3 久々の温泉で……
お待たせしました第3話を更新しました!
飛鳥と雫は初日の夕ご飯も終え、温泉の時間までのんびりしてるみたいです。
夕食が終わりテレビでも見ながらまったりしています。流石にこの時間に診療所へ来る人はいないですよね! 華純さんと雫はすっかり夢見心地です。
『ガタッ!』
えっ、何か音がしましたけど…… この時間、もう外は真っ暗です。だって街灯だってまばらですから、ということは…… まさか、幽霊とかじゃないですよね。私はこういう類のものは苦手なんですよね…… まあ流石にまだ二十二時を過ぎたくらいですけど…… でも、慶子先輩も何か気になっています。本当に幽霊とかじゃないよね…… 先輩が扉を開いて確認してますけど、何も無かったようです。
「先輩、幽霊とか出るんですか?」
私がそう尋ねると……
「飛鳥、冗談が下手だね」
へっ、なにが……
「だって今、外を確認しに行きましたよね」
「うん、急患かなって、それに幽霊ってなに!」
「あっ、だからこの世の物とは思えない動きや気持ち悪いような……」
「いや、説明を求めた訳じゃ無いけど……」
まあ、幽霊とかいる訳無いですよね! 私はこういうのは本当に駄目ですから……
「それよりも、そろそろ行く?」
「えっ、何処にですか?」
「まったく、忘れたの? 温泉」
あっ、そうでした。
「あっ、そうですね行きましょうか!」
そう返事をして私は雫に声を掛けます。
「雫、温泉行くよ!」
そう声を掛けましたけど……
「えっ、はあーっ、なんですか……」
そう言いながら眠そうに目を擦ります。
「温泉に行くよ」
「あっ、はい、ううん……」
まだちょっと寝ぼけているかな……
「華純、温泉に行くけどどうする?」
先輩が華純さんに声を掛けて起こしています。
「華純さん眠そうだからそのままでも」
「駄目よ、温泉に行くか帰るかの二択なんだから」
あっ、彼女はここには泊まれないんですね。
「うーん、私も行きます……」
華純さん、大丈夫かな? お酒は抜けてるのかな、流石に駐在さんはいないと思うけど…… そういう事で、私の車と華純さんの車の二台で行きます。帰りは華純さんは真っ直ぐ帰宅です。
私達は温泉街の駐車場に車を止めてえびす屋さんに向かいます。
「あっ、慶子先生、飛鳥先生、お待ちしてました」
丁度、女将さんがいらっしゃいました。
「今日は今のところ貸切状態だからごゆっくりどうぞ」
「はい、有難うございます」
他に予定のお客さんはいないのかな? でも私は他のお客さんがいると困りますけど……
早速、女湯の大浴場へ行きます。今日の洞窟温泉はお休みのようです。
「飛鳥、少し成長した?」
「えっ、私は変わらず171センチですけど……」
「そうじゃなくて胸よ」
あっ、そっちですか……
「そう言えば、最近ちょっとブラがキツいんですよね」
「やっぱりね、ブラが小さいから谷間がクレバスになってるじゃない! 新しいのを買ったら」
うーん、でもこの辺にランジェリーショプとか無いですよね…… 移動販売車のバスにありそうも無いし、あってもそんなとこでは買いたく無いです。
「先輩、ランジェリーショプってこの辺にありますか?」
「うーん、川本市まで行かないと無いかな!」
「やっぱり、そうですよね……」
「今度の日曜日に行って来たら」
そうですよね…… このままはあまり良くないですよね。そんな話をしながら私は湯船に浸かります。はあー、気持ち良いですね!
「飛鳥先生って本当に男性なんですか?」
私の身体を見ながら華純さんが訊きます。でも、恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないでほしいんだけど……
「まあ、戸籍上はそうです」
「でも、生物学的には女性ですよね」
まあ、下に付いてなければそうですね、と言ってもかなり萎縮してますけどね……
「まあ、そうだね」
「胸だってCカップくらいあるみたいですけど」
うん、確かに最近ブラが窮屈なんだよね、先輩にも話したけど……
「華純さんは下着とか何処で買ってるの?」
「えっ、えっと最近はネットが多いですね」
「ネットか……」
「サイズとか判らないんですか」
「うーん、B65だったんだけどちょっと窮屈なんだよね」
「それならたぶんCだと思いますよ」
「うーん、でも、試着もしたいし……」
「だったら私が前に行っていたショップに行ってみませんか」
「それって川本市なんだよね」
「まあ、そうですけど…… 剣岳インターから川本インターまで高速を使えば一時間十五分くらいで行けますよ! 私も一緒に行きますから」
「うん、それじゃそうしようかな」
「えっ、飛鳥先生何処に行くんですか?」
やっぱり雫が寄って来ました。
「うん、今度の日曜日に川本市まで」
「あっ、私も行きたいです」
また、始まりましたよ! 雫の私も行きたいが……
「雫は駄目だよ」
慶子先輩からそう言われましたけど……
「えーっ、どうしてですか?」
「だって今度の日曜日は私と雫が日直だから」
「えーっ、そんな……」
そう雫が言っていると……
「雫、私と日直をやりたくないって言ってるわけ……」
慶子先輩の目が怖いですよ…… 雫は蛇に睨まれた蛙状態です。私は知らない振りして温泉を楽しみましょう。
「はあーっ、気持ち良い!」
やっぱり、温泉は良いですね! 嫌なこと全部忘れてリセット出来ます。
「飛鳥、サウナもあるけど一緒にどう?」
私は先輩に誘われましたけど、サウナですか…… 私はサウナ初体験です。
「入ってみようかな」
私は先輩に連れられサウナ室の中へ…… うっ、熱い!
「こんなに熱いんですか!」
「そうだね、でももう少し」
先輩は積まれている石に柄杓で水を掛けます。
「ジュウー」
音を立てて水蒸気が舞います。
「先輩、熱いですよ」
私はそう言ってちょっと離れた二段高い場所へ避難しますけど……
「あっ、熱い!」
「飛鳥、下の段にいないと熱いよ! 何故かは解るよね」
そうですね、暖かい空気は上に行きますからね…… 私は下の段で座って、ジッと我慢します。汗がブワッと吹き出し私の胸元を伝ってタオルに吸いこまれてます。
「うわっ、もう限界です」
「飛鳥何言ってるの! まだ五分くらいしか経ってないよ」
そう言って私の手を引っ張る先輩です。仕方ないので、また下の段に座りますけど、やっぱり熱いです。
そして、我慢する事十五分……
「よし、飛鳥出るよ!」
私はサウナ室を出るなりシャワーで水を浴びようとした時でした。
「飛鳥、こっちだよ」
そう言われたので私は先輩と一緒にもう一つの浴槽へ……
「うわっ、冷たい!」
私はすぐに浴槽から飛び出しましたけど……
「飛鳥、これが良いんじゃない」
確かに、慣れてしまえば水風呂も気持ち良いかも知れないですけど……
「飛鳥、もう一度サウナに行くよ!」
先輩はそう言いますけど……
「私はもういいですよ」
「えーっ、気持ち良いのに」
そう言って先輩はもう一度サウナ室へ入って行きました。私はもう一度温泉の湯船に浸かります。
「飛鳥先生、災難でしたね」
華純さんがそう言います。
「慶子先生は最近サウナにハマっているんですよ! 私も巻き込まれましたから…… 飛鳥先生はサウナは大丈夫でしたか? 熱くなかったですか?」
そう言えば……
「五分くらいで熱くなって外に出ようとしたら先輩から止められました」
「やっぱり、私も最初はそうだったんですよ! それにあの水風呂はびっくりするくらい冷たくて心臓が止まるかと思いましたよ」
「うん、サウナを出てからの水風呂はちょっと…… 私はシャワーでぬるま湯くらいが一番気持ち良いかも」
「そうですよね!」
先輩のサウナ好きはしばらく続きそうです。でも華純さんは解ってくれて安心しました。
私達は温泉を出てロビーで寛ぎます。
「先輩、なにか飲みませんか?」
「なに、奢ってくれるの?」
「はい」
前に先輩から奢ってもらいましたからね。
「それじゃ、フルーツミルク」
「華純さんは?」
「私も良いんですか?」
「良いよ」
「じゃあ、コーヒー牛乳」
「雫は?」
「私はラムネが良いです」
そういう事で私は先輩と同じフルーツミルクを飲みます。お風呂上がりは冷たい飲み物が一番です。
「飛鳥先生、サウナは入られましたか?」
あっ、女将さん
「はい、気持ち良かったです……」
「あら、そう、良かった! また来てくださいね」
「はい、有難うございます」
流石にもういいですなんて言えませんよね。女将さんのご好意で特別に女湯に入らせてもらってますから、時間外ですけど……
「あら、晴翔君! 今上がりなの」
「はい」
女将さんが声を掛けたのは二十歳前後の大人しそうな男の子です。
「晴翔君、おにぎりがあるから持って行きなさい」
「あっ、はい、有難うございます」
そう言うと晴翔君という男性は外に出て行きました。
「女将さんあの子はバイトなの?」
先輩がそう訊きます。
「ええ、真面目で一生懸命なの」
そう言って女将さんもどこかへ行ってしまいました。あれ、さっきの晴翔君はどこかで会ったような…… 何処だっけ?
「飛鳥帰ろうか」
「あ、はい」
この後、華純さんはアパートへ戻り、私達も診療所そばの借家に戻りました。これで、清川村初日の長い一日が終わりました。
数日後の日曜日、私は新しいブラを買うために川本市へ華純さんと行きます。
「雫、お仕事頑張ってね!」
「飛鳥先生、お土産買って来て下さいね」
「はいはい」
「それじゃ行きましょうか!」
華純さんの車で、私は助手席に乗せてもらって出発です。
「じゃあね、雫!」
そう言って、私と華純さんは診療所を出発しましたけど…… 華純さん、ちょっとスピード出し過ぎてない! 私はちょっと怖いんですけど……
「か、華純さん、もう少しゆっくりで良くない?」
「えっ、これ普通ですよ」
えっ、普通なの! 先輩もこれくらい飛ばすのかなって、路線バスが来てるけど……
「華純さん、バスが来てる!」
「大丈夫ですよ!」
バスは停留所の方へ左に避けてくれました。今のは路線バスの運転手も怖かったと思うけど……
「これで大型車はしばらく来ないはずだから」
いやいや、それは判らないでしょう! 大丈夫かな……
「か、華純さん、私、運転しようか!」
「全然平気ですよ、飛鳥先生は助手席でゆっくりしてて下さい」
「あっ、華純さん! 観光バスが来てる!」
華純さんはやっとスピードを落として左へ寄せます。
「まったく、もう少し左に寄せれば良いのに、あの観光バスの運転手下手だね!」
うーん、それはどうだろう…… 彼女はこの調子で山道を下り剣岳インターまで四十分で来ました。確か、インターまでは五十分とか一時間掛かるんじゃなかったかな? 華純さんって、可愛い顔してハンドルを握ったら人格が変わるとか…… うーん、通常業務の時は私が運転しましょうね……
日曜日、川本市まで華純さんと行くようですけど、華純さんの運転が怖いんですけど…… 無事に川本市に到着出来るでしょうか……