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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第二章 真実
13/55

13 美彩先生の休日

お待たせしました第13話を更新しました!


なんと、晴翔君の母親が穂乃花さんでした。これで晴翔君がDIDになったきっかけが判ったような……

 うーん、穂乃花(ほのか)さんが晴翔(はると)君の母親だったとは…… でも、今の話からすると、やっぱり晴翔君のイマジナリーフレンドは(みなと)君のようです。

「穂乃花さん、ご主人はその後どうされたんですか?」

「あんな人の事は知りません!」

 穂乃花さんは憮然とした態度でそう話します。

「あっ、すみません。あの人の事を思い出すだけでムカムカするので…… 私が清川(きよかわ)村へ帰ったあとは離婚して、その後は確か失踪したみたいで、まったく無責任な人です」

 そこで話は終わりました。

「穂乃花さん、話辛い事を色々とありがとうございました」

「晴翔の為なら…… 先生、晴翔の事よろしくお願いします」

 そう言って穂乃花さんは一礼してから診療所を後にしました。しかし、如月(きさらぎ)先生に相談されていたんですよね、何故言ってもらえなかったんでしょうか…… それに先生はどこまで知っていたんでしょうか? 麻子(あさこ)さんだって、知ってるなら早く言ってくれれば良かったのに…… しかし、穂乃花さんのお陰で治療が進みます。今週の金曜日に晴翔君は抗鬱薬のお薬レクサプロをもらいに来るはずなので、もう少し詳しい事を聞かないと…… ただ、判らない事はあります。 湊君はイマジナリーフレンドで父親のDVから晴翔君を守るために現れたと思われます。しかし、(りん)ちゃんはたぶんですけど、中学生の時に虐めにあった事で現れたと思いますが、この時湊君が晴翔君を守れた訳だし凛ちゃんが第二の人格になるのは…… うーん、ちょっと判らないです。しかも、(いつき)君が二年くらい前に第三の人格として現れています。 その頃何かあったのでしょうか? これも判らないんですよね…… もう少し詳しく訊いていくしかないのかな。


 夕方、取り敢えず本日も診療終了です。

飛鳥(あすか)さん、二十時に貸切温泉を取ってるから(しずく)さんと来てね!」

 そうでした、美彩(みさ)先生が清川温泉に遊びに来ていたんでした。そう言って美彩先生は湧水庵(ゆうすいあん)へ戻って行きましたけど……

「飛鳥、お疲れ!」

「あっ、お疲れ様です」

 先輩も村立病院から帰って来ました。

「飛鳥、今の女性は誰! 見慣れない人だけど」

「あっ、さっきの人は私の友人で城南市(じょうなんし)でクリニックをされているんです」

「ふーん、綺麗な人だね」

「はい、そうですね……」

 でも、かなり天然なんですけどね…… まあ私も人の事は言えませんけど……

「ところで、穂乃花さんは診療所に来たの?」

「ええ、来ましたよ」

「それで晴翔君のご両親は……」

 先輩も気になっていたようです。私は穂乃花さんが晴翔君の母親だった事や穂乃花さんがご主人からDVに遭っていた事を先輩に話しました。

「ええーっ! それじゃ、それが原因で晴翔君は多重人格になったの?」

「少なくともイマジナリーフレンドだったと思われる湊君が穂乃花さんのご主人からDVを受けている時に最初の交代人格になったんだと思います」

「でも、それじゃ、他の二人は?」

「晴翔君が中学生の時に虐めに遭っていたみたいで、その時に(りん)ちゃんは交代人格になったんだと思います。でも、凛ちゃんの件も(いつき)君の件もまだ、よく判らないんですよね」

「まあ、何でもかんでもいっぺんには無理だよ! まあ、地道にやるしかないよ。それにしても私は麻子さんが怪しいと思っていたんだけど、穂乃花さんとはね……」

 まあ、先輩の言いたい事はなんとなく解りますけどね…… その後、私と雫は自宅へ戻りました。今日の二十時に美彩先生と約束なので……


 私と雫は湧水庵の前まで来ました。

この辺の旅館ではここが一番大きい旅館なんですよね…… どうしましょうか、ロビーに美彩先生の姿はありません。という事は、やっぱりフロントから呼んでもらわないと駄目かな…… その時でした。

「飛鳥さん!」

 あっ、美彩先生がいました。良かったです。えびす屋さんはよくお伺いするし、女将の麻子さんとも交流がありますけど湧水庵さんはなかなか来ませんからね……

「飛鳥さん、ちょっと待ってね!」

 そう言ってロビーのソファーに三人で座ります。

「美彩先生、今回は上杉(うえすぎ)先生は一緒じゃないんですか」

「ええ、一人よ! 秀一(しゅういち)さんは大学があるから」

「それじゃ、クリニックはお休みなんですか?」

「ええ、三週間前くらいから休診のお知らせをしてたの」

 満面の笑みで先生はそう言いますけど……

「でも、患者さんは何だか解るみたいで…… 先生、何か良い事でもあったんですか、だって!」

 そりゃ、誰だって解るでしょう。今みたいに満面の笑みで話したら……

「美彩先生はすぐ顔に出ますから、みんな解るんじゃないですか!」

 あっ、雫が言っちゃった……

「あら、やっぱりそうかしら……」

 美彩先生は両手を頬の所にあてて、ちょっと赤くなっているかな…… やっぱり天然ですね!

 その後、私達は露天風呂が付いている貸切温泉に案内され、私達三人は迷わず露天風呂の方へ行きました。

「飛鳥さん、星が綺麗よ!」

 美彩先生がそう言いますけど、清川村に住んでいるとこれが普通になってしまっているから、あまり感動が無いんですよね…… でも……

「こっちで見ると星が沢山見えて本当に綺麗なんですよ! 城南市とあまり変わらないはずなんですけどね」

「本当よね、まあ、城南市の方は街灯や看板の灯りとかが多くて星が見えにくくなってるんだろうけど」

「美彩先生、天の川が綺麗ですよ!」

 雫も話に加わって来ました。

「本当、天の川なんて久々に見たかな……」

 美彩先生は本当に観光で来ただけなのかなぁ……

「飛鳥さんはここに三年勤務して、また北総に戻るの?」

 えっと、どういう事?

「はい、そのつもりですけど……」

「開業するつもりはないの?」

 開業…… ジェンダークリニックをやりたいとは思ってますけど……

「開業するとなると、色々難しいですよね」

「そうね…… でも、準備だけはしてた方が…… ほら、なにかチャンスがあった時に…… ね!」

 そう言って美彩先生は露天から内風呂の方へタオルを纏って行ってしまいました。それにしても、美彩先生ってスタイル良いですよね、うちの母とは大違いです。年齢はもう五十代のはずですけど、ああ言うのを美魔女って言うのかな…… 美魔女…… 何だか良い響きですね。私もあんな感じになれたらな…… その後、充分温泉を堪能した私達は美彩先生の部屋に行きました。

「雫さんはかなり髪が伸びたのね!」

「はい、もうウイッグも卒業しましたので」

「でも、雫さんはショートの方が似合ってるかな」

「はい、私もこっちの方が気に入っているんです。それに、楽で良いんですよね」

 まあ、確かにそうですけど…… 私は今のセミロングがお気に入りですけどね!

「飛鳥さん、秀一さんに訊いたんだけど解離性同一性障害の患者さんがいるの?」

「あっ、はい……」

「よく聞く話では二十人とか三十人の人格を持っているって本当!」

「はい、病状が酷い人はそうですね」

 上杉先生は、またオーバーに話したみたいですね……

「飛鳥さんが診てる患者さんもそうなの?」

「いえ、私が診てる人は主人格を入れて四人です」

「それって治るの? 秀一さんはその辺のところを教えてくれないのよ!」

 まあ、上杉先生は完全に治るのは無理だと思っているんだと思います。

「そうですね、治るとは聞いた事がありますけど……」

「その言い振りでは、かなり難しいみたいね……」

「えっと…… でも、良くなると思います」

 鋭いな、美彩先生……

「うん、そうね、秀一さんも色々考えているみたいだから」

 上杉先生が…… 色々と調べてもらっている…… いや、本当に頭が下がります。

 そういう話をしながら夜は更けていき、私達も湧水庵を後にしました。


 翌朝、今日の私は村立病院勤務です。

「飛鳥先生、ちょっと良いですか?」

 医療事務を担当している青山(あおやま)さんが来ました。

「青山さん、どうかしたんですか?」

「はい、待合室にいるジーンズを履いた人なんですけどね……」

「あの女性がどうかしたの?」

「名前が五条拓哉(ごじょうたくや)さんというんですけど……」

 えっと、どこからどう見ても女性だよね……

「はい、それが精神科の先生がいるって聞いたから見てもらいたいと……」

 それって、麻子さんから聞いたのかな……

「取り敢えず、中へ入ってもらいましょう」

 そういう事で診察です。

「五条さん、私は医師の今村(いまむら)ですよろしくお願いします。今日はどうされましたか」

「先生、私は男でしょうか、女でしょうか?」

 うーん、こんな田舎にもやっぱりいるんですね……

「あの、見た感じだと女性だと思いますけど、名前は男性的ですよね……」

「私、病気なんでしょうか?」

「拓哉君は中学生?」

「はい」

「うーん、それじゃ制服は学生服? セーラー服?」

「…… 学生服です」

 やっぱり……

「本当はセーラー服を着たいのね」

「はい」

「あなたは性同一性障害だと思われます」

「そしたら女装しても良いんですか?」

「まず、制服については学校とよく話し合ってね! 必要なら診断書を書いてあげるから」

 私の時も大変でしたからね…… 小学校を卒業して中学校入学一週間前にやっと許可が出て、バタバタで入学式に間に合わせましたから……

「先生、治療はしてもらえないんでしょうか」

「えっと、まずは経過観察になります。どっちにしても治療は認定が出てからになります。ご両親は一緒ですか?」

「いえ、一人です」

「一度、ご両親を連れて来てください。医療費もかなり掛かりますので」

「でも、うちの両親は否定的なんです」

「だから、これは酷い精神的疾患になる可能性があるからとにかく、ご両親に病院に来るように言ってください」

 その時、ちょっと周りが騒がしいんですけど……

「あの、困ります。今は他の患者さんの診察中ですから」

 えっ、何、誰?

「その先生は、あなたの気持ちが一番解る先生だから安心なさい」

「美彩先生、診察中なんですけど……」

「だって、話を聞いていたら黙ってられなくて!」

 うーん、困った先生だ……

「とにかく、あなたの両親に私が一度逢いたいと言ってると伝えて! 悪いようにはしないから」

 そこで診察は終了です。

「美彩先生、何故ここに?」

「うん、今日帰るからって診療所に寄ったら村立病院にいるって雫さんが言うから」

「もう、帰っちゃうんですね!」

「そうね、飛鳥さんの事をちょっと見に来ただけだから」

「はい、ありがとうございます」

「うん、さっきの子助けてあげてね!」

「はい」

 そして、美彩先生は帰って行きました。

今度はGIDの患者さんが…… 何だか昔の私を思い出します。あの子の両親が解ってくれれば良いんですけどね……

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