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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第三章 多重人格と男の娘
22/55

22 私の祖父と奏音ちゃんの祖父

お待たせしました第22話を更新しました!


倒れたという私の祖父と救急搬送された奏音ちゃんの祖父、何とかしたいけど二人には別の主治医がいますので…… でも、助かって欲しいです。

 私達五人は北山総合(きたやまそうごう)病院から城南中央(じょうなんちゅうおう)の自宅に戻って来ました。

唯香(ゆいか)さん、俺もう帰るから」

「うん、今日はありがとう」

 そう言って二人は玄関のところで抱き合っています。ちょっと、そんな所でやめてよ…… と思いながらも、ひっそり見てしまいます。このままキスでもするんじゃないかと息を潜めてコソコソ見てましたけど…… でも、期待を裏切り彼はそのまま帰って行きました。何だ、しないのか……

飛鳥(あすか)、どうかした?」

「ううん、仲が良いなと思って」

「何の事?」

「別に……」

 私が澄ました顔をしてると…… 姉は何かに気付いたみたいです。

「私が人前でキスとかするとでも!」

「解ってるじゃん」

「する訳ないでしょう」

 そう言いながらも頬を赤く染めて幸せそうに抱き合っていたくせに……

「飛鳥、お茶でも飲まない」

 リビングから母がそう声を掛けます。

「はーい」

 私はそう返事をしてリビングへ行きました。

「飛鳥、ごめんね! わざわざ遠かとこから帰って来てもろうたとに」

「あっ、お婆ちゃん……」

「うん、うん、しばらくはお世話になるけんね」

 そうか、お爺ちゃんが入院したからお婆ちゃん一人になるんだよね。

「飛鳥、お爺ちゃんの容態はどうだったの?」

 母は私の見立てを訊きたいようです。

「うん、モニターとか付けてあったけど別に正常だったよ!」

「先生とは会った?」

「うん、西岡(にしおか)先生と話をしたけど、検査の結果も異常はないみたい」

「そう、良かった」

 母も祖母も一安心のようです。

「ねえ、お婆ちゃんが最初に見つけたんだよね!」

「ええ、そうよ! そろそろお昼やっけんねと作業場へ行ったら倒れとったとよ。その時は何がなんか解らんでね……」

「作業場って、私が高校生の時にバイオディーゼルのテストをした所?」

「そうそう、その床の所で倒れとったけん私は我に返って救急車を呼んだとよ」

「その時、呼吸はしてた?」

「さあ、どがんやったかな…… もうそがん余裕は無かったけんね…… 救急隊の人達がマスクのごたっとを口に当てよんさったけどね」

 それはたぶん、簡易呼吸器かも知れないですね。

「飛鳥、お婆ちゃんも気が動転してたと思うから覚えて無いというより余裕が無かったと思うよ」

 まあ、確かにそうですよね、私みたいにいつも見慣れているとそうでも無いけど……

「ねえ、ところでお姉ちゃんはいつ結婚するの?」

「えっ、結婚!」

「うん、浩二さんとするんでしょう」

「うーん、まだ決めてないけど来年くらいかな…… ところで(しずく)さんは?」

「診療所が忙しいから残ってもらったの」

 まあ、自らそう言って残ってくれたんだけどね……

「雫さんは今村姓(いまむらせい)になったんだよね!」

「うん、そうだよ! 私の戸籍に入籍したんだから」

「でも、もうこれで、手術出来なくなったわね…… 私はちょっと楽しみにしてたんだけど……」

 母がそう言います。

「えっ、なんで? 飛鳥だって手術やろうと思えば出来るでしょう」

 姉は平然と言いますけど……

「出来る訳ないでしょう! 私の性別が女性になったら、雫と夫婦でいられなくなるでしょう」

「あっ、そうなんだ」

 まあ、一度結婚してるんだから、そうはならないと思うけど、でもお母さんが私の女性化を楽しみにしてたなんて……

「飛鳥も色々と大変やねぇ」

 お婆ちゃんからのその一言が、私には何だか心に染みました。


 翌日、もう一度北総(きたそう)へ行きましたけど…… お爺ちゃんの声が廊下まで聞こえてます。

「ワシはいつ退院出来るんじゃ!」

 これは、ちょっと迷惑じゃないかな…… そう思いながら病室へ入ります。

「お爺ちゃん、そんなに大声だしたら迷惑だよ! 看護師さんだって困っているじゃない」

 私は病室へ入るなりそう言いました。

「あっ、飛鳥! 何故こんなところにおるんじゃ」

 そりゃ倒れたって訊いたら普通来るでしょう。私の顔を見て看護師の梨子(りこ)ちゃんは、軽く頭を下げて行ってしまいました。

「おまえは、ワシんことはどがんでん良かけん早よ診療所に戻れ! 飛鳥ん事ば待っとる患者さんがおっじゃろうが」

「う、うん…… でも、他にも医師はいるから」

 まあ、これだけ元気なら大丈夫かな。

源蔵(げんぞう)さん、飛鳥が折角来とっとに……」

 お婆ちゃんがそう言ってくれました。

「そがんばってん園子(そのこ)ちゃん…… 飛鳥はもう医者やけん」

「解った! 元気そうだからもう行くね」

 お爺ちゃんは一度言い出したらもう人の言う事は聞かないからな……

「お、おう、まだ死にやせんけんよかよか」

 そういう事で私は、病室を出ました。それにしてもお互い名前で呼び合ってるなんて仲が良いな…… あの歳になった時、私と雫もあんな風に仲良く出来るかな……

 私は病院を出る前に、もう一度西岡先生のところへ行ったその時でした。

「飛鳥先生!」

 あっ、梨子ちゃんもいました。

「梨子ちゃん、うちのお爺ちゃんがごめんね! 普段はあんなんじゃ無いんだけど……」

「いえ、病気になるとあんな風になる人は多いですよ」

 まあ、確かにそうだけど……

「今村、もう診療所に帰るのか」

「はい、祖父に早よ帰れ! って急かされましたので……」

「うん、そうか」

「祖父の事、何か解ったんですか?」

「うん、本人いわく最近寝不足だったらしい」

 えっ、寝不足……?

「それじゃ、意識が無かったというより眠っていたという事ですか?」

「まあ、そういう事らしい」

 まあ、検査の結果も異常は無い訳だし……

「それじゃ、退院ですか?」

「うん、本人にはまだ言って無いけど明日退院にしようと思う。

「はあ、そうですか…… ありがとうございました」

 私はそう言って頭を下げました。そういう事でお爺ちゃんも明日には退院出来るので喜んでもらえるでしょう。でも、折角三日分くらいの着替えも持って来たのに……

「飛鳥!」

 あっ、母が来ました。

「ねえ、お爺ちゃんは、ああ言ってるけど、折角なんだし明日くらいまでこっちにいたら」

 母からそう言われたので私もそうしょうかなと思ったのですが……

『プルプルプル……』

 あっ、電話です。

「あっ、お母さんちょっと待って、もしもし今村です」

『あっ、飛鳥!』

「先輩こっちの方は大丈夫なので明日そっちに戻ろうと思ってますけど」

『あっ、そうなんだ…… 実は奏音(かのん)ちゃんのお爺ちゃんなんだけど……』

「えっ、ひょっとして厳しいんですか?」

『ううん、取り敢えず今のところは、大丈夫らしいんだけど、飛鳥に逢いたいそうよ』

「えっと、私に逢いたいって、どういう事ですか?」

『私もよく解らないけど…… それで一度医療センターに行って欲しいんだけど』

 えっ、また……

「はあ…… 解りました」

 何だか、また急な展開ですけど…… それじゃこのまま川本(かわもと)市医療センターまで行きましょう。

「お母さん、やっぱりもう一泊は無理みたい本当はゆっくりしたいんだけど、川本市に行かないといけなくなったから……」

「うん、解った、忙しそうだけど身体に気をつけてね!」

「ありがとう」

 そう言って私は北山総合病院をあとに川本市医療センターへ向かいました。


 私が川本市医療センター蒼井(あおい)会に到着したのは午後三時過ぎでした。

「あっ、飛鳥先生!」

 奏音ちゃんのお母さんに声を掛けて頂きましたけど……

「先生、お忙しいところすみません」

「いえ、耕三(こうぞう)さんが私に逢いたいと聞いたんですけど……」

「ええ、こちらです」

 私は奏音ちゃんのお母さんに連れられICU近くの個室の病室に来ました。

「お爺ちゃん、飛鳥先生がお見えですよ」

 耕三さんは、点滴による中心静脈栄養法が取られているようです。

「飛鳥先生…… うちの拓哉(たくや)、いや、奏音の事…… よろしくお願いします」

 耕三さんはその事を私に言いたかったようです。

「耕三さん、安心してください奏音ちゃんは私がちゃんと治療しますから」

 私がそう言った時、耕三さんはうんうんと二回頷きました。

「飛鳥先生、うちの祖父は奏音の事が本当に心配だったようで先生に逢って直接お願いしたいって言って聞かなかったんですよ」

「お孫さん思いなんですね」

「ええ、奏音はお爺ちゃん子でしたから」

 その時でした。

『ピンポン、ピンポン』

 アラームが鳴っています。これはちょっとまずいですよ! 耕三さんもちょっと咳き込んでいます。

「耕三さん、大丈夫ですか!」

 私はすぐにナースコールをしました。

『はい、どうしました?』

五条(ごじょう)さんが咳き込んでいます。アラームも鳴ってますのでお願いします」

「はい、すぐに行きます」

 そう言った後、廊下をパタパタと走る音が聞こえました。病室に看護師さんが二人入って来ましたけど……

「直ぐに先生を呼んで! 五条さん、大丈夫ですか? 吸引しますね」

 何だか急に慌ただしくなりました。先生も直ぐに駆けつけてくれて……

「五条さん、挿管しますからね」

 先生はそういうと何の躊躇(ためら)いもなく気管挿管をしました。これでもう会話は出来ませんけど…… 耕三さんはなんとなく笑顔です。

「お爺ちゃんは、本当は早く挿管しないといけなかったんですけど、飛鳥先生にきちんとお願いするまで待って欲しいって言って……」

 奏音ちゃんのお母さんはそう言いました。

「そうですか……」

 北総から直接来た甲斐がありました。実家にもう一泊して来てたら間に合わなかったかも知れませんね。

「五条さん、ご家族の方を呼んでもらって良いですか?」

 医師からそう言われました。えっと、それって……

「はい、直ぐに!」

 耕三さんは、いよいよ厳しいかも知れません……

私の祖父は退院出来そうですけど、奏音ちゃんの祖父は、何だか厳しそうです。私が主治医では無いけど私にとっては初めての患者さんの死になるかも知れません……

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