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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第三章 多重人格と男の娘
16/55

16 説得

お待たせしました第16話を更新しました!


私は拓哉君がセーラー服とスカートで学校へ来れるように中学校へ説明に来ましたけど、学校という所は…… 大変です!

 今、私は拓哉(たくや)君が通っている南剣(みなみつるぎ)中学校に来ています。担任の柏木(かしわぎ)先生に病状を訊かれたんですけど……

「えっと、この病気は身体的には男性ですけど、精神的というか心は女の子なんです」

 三人の先生方は動揺を隠せないようです。

「それで五条(ごじょう)君はどうなるんですか?」

「えっと、拓哉君は、今後女性として生きて行く事になります」

 やっぱり校長先生も教頭先生も何も言えないようです。さっきから話しかけて来るのは拓哉君の担任の柏木先生だけです。

「五条君心配してたのよ、夏休みが終わってからずっと学校に来ないから……」

「先生…… 私はもう学生服を着たくありません。普通の女の子のようにお洒落をしたいし、スカートだって履きたいんです」

 まあ、これが拓哉君の本音でしょうね。彼の母親はそれを聞いて複雑だと思いますけど……

「それで今日私が学校へ来たのは拓哉君にセーラー服とスカートでの通学を認めて頂きたくて来ました」

 私がそう話したあとです。

「男の子がセーラー服なんて無理ですよ!」

 教頭先生の最初の一言がそれでした。

「教頭先生、あなたは女の子の心を持った生徒に学生服を着せるんですか!」

 私はそう反論しましたが……

「しかし、身体は男なんですよね!」

 まあ、この人達は生徒の気持より、周りの目や批判が怖いんですよね!

「それじゃ教頭先生、明日から毎日スカートを履いて学校へ来て下さい」

 私がそう言うと、教頭先生は私を睨みつけて……

「何故私がスカートを履かなければいけないんですか!」

 そう反論されました。まあ、当たり前ですけど……

「でも、あなたは、同じ事を生徒に言っているんですよ!」

「うっ、しかし、彼は男でしょう!」

「だから説明したでしょう! 彼は障害でセーラー服とスカートを望んでいます。あなたはご自分がやりたく無い事を生徒にやらせるんですか? それが先生の仕事ですか?」

 私もそう言いましたけど…… 先生達の反応は思わしくありません。

飛鳥(あすか)先生、もういいですよ! 学校とは所詮そんなところですから……」

「それでもね五条君、学校には来て欲しいの!」

 担任の柏木先生がそう言いますけど……

「嫌です! 私は学校へは行きません。私の事を解ってくれない人達の所へは行きたくありません」

「君、何を言っているんだ! 中学生なんだから学校へ来なさい」

 教頭先生は頭ごなしに命令口調で言います!

「待って下さい! それじゃ拓哉君の気持ちは考えてもらえないんですか!」

「しかし、こういう事をいちいち認めていたらまとまりませんから!」

 はあ、どうしてこの人達は生徒の気持ちを考えてくれないのか……

「もし、これで拓哉君の病気が酷くなったら教頭先生、あなたの責任ですからね!」

 私が教頭を睨みつけそう言うと……

「ちょっと待ちなさい! 何故私の責任ですか!」

 やっぱり責任を突きつけると困るみたいです。

「あなたがセーラー服も認めないし、学校へも強制的に登校させようとしてるからです」

「しかし、それは私の仕事ですから」

 いや、それは可笑しいでしょう!

「あなた達は生徒を虐めるのが仕事なんですか? 何故、生徒の気持ちを考えてあげられないんですか!」

「しかし、出来ないものは出来ません! そんな事をしてPTAや他の父兄になんて言われるか……」

 教頭先生、とうと本音が出ましたね!

「もう良い! 教頭先生、この件はすべて私の責任で認めます」

「しかし、校長……」

 校長先生はずっと黙って私の話を聞いてましたが、やっと口を開いてくれました。

今村(いまむら)先生、五条さんの事は彼の、いや彼女の言う通りにしましょう。ただ、他の生徒にも理解を求めて協力してもらわないといけませんので、色々と提案をお願いします」

「はい、私も拓哉君と同じなので出来る事は協力します」

「今村先生、同じとはどういう事でしょうか?」

 あっ、そうか、まだ言っていませんでしたね!

「私も拓哉君と同じ性同一性障害です」

「ええっ!」

 先生方は、また驚いています。

「あの、病気の人が医師になれるんでしょうか……」

 また教頭先生がそんな事を言います。失礼な!

「教頭先生、お疑いなら医師国家資格証明書を提出しましょうか」

 私がそう言うと……

「今村先生、教頭が失礼しました。証明書の提出は必要ありません。それで、まず何をすれば良いでしょうか」

 流石は校長先生、貫禄が違いますね!

「まずは更衣室の問題です。女性化を目指す拓哉君に男子更衣室の使用は無理です。でも、身体の性別が男子なので女子更衣室というのも無理だと思います」

「まあ、そうですね…… 今村先生が中高生の頃はどうされたんですか?」

 私の時ですか…… あの時は……

「私の時は幼稚園の頃からの友達が、『一緒で良いじゃない!』と一言言ってくれたのがきっかけで他の女子生徒からも許されました。確か女子トイレの使用もそんな感じでした」

「今村先生は良い友達に恵まれたんですね! 私はトイレはともかく更衣室が一緒なのは無理です」

 まあ、柏木先生の気持ちは解ります。私の場合は特例だったと思います。そこは瑞稀(みずき)に感謝しかないかな……

「まあ、そういう訳にもいかないと思うので保健室で着替えをさせてもらうか、体育教官室の一室で着替えさせてもらうかだと思います」

「うん、それが一番良いですね」

 柏木先生も納得してくれましたね。

「あの校長先生、この事に関してホームルームで生徒達にもきちんと説明をして理解してもらいたいんですけど」

「はい、そうですね、今村先生も一緒に説明してもらえますか」

 えっ、私も…… どうしよう…… うーん、また先輩にお願いしないといけませんね……

「解りました…… 他の医師の方と話をしますので……」

「あの、よろしければ明日の朝のホームルームにでも」

 柏木先生はそう言いますけど……

「すみません! うちの村には医師が三人しかいませんので、ちょっと待ってください」

 そう言って私は校長室を出て先輩に電話をしました。

『あっ、飛鳥! 拓哉君どうだった?』

「えっと…… 先輩、実は、明日も朝からこっちに行きたいんですけど……」

 一旦、空白の時間があいたあと……

『飛鳥、何があったの?』

 先輩に訊かれてしまいました。

「あの、拓哉君の事で私もホームルームに出席して、生徒に説明をしてほしいと言われまして……」

 私は先輩に申し訳なくて段々言葉が小さくなってしまいました。

『うーん、そうか…… ちょっと待って! 徳間先生に話してみるから…… でも、何でもかんでも受け入れたら駄目よ! 大体それは学校がやるべき事だよ』

「はい、すみません……」

 そう言って一旦電話は終了です。確かに先輩の言う通りこの問題は学校側が解決する事ですけど…… この病気に知識のない人が色々と決め事を作るとまた厄介なんですよね……

「今村先生、どうでしょうか?」

 柏木先生からの催促ですけど……

「すみません、今調整をしてもらってますけど……」

「そうですか…… 五条君は、みんなに認めてもらうまでは学校に来たくないと言ってまして……」

「そうですか……」

 まあ、そうでしょうね…… 拓哉君の言い分は解るんですけどね…… その時、拓哉君も校長室から出て来ました。

「拓哉君!」

 私が声を掛けると……

「飛鳥先生、中学校って行かないと卒業出来ないんですよね……」

 うーん、中学校までは義務教育だから卒業出来ないことは無いですけど、高校とかを考えるとね……

「拓哉君は高校はどうするの?」

 その時でした。ピアノの音色が聴こえます。拓哉君は私の質問に答えずにその音色の方へ行ってしまいました。

「ちょっと拓哉君!」

 私は声を掛けながら彼の後を追います。柏木先生は校長先生とお母さんを呼びに戻られたようです。

「拓哉君どこに行くの?」

 すると彼はピアノの音が聴こえる音楽室の中へ入って行きました。私もちょっと失礼しましょう。

「あれ、ひょっとして五条君? どうしたのその格好は? 可愛いじゃない」

「あの、失礼します……」

「あっ、あなたは?」

「あっ、この人は私の主治医の今村飛鳥先生です」

 拓哉君にそう説明してもらいました。

「主治医?」

 ピアノを弾いていた先生は訳が分からずにいます。

「あの…… 実は拓哉君は……」

 私がそう言い掛けた時……

「私は本当は女なんです」

 いや、拓哉君それはいきなり過ぎて判らないから! そう思いましたけど……

「ひょっとして性別違和なの?」

 音楽の先生がそう訊きました。

「…… はい……」

「そうか、五条君は何となくそうなんじゃないかなと思っていたんだけど……」

今泉(いまいずみ)先生は私の事を知ってたんですか……」

「ううん、そんな感じがしただけだよ」

 そう言って今泉先生は私の方へ来ました。

「あっ、私は音楽の教師で今泉美羽(いまいずみみわ)といいます。五条君の事よろしくお願いします」

「あっ、はい」

 その時音楽室の扉が開きました。

「あっ、五条君ここにいたのか」

 校長先生と教頭先生、そして拓哉君のお母さんが入って来ました。

「校長先生、どうしたんですか」

 今泉先生がちょっと驚いています。

「いや、五条君を探していてね」

「何かあったんですか?」

「うん…… いや、別に……」

 何となく変な空気ですけど……

「ねえ、五条君ピアノ弾く?」

「良いんですか?」

「うん、前によく弾いてた曲を聴かせてよ!」

「はい」

 そう言って、拓哉君はピアノの前に座り、ピアノを弾き始めました。とても綺麗な音色ですけど、拓哉君はピアノが上手なんですね! えっと、この曲は、ショパンの曲でしたっけ…… でも、拓哉君はピアノを弾いているときは笑顔で生き生きとしています。目を閉じて聴いているととても気持ちが良いですね!

『プルプルプルプル……』

 あっ、先輩から電話です。私はそっと、音楽室を出て電話に出ました。

「はい、飛鳥です」

『飛鳥、明日の件だけど応援の先生が来るそうだから明日もそっちで良いよ』

 えっ、応援の先生? 誰でしょう……

「先輩、ありがとうございます」

『でも飛鳥、今回だけだからね!』

「はい、すみません……」

 先輩にそう釘を刺されてしまいました。

 私が音楽室へ戻ると、ピアノの演奏は、まだ続いているようです。

「今村先生、病院からですか?」

「はい、明日までOKを頂きました」

 これ以上はもう無理です……

「はあ、良かったです。生徒達の説明って一人だと大変なんですよ」

「はあ、そうですか……」

 まあ、これで明日生徒達を納得させればミッションクリアという事ですけど、応援の先生って誰なんでしょうか……

今回は学校側へ拓哉君がセーラー服を着る事が出来るように説得、そして拓哉君にも中学校へ行くように説得という事でした。しかし、応援の先生って誰でしょう? 私の知らない人でしょうか……

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