ですからね!

「飛鳥先生、今日は洞窟温泉でお願いします」

 女将の麻子(あさこ)さんからそう言われました。今日は他のところは使えないようです。

「先生はサウナはよく入るんでしたっけ?」

「あっ、いえ、サウナはあまり……」

「あっ、それなら良かった! サウナを利用するお客様が結構多くて……」

 そうですか…… 結構利用者は多いんですね。私は入らなくても良いですけどね!

 その後、お風呂上がりにロビーで冷たいものを頂いている時でした。

「飛鳥先生!」

「あれ、晴翔君! どうしたの?」

「えっと、凛が居なくなって、湊があまりにも静か過ぎて、ちょっと不気味なんですけど」

「湊君は、まだ居るんだよね!」

「はい、でも表に出ることは無いです」

「それって良い事なんじゃないの?」

「まあ、そうですけど…… 今までが騒がしすぎたから」

「晴翔君、この間も言ったけど、なにか支障があったらいつでも言ってね! ひょっとしたら湊君も統合出来るかも知れないから」

「はい……」

 晴翔君は今までの生活が気に入っていたのかちょっと淋しそうですね。

「あの、飛鳥先生」

「えっ…… あっ、まだ何かあるの?」

「いえ、(いつき)も凛も統合されたからどうでも良いんですけど…… あの二人は、えっと……」

 うーん、晴翔君は何が言いたいのかな……

「いえ、やっぱり良いです。失礼します」

 そう言うと、行ってしまいました。えっと、何か言いたかったんじゃないのかな……

「あっ、飛鳥先生、温泉はどうでしたか?」

 麻子さんが仕事の合間に話しかけて来ました。

「はい、とても気持ち良かったです」

「そうですか、それは良かった! あっ、そうそう十六日に花火大会をするそうよ。温泉入口の駐車場から綺麗に見えるそうだから診療所からも綺麗に見えるんじゃないかな」

 まあ、駐車場より診療所は上にあるのでそうですよね。

「はい、花火なんて久々なので楽しみです」

 うーん、花火か…… それも良いけど晴翔君の事、気になるな…… 大丈夫かな…… まあ、湊君が何かをするような事はないですけどね! なんたってイマジナリーフレンドですから。樹君や凛ちゃんは判らないですけど…… でも、二人とももう統合されてますからね。


 今日は十六日、本日まで出羽(いずわ)診療所は休診です。それでも、華純さんは来てますけどね!

「ねえ、華純さん!」

「はい」

「温泉街に遊びに行きませんか!」

「診療所は良いんですか?」

「はい、休診ですから」

「でも、急患があったら……」

「大丈夫です! 徳間先生もいらっしゃいますから」

 ちょっと半信半疑の華純さんですけど、こんな時じゃないと楽しめませんからね! 

 温泉街に来て最初に行ったのがプリクラです。

「温泉街にあったんですね!」

「ええ、奏音ちゃんと凛ちゃんがよく来ていたみたいなんです」

 そうなんですか……

「飛鳥先生、撮りましょうよ!」

 雫にそう言われたので、私達三人はまず顔に落書きをしてポーズを決めて撮りました。

「何だか変ですね! 落書きやり過ぎです」

 華純さんがそう言うので、もう一度です。

「飛鳥先生の水玉のワンピーをピンクにして」

「それじゃ華純さんのTシャツの色も変えて……」

「飛鳥先生、私の髪をもう少し伸ばして良いですか!」

「もちろん!」

 雫の髪もかなり伸びましたけど、本人的には、まだ長くしたいのかな。

「先生、撮りますよ!」

「あっ、華純さんちょっと待って! 目をもう少し大きくするから」

「あっ、それじゃ私も」

 今度はプリクラでプチ整形ですね!

「それじゃ撮りまーす」

 その後、三回シャッター音が鳴り、写真の出来上がりですけど……

「これ変だよね!」

 私達は顔のパーツをいじり過ぎて、プチ整形失敗に終わりました。

「飛鳥先生、次は射的をしませんか!」

 華純さんもちょっとは調子が出て来たかな。

「あっ、良いね!」

「飛鳥先生出来るんですか?」

 雫、これでも上手いんだからね!

「勿論!」

「それじゃ私と勝負しましょう!」

 華純さんも少しは出来るみたいです。

「あの、飛鳥先生!」

 背後から私の事を呼ぶ声が…… 振り返るとそこには晴翔君が居ました。

「晴翔君、どうしたの!」

「いや、えっと…… だからよ……」

 えっと、湊君なの……

「ちょっと来て欲しいんだけど」

 そう言って私の手を握り路地裏へ連れて行かれました。

「ちょっと、手が痛いんだけど!」

「あっ、すまね……」

「ねえ、晴翔君は?」

「ちゃんと晴翔の許可はもらっている。ただ、どうしても言いたい事があるから……」

 えっ、言いたい事って…… どういう事……

久々の温泉街で、湊君と出会い、話があると手を握られ路地裏へ連れて行かれましたけど…… 何か変な事をするつもりじゃないよね……

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