42 男の子から女の子へ
お待たせしました第42話を更新しました!
今から奏音ちゃんの手術が始まります。無事に終わると良いんですけどね!
奏音ちゃんの手術が今から行われます。本当は手術前に彼女に会って話をするつもりでしたが……
「飛鳥先生、手術前の打ち合わせと準備をするから手術室へ行くよ」
「はい」
そう猿渡先生から言われたので仕方なく手術室へ行きます。まあ、そこに居れば奏音ちゃんには会えるでしょう。
「あっ、飛鳥先生こっちです」
私が手術室へ入ろうとした時に馬場先生から呼び止められました。えっと、手洗いが先ですか……
「ミーティングだよ!」
猿渡先生から手招きされました。
「それでは、術前ミーティングをします。まずは摘出を犬崎先生お願いします」
「はい、SRSによる精巣摘出と陰茎切除術を行います」
「次に城島先生」
「はい、切除後に大腸法による外陰部形成術を行います」
「これに伴い第一助手に猿渡先生、第二助手に今村先生、よろしくお願いします」
「は、はい、よろしくお願いします……」
その簡単な説明のあとMRIなどの画像を見ながらの最終的なミーティングをして手洗いです。
「飛鳥先生、リラックスしていきましょう」
城島先生からそう声を掛けられました。
「はい、ありがとうございます」
「飛鳥先生、第二助手なんだからもっと肩の力を抜いて!」
猿渡先生からも言われてしまいました。って言うか、元々助手をするつもりも無かったんですけどね……
いよいよ、手術が始まります。奏音ちゃんはすでに麻酔で眠っています。本当は一言声を掛けてあげたかったんですけどね……
「それではSRSによる精巣と陰茎切除術、ならびに大腸法による外陰部形成術を行いますよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「メス」
手術が始まりました。まずは犬崎先生と猿渡先生がメインで手術します。私はほとんど雑用です。
「飛鳥先生、そこクランプして!」
「はい」
「出血してます」
私はすぐに出血箇所を押さえました。
「モノポーラ」
「サテンスキー下さい」
うん、これで出血は止まるはずですけど……
「吸引!」
「血圧、百を切りました!」
「吸引します」
『ジュジュジュ……』
私は出血している血管をサテンスキーで圧迫しました。
「縫合糸5-0下さい」
そして、出血箇所を縫合しましたのでこれで止まるはずです……
「血圧96-58で安定しました」
よし、いける! その後は何事もなく順調に手術は進みます。
「切除完了しました。城島先生お願いします」
ここから形成術です。手術が始まって一時間半くらいです。私は前半はちょっとだけ大変でしたけど、後半は忙しくは無いですね! 城島先生と猿渡先生は大変そうですけど……
そして…… お昼前、手術は無事終了しました。もちろん成功です。これで奏音ちゃんは女の子になる事が出来たんですね!
「まったく、飛鳥先生は役に立たなかったね!」
「えっと…… すみません……」
でも、前半は止血しましたよね! って言うかMTFさんの手術はやった事無いから無理だって言ったのに…… 私は心の底で、そう叫びました。
「飛鳥先生、明日も手術があるからやるかい?」
えっ、明日……
「いえ、明日は診療所へ帰らないと、他の人に任せっきりですから……」
このまま言いなりになっていたら奏音ちゃんの退院まで残させられるかも知れません! でも、ちょっとだけ手術に興味はありますけど……
「そうかい、それなら仕方がないね!」
はあ…… 今回は研修じゃないんですから……
「あの、犬崎先生は?」
「ああ、犬崎と城島は術後ケアに行ってるよ! あんたは行かなくて良いのかい?」
「行ってもまだ、麻酔から覚めて無いと思いますので、食事の後に行きます」
そうは言いましたけど、手術前に行けなかった事を言われそうでちょっと怖いです。でも、今行っても麻酔で眠っているはずですので…… でも、やっぱりちょっとだけ顔を出しときましょう。私が病室の前まで行ったとき犬崎先生と城島先生が出て来ました。
「飛鳥先生、まだ眠ってますよ!」
「はい、でも、ちょっとだけ……」
そう言って病室へ入りました。
「あっ、飛鳥先生! ありがとうございました」
奏音ちゃんのお母さんからお礼を言われました。
「はい、しばらくの間奏音ちゃんは動けませんので」
「はい…… 先生はいつまでこちらに?」
「えっと…… 私は明日、清川村に戻ります」
「あっ、そうなんですね……」
「あの、どうかされましたか?」
「いえ、私も仕事があるので明日帰らないといけないから……」
そうなんですね…… 私もお母さんもいなくなると奏音ちゃんは淋しいよね、周りには知らない大人しかいない訳ですから……
手術が終わって夕方五時を過ぎた頃、私は奏音ちゃんの元へ行きましたけど、病室の中から楽しげな話し声が聞こえます。
「失礼します!」
私は一声掛けて病室へ入ると……
「飛鳥先生!」
そこには白河葉月さんと川村弥生さんがいました。
「どうしてここにいるの?」
「えっ、そりゃあ面会ですよ!」
「面会?」
手術が終わったばかりの患者さんなんですけど……
「手術が終わって、奏音のお母さんも帰るだろうから淋しいかなって!」
「そ、そうなんだ……」
最近の女子高生は凄いです。新幹線に乗ってわざわざ後輩の元まで駆けつけるとは…… いや、この二人だからこそかも知れません。
「ところで先生は、ここで何してるの?」
いや、何してるって奏音ちゃんの……
「奏音ちゃんの手術があるから主治医として同行していたんだけど……」
「それじゃ、退院までいるの?」
「それは流石に無理! 明日のお昼に帰るよ!」
「えっ、飛鳥先生帰っちゃうの……」
奏音ちゃんのちょっと淋しそうな声に後髪を引かれそうですけど、これ以上診療所を放ったらかしには出来ませんので……
「あなた達は、いつまでこっちにいるの?」
まったく、高校生が二人だけで来るなんて……
「私達はバスケの試合が終わるまでいますけど……」
「バスケ? 葉月さんはバスケットボールをしてるの?」
「あっ、私じゃなくて西條君が……」
「高校最後の試合だからね!」
弥生さんに言われて顔が真っ赤な葉月さんです。
「えっと、あっ、あいつがどうしても応援に来て欲しいって言うから……」
「それじゃ、引率の先生もいるのね!」
「もちろんです。本当は父兄同伴ですから!」
弥生さんが胸を張ってそう言います。
「もう、無い胸を張るんじゃないよ弥生!」
「それはあんたも同じでしょう!」
はあ…… この二人は……
「ねえ葉月先輩、試合はいつなの?」
奏音ちゃんも訊いてます。
「明後日だっけ?」
なんだかいい加減だな……
「じゃあ、最低三日間はいるのね!」
「そうね、一回戦負けでもそれくらいは」
「それなら、飛鳥先生は帰っても良いよ!」
えっと…… うーん、なんだか複雑な気分ですけど、泣かれるよりは良いかな。
その日の夜、またもや馬場チームの皆さんとお食事…… いや、私以外の人は飲み会です。前に来た事のある居酒屋さんですね!
「飛鳥先生、少しは飲めるようになったかい?」
猿渡先生、私は体質的に飲めませんから……
「いえ…… 無理です」
「まあ、今村先生はお好きな物を食べて下さい」
やっぱり馬場先生は相変わらずチームをまとめるのに大変そうです。
「それじゃビールが良い人」
「いや、俺はハイボールが良いかな」
「あっ、僕もハイボールで!」
犬崎先生と城島先生は早速ハイボールです。
「じゃあ、僕も芋焼酎をお湯割りで、猿渡先生は日本酒ですよね!」
「やっぱり酒は日本酒だよ!」
そういう事で、犬崎先生と城島先生は軟骨唐揚げをつまみにハイボールです。猿渡先生は揚げ出し豆腐を食べながら日本酒をちびちびやってますね! 馬場先生は唐揚げでしょうか、 でも、ちょっと小さいような…… あれ、でも乾杯はしなくて良いんでしょうか……
「馬場先生、それは唐揚げですか?」
「ああ、これはせせりの唐揚げです」
「せせりですか?」
「鳥の首のところのお肉です。美味しいですよ!」
そう言われたので、私も一口頂きましたけど……
「うっ、これは美味しいですね! 脂がのっていてぷりぷりです」
「今村先生もせせりの虜になったみたいですね!」
あまりにも美味しかったので、もう一皿注文しました。私は烏龍茶とせせりの唐揚げと豚足を食べました。
「飛鳥先生は前からすると少しは胸が大きくなったようだね」
そう言う話をするのは猿渡先生です。
「あっ、はい、お陰様で……」
「GIDでここまで成長するのは珍しいね! なにかやったのかい」
「いえ、別に何もしてませんけど…… でも、母も大きいですので……」
そう言えば、慶子先輩や華純さんにも同じ事を言ったような……
「まあ、確かに遺伝の要素は聞いた事があるけど…… トランスジェンダーにもそういうのがあるのかねえ」
猿渡先生はそう言いますけど、どうなんでしょうね……
「それとも前回コークハイを飲んだ次の日くらいにホルモン治療をしたとか?」
そう言えば、確かに前回コークハイを飲んで記憶が一部飛んだ事がありましたけど、治療はあれから数日後の事でしたので関係ないでしょう。そんな話をしながら楽しい時間は過ぎていきました。
無事、手術が終わりました。しかし、あの二人が面会に来るとは…… いい先輩なのか、それとも……




