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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第四章 二人の受験
31/55

31 女子高生の苦悩

お待たせしました第31話を更新しました!


自分自身が太っていると思い込んでいる白河さんですが診察の途中で診療所を出て行ってしまいました。しかも保険証を置いたままです。飛鳥は心配で保険証を届けに行きますけど……

 健康保険証を忘れて帰った白河(しらかわ)さんに保険証を届けに行こうと思いますけど、住所が南川上町(みなみかわかみまち)なんですよね…… わざわざこんな遠くの田舎の診療所に来る必要があったのでしょうか。

飛鳥(あすか)先生、晴翔(はると)君が来ましたけど……」

 華純(かすみ)さんがカルテを持って私のところへ来ました。

「えっと、江下(えした)先生……」

「あっ、はい……」

 ちょっと無理かな、今の返事じゃ……

「あっ、いや…… し、診察室へお願いします」

 江下先生、やる気はあるみたいですけど……

「晴翔君どうぞ!」

「飛鳥先生、こんにちは!」

「こんにちは」

「あれ、何処かへお出掛けするんですか」

「うん、ちょっとね! あっ、でも江下先生が診てくれるから」

「あ、飛鳥先生!」

 何だか今にも泣きそうな感じの江下さんです。やっぱりいきなり精神的診察は無理かな……

「もう、仕方ないな…… 江下さん、しっかりしなさい! 私の診察をちゃんと見て学んでね」

「あっ、はい……」

 うん、少しは安心出来たかな…… それでは診察を始めましょう。

「晴翔君、役場勤務の方はどんな感じ?」

 私が今、一番気になるところです。

「はい、楽しく働いていますよ」

 晴翔君は今まで私に見せた事もないくらい笑顔です。最初に逢った頃は、こんな笑顔をここでは見せてくれなかったけどね……

「嫌な事とか、辛い事とかは無い?」

「はい、楽しく働いています」

 うん、そうか…… 大丈夫そうかな。

「晴翔君、陰に入りそうな感じとかは無い?」

「はい、大丈夫です」

(りん)ちゃんや(みなと)君とはどんな感じ?」

「楽しくやってますよ! 職務中でも場合によっては凛も湊も表に出てくれます」

 それって大丈夫なのかな…… ひょっとして役場の職員さんは晴翔君の事を知ってるのかな…… でも、楽しくやってるみたいなので良いのかな。

「晴翔君、それじゃお薬も毎朝飲むんじゃ無くて、気分が優れない時だけ飲むようにしようか!」

「えっ、でも大丈夫なんですか?」

「うん、大丈夫だと思うよ、それにお薬も飲まなくて良いならそっちの方が良いから」

「でも、それだとあまり診療所へ来る事も無くなりますよね……」

「それは良い事なんじゃないの? でも、遊びに来るのは良いよ! 暇な時限定だけど……」

「えっ、診療所が忙しい事ってあるんですか?」

「ちょっと、失礼ね! 忙しい事もあるんだよ」

「あの、飛鳥先生…… そろそろ」

 あっ、そうでした…… 白河さんのところへ行かないと。華純さんに言われて思い出しました。

「それじゃ華純さん、レクサプロを十回分出しといて! それじゃ行って来ます」

 そして私は、久々にとっぽちゃんに乗って南川上町へ向かいます。あっ、とっぽちゃんとは私の愛車で赤い軽自動車の事です。それにしても南川上町大字橋津(はしづ)ってどの辺でしょう? 中学校近くのコンビニで訊けば判るかな…… そういう事で取り敢えずコンビニを目指しましょう。

 コンビニに着いたのは夕方の五時前です。

「あれ、飛鳥先生! どうしたんですか?」

 私が振り返ったそこには、奏音(かのん)ちゃんと音楽教師の今泉美羽(いまいずみみわ)先生がいました。

「あっ、今泉先生ってこの辺詳しいですか?」

 南剣中(みなみつるぎちゅう)の先生だからこの辺は詳しいよね……

「ええ、大体は判りますけど」

「あの、大字橋津ってどの辺になりますか?」

 私はそう訊いてみました。

「大字橋津ってこの辺一帯がそうですけど……」

「この辺ですか……」

「橋津って結構広いんですよ、番地とか解りますか?」

 私は保険証を見ました。

「えっと、3469-18ですけど……」

「あっ、三千番台ならあの辺の地区だと思いますけど」

 今泉先生はコンビニの東側の先を指さして言います。

「あの、赤い屋根が見える住宅地辺りですか?」

「はい、そうですけど、差し支えが無ければ名前とかも教えてもらえませんか」

 あっ、そうですね、彼女も地元の中学校だったはずですよね!

「えっと、白河葉月(しらかわはずき)さんですけど」

「えっ! 葉月ちゃん?」

「あっ、はい」

 やっぱり知っているのかな……

「飛鳥先生、ご案内しますよ」

「あの、でも、ご迷惑じゃ……」

「ううん、全然大丈夫ですよ! 先生、車ですよね」

「はい……」

 そう返事すると同時に車のロックを解除しました。

「先生、早く乗って!」

 今泉先生は助手席に奏音ちゃんは後部座席に既に乗り込んでいます。はや!…… この車は私のですよね…… しかしながら、今泉先生にナビゲートしてもらう訳なので、私もすぐに運転席に乗りました。その後、今泉先生が丁寧にナビゲートしてくれたお陰で早く目的地に着く事が出来ました。

「飛鳥先生、私達は車の中で待ってますので」

「えっと、ちょっと長くなるかも……」

 私はそう言いますけど……

「でも、訳ありでしょう! 私達は車の中で待ってます」

 やっぱり今泉先生って鋭いですよね…… そういう事で私は二人を車に残して白河さん宅の玄関へ行きインターフォンを鳴らしました。ここで逃げたらピンポンダッシュになりますね……

『はーい、どちら様?』

 私が変な事を考えていたら、女性の声で返事がありましたけど……

「あの、出羽(いずわ)診療所の今村(いまむら)と申します」

『はあ、ちょっと待って下さい』

 しばらくして、女性が出て来ました。

「あっ、こんにちは出羽診療所医師の今村飛鳥と申します。白河葉月さんのお宅でよろしかったでしょうか」

「はい…… あの、ご用件は?」

「えっと、健康保険証を忘れてお帰りになったのでお持ちしました」

 私がそう言うと……

「あの、娘は何故診療所に?」

「はい、葉月さんはとても体重を気にしていますけど…… 痩せてますよね」

 あっ、また質問を質問で返してしまいました。いつもの悪い癖です。

「はあ、あっ、中へどうぞ」

 そう言われ私はリビングへ通されました。

「あの、葉月は病気なんでしょうか?」

「えっと…… 私の診たところでは神経性やせ症だと思います」

「それって……」

「食事はきちんと食べていますか?」

「はい、量は少ないですけど……」

「そうですか…… 右手の指は赤くなって傷がありますので、食べた物をもどしていると思われます」

「えっ、そんな…… どうしたら」

「専門医に診せた方が良いと思います」

 そう話している時でした。

「ただいま!」

「葉月、あなた清川(きよかわ)村へ何しに行ったの?」

 葉月さんがリビングへ来ました。

「ちょっと、なんであなたがここにいるの!」

 はあ、やっぱりそうなりますか……

「なんて事を言うの! あなたが保険証を忘れたから届けてくださったのよ!」

「もう、ほっといてよ! 私は痩せてなんかいないから」

「葉月さん、あなたは痩せすぎています。これ以上痩せると可愛く無いし、綺麗でも無い。気持ち悪いだけだよ! 死にますよ! それに、あなた食べた物をもどしてますよね」

 私はそう言ってしまいました。すると彼女は傷ついた右手を隠しながらムッとした表情で自分の部屋へ行ってしまいました。

「葉月! 先生……」

「あの、お母さん、葉月さんと話をしてあげてください。神経性なものだと思いますので学校で何かあったと思うんですけど……」

「虐めとかでしょうか?」

「いえ、体型のことを言われたのかも知れません。でも、彼女は標準体重の80%をきっています。危険な状況なんですよね」

「先生、お薬とかはないんですか」

「治療は本人が望まないと難しいです。一番良いのは少しずつでも食事をして、もどさないようにしないと……」

 葉月さんのお母さんは、ちょっと困惑気味ですね……

「…… 解りました。話してみます」

「はい、お願いします。私がこれ以上ここにいると葉月さんを刺激することになると思いますのでこれで失礼します」

 そう言って白河さん宅をあとにしました。私が車へ戻ると……

「飛鳥先生、葉月さん凄く痩せてたけど……」

 今泉先生も見掛けたのかな、話とかしてないですよね……

「逢ったんですか?」

「ううん、あまりに変わっていたから声は掛けなかったけど……」

 その後、私は今泉先生にも事情を話しました。

「何があったんでしょうね……」

「さあ、思春期は難しいですから……」

 私はその後、中学校まで今泉先生と奏音ちゃんを送りました。

「奏音ちゃん、村に帰るなら送るけど」

「あっ、はい! 荷物を取って来ます」

 彼女は荷物を取りに学校へ行きました。

「今泉先生、奏音ちゃんの様子はどうですか?」

「見ての通り元気ですよ! 音楽室でピアノを弾く時もギャラリーを引き連れて来ますから……」

 まあ、元気なら良いんですけどね! その後、私は奏音ちゃんと二人で清川村へ戻りました。

「奏音ちゃん、まだ先の話だけど受験が終わったら川本(かわもと)医療センターへGIDの認定をもらうために検査に行くからね」

「はい! いよいよですね」

 今の奏音ちゃんは目の前が開けて希望に満ち溢れてるようです。でも……

「飛鳥先生、ひとつ訊いても良いですか?」

「なに?」

「樹君はどうなっちゃたんですか?」

 奏音ちゃんは試験勉強を見てもらってたからね……

「樹君は晴翔君と一緒のところに戻ったんだよ」

「戻った?」

「そう、元々は晴翔君の人格の一部なの、それが元に戻っただけ……」

「それじゃ、凛ちゃんや湊君もそうなるの?」

「まだ、判らないけど…… 晴翔君にとってどっちが良いのかな……」

 樹君が統合された時も喜ぶ事は出来なかったからね…… その日、奏音ちゃんの自宅に着いたのは夜の八時を回ったくらいでした。奏音ちゃんを送り届けて、私も家へ帰りますけど、白河さんの事はちょっと気になります。お母さんが上手く話をしてくれてれば良いんですけどね……

飛鳥は白河さんに保険証を届けましたが、ほっといて! と怒られてしまいました。彼女は大丈夫なんでしょうか……

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