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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第四章 二人の受験
25/55

25 樹君の大学入試?

お待たせしました第25話を更新しました!


治療の一環として樹君の大学受験という話が出ましたけど……

 (いつき)君から大学受験の話を聞きました。でもこれって、晴翔(はると)君の名義で受験するんだろうけど、樹君が試験を受けるんだよね…… えっと、これって替玉にならないのかな、刑事事件とかになったらどうしよう…… あっ! でも、晴翔君の名義で、試験も晴翔君自身が受けるけど、中身が樹君な訳だから…… でもやっぱり複雑ですね! でも、その前に穂乃花(ほのか)さんが許してくれるのか…… ですけどね。

飛鳥(あすか)、なんだか面白くなってきたわね!」

「まったく、何が面白いのよ……」

 玲華(れいか)は晴翔君が帰ったあとまでイジケて医療用のベッドで寝っ転がっていたくせに調子良いんだから……

「そんなに言わなくても良いじゃない」

 その時でした。

「飛鳥先生、穂乃花さんからお電話ですけど」

 華純(かすみ)さんがそう言ってますけど、早速ですか……

「もしもし今村(いまむら)です」

『飛鳥先生、晴翔が大学受験をするって、どういう事ですか!』

 まあ、晴翔君が受験する訳ではないんですけどね。

「あの、これは樹君の希望です」

『でも、そうなると川本市(かわもとし)で一人暮らしか、また星野家(ほしのけ)にお世話になるか…… いや、その前に学費だって……』

「穂乃花さん、落ち着いて下さい! どこの大学を受けるのか、実際に合格出来るのかも判らないですので」

 穂乃花さんはかなり困惑しているようです。

『先生、今からお伺いしてもよろしいですか』

 もう、そんなに慌てなくても……

「解りました! それではお待ちしております」

 何だか話が大きくなりましたね! でも、まずは話をしてきちんと決めないといけませんね! しかし、これで良い方向へは行くでしょう。これは治療の一環な訳ですから……

「ねえ飛鳥、大学受験でもし合格したら樹君が行くんだよね」

「うん、でもこれがきっかけで統合出来れば良いんだけどね」

「えっ、統合? それじゃ合格して入学しても今の晴翔君ではついていけないんじゃないの?」

「晴翔君がそう思ったら多分、辞退するんじゃないかな」

「それももったいない話だよね」

「まあ、合格した場合の話だよね」

 まあ、受験したからって必ず合格をもらえる訳じゃないし、統合出来るとも限らないからね。

「飛鳥先生、穂乃花さんがお見えになりました」

 もう来ちゃったんですね……

「華純さん、診察室に入ってもらって下さい」

 すると、穂乃花さんは華純さんに呼ばれる前に勝手に診察室へ入って来ました。

「先生、どういう事ですか!」

「穂乃花さん落ち着いて下さい」

「穂乃花、あなたが取り乱してどうするの!」

 えっ、麻子(あさこ)さんも一緒なんですね、玲華はちょっと気まずそうですけど…… あっ、何処かに行っちゃった。

「飛鳥先生、今回の場合は晴翔の名前で受験するという事ですよね」

 麻子さんからそう訊かれました。

「はい、ただ今回の件は治療の一環なんです」

「治療?」

「はい、晴翔君以外の人格が生まれた理由がなんとなく判りましたので」

「それは、どういう事なの!」

 まずは、私が落ち着いてちゃんと説明しないと駄目ですね。

「まず(みなと)君ですけど、彼は晴翔君のイマジナリーフレンドです」

「イマジナリー……」

「はい、空想上の友達です」

「空想上の友達?」

 なかなか、ピーンとはこないですよね……

「はい、幼い時みなさんにもいたんじゃないかと思います。でも成長するとともに普通はいなくなると思います。でも、晴翔君が父親からDVを受けた時に助けてくれたのが湊君です」

「えっ、湊が……」

 穂乃花さんも多分記憶にあると思います。晴翔君が父親に殴られた時、やり返していたと聞いた事がありますから。

「そして、中学校で虐めにあった晴翔君の身代わりになったのが(りん)ちゃんです」

「凛が…… そんな……」

 穂乃花さんは、よく凛ちゃんと仲良くしていたんですよね。

「最後に樹君ですけど、晴翔君が高校三年生の時に勉強についていけず試験で悩んでいる時に、晴翔君の代わりに試験を受ける為だけに生まれてます」

「そんな事が……」

「こうやって、次々に人格が増えていくのが解離性同一性障害なんです」

 私の説明に麻子さんも穂乃花さんもちょっと困惑してるようです。

「でもそれで、何故大学受験なの?」

 穂乃花さんからすれば判らないとこですよね。

「それは、樹君も最初は判らなかったんです。何故、自分が存在するのかを…… でも、それに気づいて晴翔君のために大学へ行って良い仕事に就きたいと思ったみたいなんです」

 そう私が説明した時でした……

「それなら別に大学じゃなくて、公務員試験でも良いんじゃない!」

 麻子さんがそう言います。

「公務員?」

 穂乃花さんはそう言って、麻子さんのことを見ています。

「だって、それだったら街に出なくても、村の役場で働けるでしょう」

 まあ、確かに村役場で雇ってもらえればですけど……

「麻子さん、でも樹君の件は治療でもあるんです」

「飛鳥先生どういう事?」

「樹君の目的は大学受験をする事、目標を達成出来れば樹君は晴翔君と統合出来るかも知れません」

 麻子さんも穂乃花さんもちょっと考えてますけど……

「ねえ飛鳥先生、樹に公務員試験を受けるなら、大学受験も許してあげるというのはどう?」

 麻子さんは少なくとも公務員の資格だけでもって思っているみたいです。

「まあ、そうですね…… あとは樹君がどう思うかですけど……」

「大学受験も公務員試験も受験料は私が出します。それに大学合格したときもお金は必要でしょうから、条件を聞いてくれれば私が出します」

 まあ、普通ならこの条件はとても良いものです。

「麻子さん、私はそれで良いと思いますので、あとは晴翔君達と話をお願いします」

 とにかくこれで統合する事が出来れば…… 残りは湊君と凛ちゃんだけど…… この二人は無理して統合しなくても問題は無いかな…… 三人は仲も良いし、お互い交代して表に出てるし、晴翔君自身も薬のお陰か積極的に表に出てますからね、それに、穂乃花さんや私の言う事もきちんと訊いてくれますから、でも湊君は偶に突っ走るけど…… でも、大丈夫でしょう。なんたって晴翔君のイマジナリーフレンドですから……

「飛鳥先生、樹は統合出来るとして、湊や凛はどうなの?」

 麻子さんはみんな統合出来ると思っているようです。

「麻子さん、湊君はさっき言ったようにイマジナリーフレンドです。晴翔君の事を考えて行動しています。凛ちゃんも問題ありません。それに二人とも私達の言う事をちゃんと聞いてくれますからね!」

「あの二人はそのままという事ですか」

「はい、統合出来るのならそうした方が良いですけど、バランス的にも現状維持の方が良いと思います」

「うーん、解りましたけど、やっぱりすべて良くなる訳では無いんですね……」

 そう言って麻子さんと穂乃花さんは診察室を出るところです。その時、玲華も私のそばに戻って来ました。

「あっ、お嬢さんはいつまでここにいらっしゃるんですか?」

「あっ、はい、私は十月一杯まで……」

「そうですか…… 偶には先生に連絡してあげてくださいね」

 そう言って麻子さんと穂乃花さんは診療所を出て行きました。

「はあ…… お母さんは私のことどう思っているんだろう」

 なんのかんの言いながら玲華も気にしてるんじゃない! まったく……


 数日後、樹君の大学受験が決まったそうです。それを教えてくれたのは奏音(かのん)ちゃんでした。

「どうして奏音ちゃんが知ってるの?」

「だって私、凛ちゃんのメル友だもん!」

「えっ、メル友?」

 凛ちゃんは、専用のスマホをもってるの? それとも晴翔君のを使っているのかな…… それにしても治療の事を誰にでも言ってないよね……

「それで、奏音ちゃんは今日はどうしたの?」

「えっと……」

 何だかいきなりモジモジしだしましたけど……

「あの、来週テストがあるんですけど、解らないとこ満載で……」

 うーん、それで教えてもらいたい訳か! まあ私も、よく美彩先生に教えてもらってたからな……

「どこが解らないの?」

「えっ、教えてくれるんですか」

「患者さんが来たらおしまいだからね!」

「はい」

 そういう事でテスト勉強ですけど…… 奏音ちゃんは化学と日本史が苦手なようです。

「日本史は覚えるしかないね」

「やっぱりそうですよね……」

 何だか自身無さそうに俯く奏音ちゃんですけど……

「単語帳で覚えたら!」

「えっ、どうやるんですか?」

「単語帳に問題、年号とかを書いて裏に答えを書いて覚えるの」

「なるほど、それだったら覚えられるかも」

 まあ、それって半分は書いて覚えているんだけどね……

「それで化学は何をやってるの?」

「今は化学式をやっているんですけど、何でもアルファベットで表記するから戸惑っちゃって」

「そうか、でもあれはね、全部覚えなくても良いんだよ! 出てくる物質は大体同じようなのが出て来ているから、それを覚えておけば良いんだよ」

「えっ、そうなんですか?」

「だって科学変化の代表的なのが水素と酸素と水の関係ね」

「そうか、なるほど」

「他にはナトリウムとかカリウムとか塩素とか…… 教科書に出てくるものだけ覚えておけば良いんだよ」

「そうか、それなら覚えられるかも」

 その後も、化学の教科書を見せてもらいながら、私は簡単な覚え方を伝授しました。何たって私、理科は好きでしたし、高校の時は化学部でしたからね!

「ところで奏音ちゃんは高校は川本市へ行くの?」

「うーん、まだ解らないです。それに私を引き受けてくれるかも解らないですから……」

 まあ、その辺は中学校からきちんと話をしてくれるとは思うけどね!

「大丈夫だよ! 中学校みたいにはならないと思うけど……」

「先生はどこの高校へ行ったんですか?」

「えっ、私は地元の城南高校だけど」

「私もそこに行けないかな……」

「でも、遠いよ!」

 それに一応、進学校だしね……

「でも、GIDでも行けるんですよね!」

 まあ、確かに私はそこの卒業生ですからね……

「寮とかあるんですか」

「えっ、どうだろう…… でも、なるべく近いところが良いよ」

「でも私の事、理解してもらえるでしょうか……」

 なんだか俯いたまま自信なさげですね……

「大丈夫だよ! きっと解ってくれる高校はあるから」

 私の言葉に少しは笑顔を見せてくれた奏音ちゃんでした。

取り敢えず樹君の大学受験が決まりました。その前に公務員試験も受けるようです。でも、合格出来るでしょうか…… 公務員はともかく大学受験は治療の一環、もし不合格だったら……

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