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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第四章 二人の受験
37/55

37 受験が終わって……

お待たせしました第37話を更新したました!


いよいよ県立高校の試験です。合否の問題もありますけど、高校側に受け入れてもらえるのかも心配なところです。面接では色々と訊かれるんでしょうね……

 今日は奏音(かのん)ちゃんの中学校の卒業式です。そして、明日が県立高校の合格発表になりますけど…… 県立高校の試験二日目の面接では色々と訊かれたらしいんですけど…… その奏音ちゃんが卒業式を終えて診療所に来ています。

「それで、どんな事を訊かれたの?」

「まずは体育の時の更衣室はどうしたのかとか、トイレはどうしたのか、などです」

 まあ、中学校で訊かれた事と同じですね!

「それで、なんて答えたの?」

「だから…… トイレについては他の女子生徒から一緒でもという事だったけど多目的トイレを使用したことを言いました」

「うん、更衣室は保健室だったよね」

「はい、でも体育の授業は女子と一緒に受けた事を話しました」

 以前、私が中学校にお願いに行った時に決めた事ですよね……

「それで高校からは何か言われたの?」

「一応、中学の時と同じようには出来るけど、九月からは女子としての生活になるんですよね…… って」

 まあ、途中から性別が変わるんだからそうなりますよね……

「それで、結局は合格したら同じクラスメートには事情を説明するという事で話は終わりました」

「うん、それじゃ取り敢えずは問題は無い訳ね!」

 私はそう言いましたけど……

「でも、みんなはどう思うかな…… 私の事を受け入れてくれるかな……」

「まあそれは、成るようにしかならないと思うよ。同じ中学の友達はいないの?」

「いますけど…… 同じクラスになるかどうか……」

 まあ、今考えてもどうにもならないかな……

「でも、やっぱり不安です」

「まあ、それは解るけど…… それじゃ、手術やめる?」

 私がそう訊くと……

「それは嫌です! 絶対に手術します」

「うん、それじゃみんなにもちゃんと話さないとね」

「飛鳥先生こんにちは!」

「うわっ!」

 いきなり診察室の扉が開きました。私も奏音ちゃんもびっくりです。

「えっ、えっと……」

葉月(はづき)さん、ちゃんと受付をしてくださいよ!」

 慌てて華純(かすみ)さんも診察室へ来ました。

「えっ、今日は診察じゃなくて先生にお願いに来たんですけど……」

 お願い……? 葉月さんは何を企んでいるんでしょうか……

「どっちにしても、まずは受付の私を通してください」

「はい、飛鳥(あすか)先生にお願いに来ました」

「…… はい、どうぞ……」

 華純さんはそう言うと機嫌悪そうにツンとして受付に戻って行きました。

「それで葉月さん、お願いって?」

「診療所の外でお花見をしたいんですけど……」

「お花見ですか……」

 確かに診療所の外には二本の桜の木があり、今はまだ開花はしていないと思いますけど……

「それは良いけど、葉月さん他の患者さんの迷惑にならないようにね」

「はい、三月最後の日曜日を予定していますので!」

 それなら問題なさそうですけど、その頃桜の花は咲いているんでしょうか……

「ねえ葉月さん、明日は何か用事はある?」

 私がそう言うと……

「いえ、別に何もないですけど…… 何かあるんですか」

「うん、それじゃ奏音ちゃんに付き合ってあげてくれない? 明日県立高校の合格発表なの」

「あっ、はい良いですよ! ところで高校はどこを受けたの?」

 えっと、どこの高校か知らなかったの……

「あっ、剣岳南(つるぎだけみなみ)高校ですけど……」

「えっ、本当に!」

「はい」

「それって、私が通っている高校じゃない!」

「えっ、そうなんですか!」

「合格してれば私の後輩なんだ!」

「はい、よろしくお願いします」

「うん、合格してればね!」

 いや、葉月さん。それは奏音ちゃんが可哀想だよ……

「でも、合格してれば奏音ちゃんも一緒にお花見しようね!」

「はい……」

 奏音ちゃんはなんだか複雑な気持ちみたいですね。


 翌朝、奏音ちゃんは合格発表のため南川上(みなみかわかみ)町へ行きました。この辺では唯一のコンビニで葉月さんと待ち合わせのようです。私はというと、いつも通り診療所勤務です。

「奏音ちゃん合格してれば良いですけどね……」

 江下(えした)先生がそう言いますけど……

「まあ、大丈夫ですよ! あんなに一生懸命勉強してましたからね」

 (しずく)は、合格は確定したかのように言いますけど……

「まあ、合格してれば電話かメールで連絡があるでしょう」

 私はそう言いましたけど…… ちょっとドキドキしながらのお仕事になりそうです。

 十一時を過ぎましたけど奏音ちゃんから連絡がありませんね…… ひょっとして…… いや、大丈夫でしょう。

「飛鳥先生、やっぱり気になるんでしょう」

 江下先生にそう言われ、ちょっとイラッとしてしまいました。

「江下先生、手が止まってます。集中してください」

 あっ、言ってしまいました。だって図星だったんだもん! でもそこは、悟られたくなかったので…… 江下先生ごめんなさい!

 そして、午前の診療が終わった頃でした。

「奏音ちゃん!」

 奏音ちゃんと葉月さんが診療所へ戻って来ました。

「あなた達、お昼は?」

「お弁当を買って来ました」

「それじゃ、一緒食べましょうか!」

 何だか普通の会話しか出来ません! だって、合格発表を見に行って、何も言わないと言うのは…… いや、ただ単に焦らしているのか、もしくは…… いや、そんな筈は……

 すると奏音ちゃんは私の方を向いて……

「飛鳥先生、私合格しましたよ!」

 へっ!

「剣岳南高校合格しました!」

「あっ、そう…… おめでとう! 良かったね」

 あまりにも突然すぎて上手くリアクション出来ませんでした。でも、そんな報告ってある……

「良かったですね、奏音ちゃん! おめでとう」

 華純さんはそう言っています。雫も江下先生も、おめでとうと自分自身が合格したように喜んでいます。何だか私だけサラッと祝福したような感じなんですけど…… しかし、これからが大変です。医療センターで彼女の検査や認定の申請などをしなければいけません。ちょっと大変ですけど…… まあ、がんばりましょう。


 三月最後の日曜日、葉月さんはこうなる事を予測していたのか、診療所の桜は満開になりました。

「先生、おはようございます」

 えっと…… あっ!

「おはようございます西條(さいじょう)君!」

「あっ、どうも……」

「今日は何人来るの?」

「えっと、俺と葉月と弥生(やよい)(さとし)と、後輩がひとり来るって言ってたかな」

「そう、結構来るんだね……」

 えっと、判らないのが聡君と後輩というところです。

「先生も、看護師さんも一緒にどうですか?」

「えっ、良いの?」

「はい、葉月も最初からそのつもりだったようですよ」

「ありがとう! それじゃあとからお邪魔するね!」

「はい!」

 でも、何だか色々と持って来てるみたいだけど…… バーベキューでもするのかな? って言うか、道具はどうやって持って来たのかな、この人は高校生だよね、高校生は車の運転は出来ないはずですよね……

 そういう事で私はおにぎりを作って雫と華純さんも一緒に花見に参加しました。

「あっ、飛鳥先生! こっちへどうぞ」

 葉月さんが声を掛けてくれました。もうお肉が良い具合に焼けて美味しそうです。えっと、葉月さんと川村さんと西條君、それにあの見慣れない男の子が聡君かな…… それと後輩が一人というのは……

「ほら、奏音ちゃんも沢山食べてよ!」

 ああ、奏音ちゃんが後輩なんですね!

「ねえ奏音ちゃん、飛鳥先生に診てもらってるって事だけど奏音ちゃんはどこが悪いの?」

「えっと、私はGIDです」

 彼女はサラッと言いました。

「えっ、それって女の子だけど男の子になりたいってこと!」

 いや葉月さん、今の彼女の格好を見れば…… 薄手の白いニットにちょっと短めのスカートですから……

「いえ、その逆です」

「えーっ! それって奏音ちゃんは男の子ってこと!」

「はい、見た目は女の子ですけど戸籍上は男です」

 えっと、それは私がよく言う台詞ですよね……

「飛鳥先生がたまに言うのを見て私も一度言ってみたかったんですよね!」

 うーん、それって良い方に思ってて良いんだよね……

「それって学校は大丈夫なの!」

「はい、一応は! ただ、同じクラスの人には事情を説明する事になってます。九月からは正式に女の子になりますので!」

「えええっ! 秋には、その…… 戸籍も女の子になるってこと? 飛鳥先生、そんな事出来るんですか!」

 まあ、普通の人はありえないけど……

「私達みたいに身体の性と心の性が一致しない場合は手術をして戸籍を変える事も可能なの」

「そうか、それじゃ、俺達も協力するから困った時は言ってくれよ!」

 西條君はやっぱり格好良いですね!

「うん、准一(じゅんいち)だけじゃないよ! 私も協力するからね」

「もちろん、私もね!」

 葉月さんと川村(かわむら)さんもそう言ってくれました。これは、学校でも心強いですね!

 こうして、奏音ちゃんの高校受験も終わり、四月からは高校生となり、本格的な治療が始まります。

県立高校に合格した奏音ちゃん、心強い先輩達とも出会い四月からは晴れて女子高生ですね!

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