39 姉の晴れの日
お待たせしました第39話を更新しました!
奏音ちゃんが高校に入学しましたけど…… 大丈夫だったでしょうか! 春休み中に葉月さん達が何かやってましたからね……
今日は奏音ちゃんの入学式です。何も問題が無ければ良いのですが…… 春休み中に葉月さん達が妙な事をしでかしていますので、ちょっと心配なんですけどね……
「こんにちは!」
あっ、この声は奏音ちゃんですね!
「先生、奏音ちゃんが治療に来ました」
「はい、診察室へ入れて下さい」
「奏音ちゃんどうぞ!」
華純さんからそう呼ばれて入って来た彼女は、制服姿です。か、可愛い……
「先生、こんにちは!」
「こ、こんにちは……」
診察室に現れた彼女は紺色のブレザーに丈の短いチェック柄のスカートを履いています。ブレザーの下にはお洒落な白いブラウスと胸元には青くて可愛いリボンタイです。凄く可愛くて似合ってます。羨ましい…… 私も着てみたい!
「飛鳥先生、どうしたんですか!」
私の前に座っている奏音ちゃんは不思議そうに小首を傾げています。ハッ! 私、今変な風になってましたよね…… きっと奏音ちゃんに変に思われているかも……
『パン!』
その時、大きく手を叩く音がして、私はハッとしました。
「飛鳥先生、治療をお願いします」
雫が手を叩いて私を現実の世界へ引き戻してくれました。危ない危ない……
「あっ、はい! 雫、GnRHアゴニストを準備して!」
「はい、もう準備出来てます」
ハハ、もう準備バッチリですね!
「それじゃ奏音ちゃん、上着を脱いでベッドに横になってね」
彼女は私の言う通りにブレザーを脱ぎ、左腕の袖を捲り上げベッドに横になりました。その後、私は奏音ちゃんに注射をしたあと学校の事を訊きました。
「学校はどうだった」
「まあ、普通に入学式があった後、ホームルームで私の事が話されましたけど、みんな普通に受け入れてくれました」
それを聞いてちょっとは安心しましたけど……
「ねえ、普通って?」
「まあ、最初はみんなちょっと戸惑ってましたけど、私がちょっと微笑んでよろしくお願いしますって言ったら、トイレの件も更衣室の件も女子用で良いって事になりました」
「えっ、本当に!」
奏音ちゃんは凄いです。彼女がちょっと微笑んだだけでそうなるなんて、女優にでもなれるんじゃないかな……
「はい、どっちにしても九月からは女子ですから、それで良いよって……」
はあ…… 良かったです。とにかく私は彼女が虐めにあったり、孤立してしまったりするんじゃないかと心配でしたから…… でも、問題なかったんですね!
「そうか、良かったね! それと、制服なんだけど…… 葉月さんと一緒…… だよね」
「あっ、葉月さんや弥生さんは、この時期は紺色のベストを着てますから」
「あっ、そういう事か、でもスカート丈は短いのね」
「えっ、でも膝が見えるくらいですよ! まあ、先輩の中にはウエストの位置で折り返して、もっと短くしてる人もいるみたいですけど」
はあ…… 同じ制服でも着る人によって可愛く見えたりそうじゃなかったりするのね、葉月さんの制服姿は胸がキュンとはしませんでしたから……
「でも、良いね! 可愛くて」
「はい、私もお気に入りなんです」
彼女はそう言うとベッドから起き上がり上着を着ました。
「先生ありがとうございました」
そう言った彼女は診察室から出て行きました。うん、後は手術ですね!
「飛鳥先生!」
「えっ、雫、どうしたの……」
「先生もあの制服着てみたいって思ったんでしょう」
うっ、雫…… それは訊かないでよ……
「そんな事は……」
「そうなんですか、私は着てみたいって思いましたけどね!」
まあ、雫は私より少しは若いから…… いや、でもちょっと無理があるでしょう。私だって……
「あっ、そうだ! 先生、手紙が来てましたけど……」
「手紙?」
私は雫から手紙を受け取りましたけど…… なんだか切手のデザインが華やかですね! これって……
「これ、結婚式の招待状じゃない!」
「えっ、誰のですか?」
えっと、これは…… 姉からの招待状でした。やっと、羽島さんと一緒になる決心がついたようです。
「先生、ここは私が残りますので安心して行って来てください」
雫はそう言ってくれましたけど……
「そう言う訳にはいかないでしょう! あなたは私の妻なのよ、招待状には夫婦揃ってって書いてあるのに」
「どうかしたんですか?」
丁度、江下先生が休憩から戻って来ました。
「姉の結婚式の招待状が来たのよ!」
「あっ、それじゃ二人とも行っちゃうんですよね!」
「うん、まあ六月中旬の週末の話だけどね!」
「だったら、徳間先生も栗山もいるから大丈夫でしょう!」
まあ、江下先生もそう言ってくれてるし、一応徳間先生に話をして許可をもらいましょう。しかし、六月の二十日ですか…… ジューンブライドとは言いますけど日本は梅雨の時期ですからね、雨が降らなきゃ良いですけど……
その日の夕方、私は徳間先生にこの事を電話で相談しました。
『あっ、そういう事なら土日で行って来てください』
「あっ、はい、ありがとうございます」
なんだか簡単に許可が出ましたけど、これで安心して姉の結婚式に参加出来ます。姉にも連絡しておいた方が良いですよね!
そして、夏本番前の梅雨の時期です。今日も朝からシトシトと雨が降っていますけど、週末の姉の結婚式は大丈夫でしょうか…… 明日から城南市へ戻るんですけどね……
「飛鳥先生、大丈夫でしょうか?」
雫も心配してくれてるようです。
「私、雨の高速運転は無理ですよ!」
ハハ…… そっちの心配な訳ね。
「大丈夫よ! 私が運転するから…… それより式場で着るドレスは決めたの!」
「はい、ララシャンプルミエの関さんにきちんとお願いしています」
「えっ、関さん! 先輩の電話番号訊いてたの?」
「えっと、式場に電話した時、関さんに対応してもらいましたけど……」
ふーん、偶々なのかな…… まあ、予約出来てるなら良いですけどね!
「あっ、でも飛鳥先生と被ってないですよね!」
「多分大丈夫なんじゃない! 雫はドレスの色はどうしたの?」
「私はベージュのドレスですよ」
「それじゃ大丈夫だよ、私はライトグリーンのビスチェ風ドレスだから」
「えっ、ビスチェっておもいっきり肩を出したドレスですよね……」
「うん、でもそこはレースで包まれてるから」
まあ、雫にはそう言いましたけど、私もスマホでモデルさんが着ているドレスを見てこれが良さそうだと思ったんですけどね……
「飛鳥先生、明日からの準備はいいんですか?」
江下先生が心配してくれてますけど……
「大丈夫だよ、一泊二日だから」
「そうですか……」
江下先生は当直をしてもらいますので、そっちの方が心配なんじゃないかな……
「飛鳥先生、お土産、お願いしますね!」
いや、そこまで心配なさそうですね……
「はい、はい」
「飛鳥先生、なんだか楽しみですね!」
「うん、そうね」
まあ、私はちょくちょく川本市へ行きますけど、雫は久々の下界ですからね! 楽しみですよね……
翌日、私達は朝八時半に清川村を出ました。これだと城南市にはお昼前には着くでしょう。
「雫、ソフトクリーム食べる?」
私がそう言うと……
「先生、雨が降ってますけど……」
いや、ソフトクリームを食べるのに天気は関係ないでしょう。
「それじゃ、雫は食べないのね!」
「いや、食べないなんて言ってないですよ!」
などと、ちょっぴり謎めいた事を言ってますけど、結局は食べるんですよね…… ここ鈴村SAのソフトクリームは、城南市と清川村を行き来するたびに寄ってソフトクリームを食べています。本当に濃厚で美味しいんですよね!
「先生、城南市なんて久々ですよね」
「そうね、雫は久々の帰省だもんね!」
「まあ、実家に帰る訳じゃ無いですけどね」
「うん、でも偶には顔を出さないといけないんだけどね……」
「でも、仕事で清川村にいるんですから……」
まあ、そうなんですけど、正式に城南市に戻ったら一度今津の方へも挨拶に行きましょう。
高速道路を走る事二時間半、やっと城南東インターへ戻って来ました。ここから私の実家までは車で五分です。
「あっ、飛鳥先生、美彩先生のクリニックですよね!」
「うん、あとから行ってみようか」
「はい」
そのクリニックの横を通り私の実家に到着しました。
「ただいま!」
「おかえり」
そう声を掛けながら母が出迎えてくれました。
「雫さんもいらっしゃい! さあどうぞ」
そういえば、雫がうちに来るのは四年ぶり結婚した頃以来ですよね…… なんたって清川村へ赴任する前の話ですからね。
「あれ、お姉ちゃんは?」
「浩二さんと逢ってるんじゃない」
「ふーん、明日挙式でしょう」
「ええ、だから打ち合わせとかしてるんじゃないの」
「そっか……」
「雫さん、お昼食べるでしょう」
「はい」
「飛鳥、今日モールタウンで北海道フェアをしていて海鮮弁当がお買得だったから買って来たの! 食べてね!」
「うん、ありがとう……」
意外と母は私達に気を遣っているみたいです。
「先生、これ凄いですよ!」
雫はもう弁当のふたを開けています。
「ほら、蟹に帆立、いくらに雲丹がいっぱいですよ」
「本当だね! お母さんありがとう」
「良いのよ、久しぶりなんだから」
もう…… 無理してないと良いんだけど…… その時、玄関の戸が開く音がしました。
「あっ、飛鳥、久しぶり!」
姉でした。
「お姉ちゃん、おめでとう!」
「うん、ありがとう……」
そう言って姉は、自分の部屋へ行ってしまいました。何だか淋しそうな表情でしたけど、結婚前日ですから、何か思うところがあるんでしょうね……
姉の結婚式前日…… 楽しそうな、淋しそうな複雑な様子です。明日、無事結婚式が終わると良いんですけどね……




