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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第四章 二人の受験
26/55

26 上佐野平

お待たせしました第26話を更新しました!


晴翔君達は大学受験と公務員試験の準備で大変そうで、奏音ちゃんは中学二年生になって高校受験の勉強を偶に診療所でやってます。

 樹君(いつきくん)の受験する大学が決まったそうです。川本(かわもと)市にある川本産業大学を受ける事にしたようですが、公務員試験も受けないといけないのでその準備もしないといけないようです。

飛鳥(あすか)先生、もし大学に受かったら行かないと駄目ですよね……」

 晴翔君(はるとくん)は何だか不安そうです。

「でも、講義は樹君が受ける訳だし、晴翔君が悩まなくても良いんじゃない」

「そうなんですけど……」

 まあ、樹君が統合されなかった場合だけど……

「それより夜は眠れてる? 勉強も大事だけど、身体を壊さないようにね! 四人で交代で行動してるから身体を休める事に気をつけてね」

「あっ、はい……」

「試験は公務員が九月で大学が一月に共通テストだよね」

「はい、それで公務員試験の方は7月の二週目くらいまでに願書を出さないといけないんですけど、受験料を金融機関から振り込んで証明書を願書に添付しないといけないんですよ」

「そうなんだ、でもこの辺だと農協から振り込む事になるよね!」

「まあそうなんですけど、農協が振込可能な金融機関に入っていたか判らないので、でも郵便局は良いみたいです」

「それなら村立病院より街の方へ下ったとこに三河簡易(みかわかんい)郵便局があったでしょう」

「まあ、そうですけどちょっと遠いですよね……」

 まあ、車を持っていない人は遠いですよね、しかも自転車だと帰りは登り坂ですからね……

「ねえ、信用金庫は駄目なの?」

「えっ、信用金庫って何処かにありましたっけ?」

「うん、温泉入口の所に剣岳(つるぎだけ)信用金庫清川(きよかわ)出張所があるけど」

「ああ、それで良いですけど温泉入口の所にありましたっけ?」

「うん、温泉入口のバス停から下に降りたところ、プレハブのような小さな建物だけど、私はいつも給料をあそこで受け取っているから」

「あっ、そうなんですか…… えっ、でも先生は何処から給料をもらっているんですか?」

「えっ、それは清川村からだけど…… 村の医療機関はみんな村立だから」

「あっ、そうなんですね」

 何だか受験の話から変な方向へ行ってしまいましたね……

「あとは証明写真を撮らないと」

 証明写真は村では無理かな……

「証明写真は南川上(みなみかわかみ)町まで行かないと無理じゃない」

「そうですよね…… でも、どっかで証明写真機を見たんですよね」

 この辺にそんなのあったかな……

「晴翔君、ひょっとして温泉街にあるプリクラと勘違いしてない?」

 私達の話に華純(かすみ)さんが入って来ました。

「そんなんじゃないですよ! 証明写真とプリクラの区別はつきますあそこは凛がよく行ってますから」

 まあ、確かにその違いは誰だって判るでしょうって、清川温泉にプリクラがあるんですね! しかも凛ちゃんの行きつけ…… 今度、(しずく)と行ってみようかな…… あれ、晴翔君どうしたのかな? 何だかブツブツ言ってますけど……

「先生、ありましたよ!」

「えっ、なにが?」

「だから、証明写真機です。今、(みなと)から教えてもらいました。村役場にあるそうです。だから、何処かで見たと思ったんですよね」

 さっきのは脳内で湊君と話をしてたのか…… それにしても、湊君がそれを覚えていたとは…… こういう時は多重人格も便利ですね! 主人格が忘れていても交代人格が覚えている訳だから、まあ、なりたいとは思いませんけど…… そういう事で患者さんもいないので夕方の診療終了まで晴翔君と話をしていました。


 季節は流れ、この間まで暖かくなって良い気候だなと思っていたら、もう七月、季節は夏です。診療所の外ではクマゼミがシュワシュワシュワ…… と騒がしく鳴いていてもう暑くて溶ろけそうです。奏音(かのん)ちゃんは夏休みで、樹君は公務員試験の願書提出がそろそろ締め切られるんじゃなかったかな?

「飛鳥先生、奏音ちゃんが来ました」

 雫がカルテを持って来ましたけど…… あれ、華純さんは?

「あー、暑い! 先生こんにちは」

 奏音ちゃんが診察室に入って来ました。

「ここはエアコンが効いてるから涼しくて良いでしょう!」

 汗をかいている奏音ちゃんにちょっと自慢してみました。

「はい、先生はいつも涼しい所にいれて良いですね」

 それは嫌味か……

「奏音ちゃんだって中学校はエアコンあるでしょう」

「中学校は良いですよ! でも行き帰りのバスがですね……」

 そう言えば村営バスは扇風機だったような…… まったく未だに扇風機とか訳解らないです。しかも扉だって車掌さんが手動で開け閉めしてますもんね…… まったく清川村は、昭和の遺物なのでしょうか……

「雫、華純さんは?」

「受付のところでスマホを見てますけど…… なんだか怖い顔をしてましたよ」

「そう、どうしたのかな…… 奏音ちゃんは今日注射だよね」

「はい! それと、検査とかはしなくて良いんですか?」

「うん、そうだね…… 取り敢えず高校受験が終わってからでも良いかな」

「そんなに後からでも良いんですか?」

「うん、どっちにしても手術は高校一年の夏休みだし、医療センターの先生も高校受験が終わるまでは負担をかけない方が良いでしょうという事だから」

「検査は医療センターなんですか?」

「そうだよ、MRIとかも無いし、泌尿器科の先生にも診てもらわないといけないし、一番は二人の精神科医が診断してGIDであると診断しないと認定されないの」

「結構面倒臭いんですね」

「面倒臭いとか言わなーい!」

「だって!」

「一番面倒なのは精神的な診断と身体的な診断をしないといけないの」

「えっ、何ですかそれ?」

「要するに身体的異常がないか、精神的疾患がないかを検査して、GID以外の傷病が無いかを検査するの」

「もし、他の傷病が見つかったら……」

「その時は認定されません!」

「そんな……」

「でも、大丈夫よ! 私が診察してるんだから」

 奏音ちゃんはジト目で私を見ています。そんなに信用ないかな……

「まあ、ここまで来たら先生にお願いするしか無いですけどね…… もう、まな板の上の鯛です」

 私はそれを聞いて奏音ちゃんの高校受験が心配になりました。

「それを言うならまな板の上の鯉でしょう」

「ハハハ……」

 あっ、笑って誤魔化した…… 大丈夫かな……

「飛鳥先生、徳間(とくま)先生からお電話ですけど……」

 華純さんが受話器を片手にそう言います。

「うん、ありがとう」

 そう言って私は電話に出ました。

「もしもし今村(いまむら)です」

『今村先生緊急事態です!』

 やっぱり急患ですか……

「それで救急車はどれくらいで来ますか?」

『いえ、そうじゃなくて今から私と上佐野平(かみざのだいら)まで行ってほしいんですけど……』

 えっと、上佐野平って何処でしょう。

「あの、上佐野平って何処ですか?」

『あっ、上佐野平は剣岳登山口の入口です。実は三日前に入山届が出てるパーティが戻って無いと言う事で消防と山岳警備隊が捜索してます。それで、一番近い医療機関がうちなので待機という事で呼ばれた訳です』

 医師不足で一番頼りないうちが呼ばれるとは……

「判りましたすぐに準備します」

『うん、私もあと数分でそちらに着きますので』

 こちらに向かいながらの電話ですか…… 危ないな。

「それじゃ華純さんメディカルバッグを準備してもらって良い!」

「あっ、はい…… あの、私も行くんですよね……」

「うん、もちろん」

 ここは、救急経験のある華純さんが良いでしょう! 雫に経験を積んでもらっても良いけど…… その時、黒とシルバーの四駆が診療所へ来ました。徳間先生のご到着のようです。

「今村先生、お待たせしました!」

 徳間先生と看護師の上村(うえむら)さんです。

「あっ雫、奏音ちゃんに例の注射をよろしく!」

「はい」

「徳間先生、それじゃ行きましょうか!」

 私がそう言うと……

「彼女を連れて行くんですか!」

 徳間先生からそう言われました。看護師の上村さんも真顔で私を見ていますけど…… どういう事でしょう?

「飛鳥先生、すみませんけど現場へは雫さんと行ってもらえませんか……」

 華純さんも私にそう言いますけど……

「どこか気分が悪いの?」

「あっ…… いえ…… あの…… はい……」

 なんだか、いつもの華純さんと違いますけど……

「うん、解った! 雫、現場に行くから準備して! それじゃ華純さん奏音ちゃんの注射をよろしくね!」

「飛鳥先生、すみません」

 何だか訳ありのようですけど…… 今はとにかく上佐野平へ急ぎましょう。私と雫はメディカルバッグを持って徳間先生の四駆の後ろの席に乗りました。すると徳間先生は車を村役場方面へ走らせます。あれ、この道は村役場で行き止まりじゃなかったかな……

「徳間先生、剣岳インターの方じゃないんですか?」

「そっちはかなり遠回りになるから、役場の先の細い道を進んだ方が近いんですよ!」

 えっ、役場の先に道がある?

「役場の方から行けるんですか?」

「はい、こっちだと一時間くらいで行けるけど、インターへ回ると二時間は掛かるから」

 あっ、そうなんですね…… 私は、この辺の土地勘が無いので徳間先生にまかせましょう。しかし、役場を過ぎた辺りから結構揺れますけど……

「今村先生、所々揺れますのでしっかり捕まっていてください」

「はい」

 そう返事をしながら窓の外を見ると乗用車一台分の横幅よりちょっと広い感じの路面の荒れた道路を走っています。ここを一時間ですか…… しかし、四十分くらい走ると道は広くなりましたけど、路面は砂利道になってしまい、そこを十分くらい走りました。

「着きましたよ!」

 徳間先生の掛け声を聞いて前を見るとレスキュー隊の車輛と救急車に山岳警備隊の四駆が回転灯をチカチカさせながら数台止まっています。現場は騒然としていますね。

上佐野平で医療活動です。華純さんは自らここえは行きたく無かったようです。徳間先生と上村さんも何かを知ってるみたいでしたけど……

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