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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第三章 多重人格と男の娘
24/55

24 玲華の心配

お待たせしました第24話を更新しました!


慶子先輩が北総に帰ってしまった事で飛鳥と玲華はまた、言い争ってしまいます。

 慶子(けいこ)先輩が北山総合(きたやまそうごう)病院に帰ってしまいましたので清川(きよかわ)村には医師が三人になってしまいました。それで新しいシフトをと徳間(とくま)先生から話がありましたけど……

「そんな曜日ごとに動かなくても飛鳥(あすか)が診療所で、私が村立病院(そんりつびょういん)で良いんじゃない!」

 なんと、玲華(れいか)からそういう提案がありました。相変わらず面倒くさがり屋なのか、シンプルにそう言っているのかは判りませんけど…… まあ、そっちの方が単純明快で良いんですけどね、そうなると玲華は毎日、三河郷(みかわごう)にある村立病院まで通勤する事になるんですよね、まあ、車で十五分くらいですけど……

「それじゃ、如月(きさらぎ)先生は月曜から木曜まで村立病院での勤務を……」

「徳間先生! 私は如月ではありません、甲斐(かい)です」

「あっ、君もか……失礼しました」

 玲華も慶子先輩のような事を言ってますけど、これって気にする事でしょうか……

「それじゃ、改めて甲斐先生よろしくお願いします」

 玲華は、徳間先生の対応にちょっとニンマリしています。

「玲華、そんなに拘らなくても……」

「なによ! 飛鳥は良いわよね、結婚しても名字が変わらないんだから」

「玲華は名字を変えたく無かったの?」

 そう私が訊くと玲華は眉間に皺を寄せ……

「そんな訳ないでしょ! 愛する人の姓を名乗れるのよ、だから間違って欲しくないの」

「あっ、はい……」

 世の中には夫婦別姓なんて言う人もいれば玲華や慶子先輩みたいな人もいるんですね! 玲華も慶子先輩も今まで通りの名字の方が便利な気もしますけど……

そういう事で、今日は私も玲華も診療所で勤務して、明日からシフト通りの勤務をします。

「ねえ飛鳥、徳間先生は普段何をしてるの? 金土だけの勤務ってちょっと羨ましいんだけど……」

 やっぱり玲華も勘違いしてますね!

「徳間先生は、普段地域医療で村立病院や診療所まで来る事が出来ない人のところへ行っているの」

「へぇー、それじゃ往診してるって事?」

「うん、そういう事!」

 まあ、往診なんて言葉は最近聞かないですけどね。でも実際に患者さんの自宅や施設に行ってる医師はいると思います。

「それじゃ、徳間先生って、いつ休んでるの?」

「うん、日曜日だよ」

「でもさ、日曜日だって当直があるよね……」

 そう、私達医師には必ずそれはあります。

「それで、慶子先輩もいなくなったから土日は村立病院、もしくは診療所のどちらかで交代で対応することになったの」

「ふーん、いつまで?」

「取り敢えず、当分の間…… 玲華だって今年の十月いっぱいで北山(きたやま)大学に戻るでしょう」

「うん」

「そうなると、また新しい先生が来るまでは大変なんだよ」

 そう、こういう辺鄙な所にはなかなか来る人がいないんだよね……

「でも、飛鳥もあと二年したら帰って来るんでしょう」

 まあ、そのつもりですけど…… 晴翔(はると)君や奏音(かのん)ちゃんの事を考えるとちょっと厳しいかな…… 私は考え込んでしまいます。

「飛鳥、まさかとは思うけど、奏音ちゃんの手術が終わるまでここにいるとか言わないよね!」

「えっ、どうして?」

 玲華はやっぱり鋭いです。

「もう、どうしていつもそうなの?」

「だって、私がいなくなったら、あの二人はどうなるの?」

「あの二人?」

 ヤバ! 玲華は奏音ちゃんだけだと思っていたのかな……

「飛鳥、晴翔君は取り敢えず抗鬱薬で良いんじゃないの?」

 えっと…… そんな簡単な事では……

「えっと、今はそれで良いんだけど…… (いつき)君の事が、まだ解らなくて……」

 玲華は呆れた顔で私の事を見つめてます。もう、そんなに見つめなくても……

「飛鳥、そんな事言ってたらいつまで経っても戻れないからね」

「うん、そうだけどね…… 奏音ちゃんや晴翔君の事を思うと帰れないよ!」

「それなら、医療センターの長谷山先生にお願いすれば……」

長谷川(はせがわ)先生ね!」

「そこはどうでも良いけど…… 飛鳥、あんた北総(きたそう)には戻らないつもり……」

「えっ、そんな事は……」

 でも、確かにその考えは無いとは言い切れません! 大学絡みの事で私はここに来た訳ですから……

「飛鳥、図星じゃないよね!」

 玲華は本当に、私の考えを見抜く天才です。

「出来れば、北総へは戻りたく無いかな……」

「あんたね!」

「だって、何も悪い事してないのに、大学の言い掛かりで、本当は波照間(はてるま)島に飛ばされるとこだったんだよ!」

 私はつい、ムキになってしまいました。

「まあ…… そうだけど、それじゃどうするの?」

「まだ、何も考えていないわ!」

「また、そんな事言って……」

 この最悪のタイミングで華純(かすみ)さんが……

「あの…… すみません!」

「なに!」

 玲華の凄みの効いた声に華純さんはちょっとドン引きして、(しずく)はベッドの隅に隠れています。

「あの…… 奏音ちゃんが注射を打ちに来てます」

 はあ! 助かった…… 今日の玲華はいつもより凶暴です。

「うん、診察室に入ってもらって!」

「は、はい……」

 その後すぐに、奏音ちゃんは診察室に入って来ました。

「注射して、気分が悪くなったりしない?」

 奏音ちゃんにそう訊きましたけど……

「先生、なにかあったんですか? 診療所に入ったら、大きい声がしてたんですけど……」

 やっぱり、診療所中に聞こえてたようです。

「うん、ちょっとね! それより注射の後遺症とかはない?」

「はい! お陰で私の思春期は止まったみたいです」

「そう、良かった。それじゃ、注射しますね」

 そう言って、注射を打った後、しばらくベッドで休んでもらいました。これでしばらくは、玲華からの風除けになるでしょう。

「飛鳥先生、二年経ったら帰っちゃうんですか?」

 やっぱり、聞こえてたみたいですね……

「大丈夫、手術が終わるまではこっちにいるから」

「それじゃ、手術が終わっら帰るんですか?」

 奏音ちゃんは、不安なんでしょうね……

「病院との契約が終了するから一度戻らないと駄目なの」

 奏音ちゃんは眉を顰めながら……

「私はどうしたら良いんですか?」

「手術が終わったあとは二週間に一回ホルモン治療の注射をすれば良いだけよ」

 それでも彼女は……

「私の相談とかは、もう聞いてもらえないんですか……」

「奏音ちゃん!」

 私はそう言って彼女を抱きしめました。最初は『ビック』と驚いたようでしたけど、安心したのかそのまま抱き着いて来ました。

「相談事がある時は、いつでも電話でもメールでもして来て良いよ!」

 すると彼女は、ちょっぴり安心したのか、コクッと頷いて……

「ありがとう」

 そう言って診察室を出て行きました。するとまたもや、玲華が戻って来ました。もういいよ……

「飛鳥、本当にここに残るの?」

 玲華はいつも以上に深刻な顔をしています。

「玲華、私が残るって言っても最大で五年までだよ!」

 私が平然とそう言うと……

「それって、あと四年ここにいるって事!」

「うん、だって北総とは大学入学時に地域医療制度を使った関係で九年間北総で医療従事をしてるんだからそれ以上はちょっと無理というか、きちっとした形で手続きしないとね!」

 それでも玲華は納得いかない様子ですけど…… 黙って診察用のベッドに横になってしまいました。

「あっ、玲華先生駄目ですよそんなところに横になっちゃ」

 慌てて華純さんがそう言いますけど……

「良いじゃない! どうせ患者さんはいないんだから」

 そう言って玲華はベッドに横になったままです。

「それでも靴は脱いでください!」

 そう言われて悪いと思ったのか、靴を脱いだ後、窓際の方を向いて黙り込んでしまいました。あーあっ、完全に怒らせちゃったかな……

 その時、受付に隠れていた雫が、恐る恐るカルテを持って私のところへ来ました。

「あっ、飛鳥先生、晴翔君が来ましたけど……」

 晴翔君が、薬をもらいに来たのかな……

「雫、中に入れて」

「でも、玲華先生は?」

「あのままで良いから」

 私がそう言うと、雫は横になっている玲華の横をそーっと通って晴翔君を呼びに行きました。

「晴翔君どうぞ!」

「飛鳥先生こんにちは!」

 晴翔君は診察室へ入ると私の前の椅子に腰掛けました。

「今日はお薬だっけ!」

「はい、それと…… 樹の行動が最近可笑しくて」

 樹君の行動?

「それって、どういう事?」

(みなと)の話では夜中に入れ替わって本を読んでるそうです」

「本を読んでる! でも、それのどこか可笑しいの?」

「それが、何か勉強してるみたいで……」

 樹君は何をしようとしているのか……

「樹君に変われる」

「はい」

 晴翔君と入れ替わるのにちょっと時間が掛かってるみたいですけど……

「樹です」

 ようやく入れ替わったようですね。

「樹君、夜中に勉強してるの?」

「はい、僕は夜型なんですよ」

 うーん、私もそうだけど、いや、そういう事じゃなくて……

「何の勉強?」

「大学受験です!」

 大学! どうして今になって……

「大学に行きたいの?」

「はい、それできちんとした仕事もしたいので」

 うーん、交代人格が大学受験ですか……

「晴翔君には話したの?」

「いえ、ちゃんとは…… そのうちきちんと話そうとは思っていたんですけど……」

「でも、大学の費用とか大変だよ」

「その辺は奨学金とかもあるみたいなので」

「でも、何故今なの?」

「僕は何故、存在してるのかが判ったんです」

「樹君の存在って事?」

「はい、晴翔が高校三年の時、僕は第三の交代人格になりました。その時晴翔は、試験で悩んでいて僕が試験を受けたんです」

「高校の試験のために……」

 樹君は試験の為に交代人格になったのね……

「それで高校を卒業した後は親戚の旅館で働く為にここに来たんですけど、ずっと何故ここにいるのか解らなくなったんです」

 そうか、高校を卒業した後、樹君の必要は無くなった訳か……

「でも、大学受験の事は主人格の晴翔君とちゃんと話した方が良いよ! それと、穂乃花(ほのか)さんにも…… あなた達の母親なんだから」

「はい…… そうですね……」

 うーん、これで晴翔君達の事は大体解りましたけど…… これからどうしたら良いでしょうか……

樹君の人格が生まれた理由が何となく判りましたけど、大学受験とは……

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