21 お爺ちゃん
お待たせしました第21話を更新しました!
奏音ちゃんのお爺ちゃんを医療センターのドクターヘリに乗せるため村立病院へ急ぎますが…… 心停止、血圧低下…… 間に合うんでしょうか……
救急車は、村立病院に到着しました。すでにドクターヘリのストレッチャーが村立病院のロビーで準備万端という感じで待機していました。
「医療センターフライトドクターの島です」
「出羽診療所の桐生と今村です。来る途中に心停止がありましたのでボスミンを投与しています。血圧もかなり低下しています」
「あの…… それと、心筋梗塞の可能性があると思います」
慶子先輩の心停止やバイタルについては必要な報告事項ではありますが…… 私が報告した心筋梗塞の可能性は伝えてもよったのかな…… でも、聴診器で聴いた心音はそれっぽかったかな……
「了解しました! お疲れ様でしたあとはお任せください」
医療センターの島さんはニッコリ微笑んで私達に声を掛けたあと患者さんをドクターヘリのストレッチャーに乗せ替えます。
「イチ、ニ、サン!」
「急いでエレベーターで屋上へ」
私達ももう一機のエレベーターで屋上へ向かいます。屋上のヘリポートではドクターヘリがいつでも飛び立てる体制で待っていました。
「ご家族の方はこちらへお願いします」
奏音ちゃんのお母さんがドクターヘリに乗り込んだところで、ヘリはゆっくり上昇しました。
「はあ、無事に医療センターまで行ければ良いですけどね」
「大丈夫よ! 何かあっても救命科の人達がなんとかするわよ!」
慶子先輩は結構無責任な事を言ってますけど、私達がこの村で出来る事はこれくらいなんですよね……
「そうですね」
「慶子先生、飛鳥先生お疲れ様でした」
徳間先生です。
「ねえ徳間先生、どうして村立病院じゃなくて診療所に先に搬送したんですか?」
先輩は愚痴とも取れる発言をしてますけど……
「それは、患者さんの家が診療所に近かったからだよ!」
「それにしても、私達が来た時も玄関に居てくれたって……」
「他に患者さんがいたからね……」
まあ、ごもっともな理由ですよね、私と先輩はちょっと納得出来ませんけど……
『プルプルプル……』
あっ、電話です。きっと雫ですね。
「もしもし、雫?」
『はい今、村立病院に着きましたけど……』
「うん、今屋上だから降りて来るね」
そう言って一階ロビーに降りて来た時、雫の隣にもう一人の人影が……
「先生、お爺ちゃんは?」
えっ、奏音ちゃんも来たんだ!
「お爺ちゃんはドクターヘリで医療センターに搬送したから大丈夫よ!」
先輩がそう言いますけど……
「ここでは治療出来ないんですか?」
まあ、設備さえしっかりしてれば出来ない事も無いでしょうけど……
「うん、ここでは検査をする機械も無いからね」
「はあ…… やっぱり田舎は駄目ですね」
「そうね…… 街みたいに人が多くないから大きい病院を作ってもね」
本当なら高齢者が多いこの村の医療体制を良くするべきではありますけど、街の方でもなかなか医療体制が良いとは…… 慶子先輩も解ってはいるんでしょうけど……
「まあ、確かにここの村に医療センターのような大きい病院を作っても無駄な感じはしますけどね」
そんな話を奏音ちゃんとしながら私達四人は私の車、とっぽちゃんに乗り込みます。
『プルプルプル……』
また私のスマホが鳴ります。今度はなんでしょう? また急患でしょうか……
「もしもし」
『あっ、飛鳥!』
電話は私の母からでした。
「お母さん、どうしたの」
『あっ、あなたにも連絡しておこうと思って』
何かあったのでしょうか……
「どうしたの?」
『実はさっき、お爺ちゃんが北総に運ばれたの』
「えっ、お爺ちゃんが!」
『ええ、今は薬で安静にしてるけど…… 飛鳥、今から来れないわよね』
えっ、今からって……
「うん……」
お爺ちゃんが北総に運ばれたってどういう事…… 私はもう気が気では無いです。でも、行けないですよね……
『飛鳥、聞いてる』
「うん、ありがとう…… また連絡する」
そう言って電話を切りました。
「飛鳥、どうしたの?」
「うん、お母さんからだったんだけど…… 私の祖父が北総に運ばれたって……」
「えっ! それ大変じゃない」
「でも、また先輩達にご迷惑を掛けるから……」
「何言ってるの! 診療所に着いたらすぐに帰る準備をしなさい!」
「でも……」
「これは先輩命令です! 良いわね」
「あっ、はい…… ありがとうございます」
「飛鳥先生、私も残りますから行って来てください」
雫からもそう言われました。
「ありがとう雫、でも何かあったときは雫にも帰って来てもらわないといけないからね」
「飛鳥、縁起でもない事を言わないの」
また、先輩に怒られてしまいましたけど…… 何が起こるか解らないですからね!
診療所に着いたあと、私は玲華に一言だけ事訳を話して準備をします。まあ、三日分くらいの着替えがあれば良いかな。
「飛鳥、今から帰るんなら気をつけないと駄目よ! インターまでは薄暗いくらいで済むけど、高速ではもう暗くなるからね」
「ありがとう、玲華」
そう話したあと、私は急いで剣岳インターを目指します。でも、やっぱりもう薄暗いですからゆっくり走りましょう。しかも、村営バスの役場行きの最終便がありますよね…… 気をつけないと狭い所での離合は怖いですからね! そう思っている時にバスが来ました。広い所だったので私は端に避けて難を逃れました。その後は何とかインターまで無事に行きましたけど、辺りは真っ暗ですね…… 私は夜の運転は慣れてなく怖いので時速八十キロくらいの速さで走り城南東インターを経由して久々の北山総合病院に戻って来ました。時間は午後八時半を過ぎた所です。あっ、看護師さんがいましたので訊いてみましょう。
「あの、すみません……」
「はい、どうしました? って、飛鳥先生! どうしたんですか?」
声を掛けた看護師さんは小路丸梨子さんでした。
「えっ、梨子ちゃん」
「はい」
なんだか髪型がショートになっていたので解りませんでした。
「久しぶりですね、雫はちゃんと看護やってますか?」
「うん、頼りないとこもあるけどちゃんとやってるよ」
「そうですか…… それで、どうして北総に?」
あっ、そうでした……
「今日、今村源蔵さんという方が救急搬送されたと思うんだけど……」
「あっ、それでしたら二階の内科病棟212号室です」
「そう、ありがとう」
そう言って私は内科病棟へ急ぎました。
「飛鳥!」
「あっ、お母さん」
「来ることが出来たのね」
「うん、お爺ちゃんは?」
「まだ病室で眠ってるわ」
母の落ち着いた姿を見て私も落ち着きました。
「私もちょっと行ってくるね」
「ええ」
私は、恐る恐る病室の中へ入りました。すると祖父にはモニターが取り付けてあり点滴で電解質の輸液が投与されていました。モニターも正常で脈も安定してますから取り敢えずは病状も落ち着いているようですので一安心です。
「それじゃ、あとからロビーに行くよ!」
えっ、誰? 祖父の病室に誰か入って来ました。男性の方です。
「あっ、こんばんはすぐに失礼しますので……」
そう言って、祖父の顔を見てすぐ病室を出て行かれました。えっと、誰でしょう? でも、祖父の病状が落ち着いていて安心しました。担当医は西岡先生ですね。ちょっと医局で話を聞こうと思い私は病室を出て医局へ来ました。
「おい小路丸君、今村さんの様子をたまに見ていてくれよ」
「はい」
夜もやっぱり大変そうです。
「失礼します」
「えっ、飛鳥先生!」
「祖父がお世話になります」
「えっ、祖父って…… 今村源蔵さんは飛鳥先生の……」
「はい、祖父です」
「そうでしたか」
「はい、それで病状を教えて頂ければと……」
すると西岡先生は頭を掻きながら……
「搬送されたときは意識が無かったんだけど…… 検査の結果これと言って異常は無かったんだよね」
「と言うと、問題無しですか……」
「うん、ただ三日くらいは入院してもらうけどね」
「はい、よろしくお願いします」
そういう事で西岡先生に診てもらえるなら安心です。医局を出て私は母のいる場所へ行きました。
「あっ、あの先生だよ!」
私が母と姉のところへ戻った時にそばにいた男性に言われました。
「あっ浩二さん、あれは私の…… 妹の飛鳥よ!」
へっ、妹……
「あっ、あなたはさっきの……」
「はい、羽島浩二と言います」
「飛鳥、私達婚約したの!」
あっ、そうなんだ! 姉にもようやく春が来たんですね。でも……
「お姉ちゃんちょっと!」
私は姉と二人になりました。
「お姉ちゃん、私の事話してないでしょう」
「うん、ちゃんと話すわよ……」
「さっきだって妹とか言っていたけど……」
「飛鳥だって弟よりも妹の方がかなり近いでしょう」
まあ、この格好ではそうですけど……
「妹さんはお医者さんなんですね」
「あっ、はい…… 今は小さい診療所勤務をしてるんですけど……」
「そうですか、大変ですね」
何だかこの展開は焦っちゃいますね……
「それより飛鳥、今日は家に泊まるんでしょ! 一緒に帰ろう」
まったく、お姉ちゃん大丈夫なんでしょうね……
奏音ちゃんのお爺ちゃんの次は私の祖父が北総に…… ただ、容態は安定していて検査も異常なしってどういう事? でも、今すぐどうにかなる訳では無いみたいなので一安心です。




