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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第二章 真実
12/55

12 奥井姉妹の秘密

お待たせしました第12話を更新しました!


明日、診療所へ行きますと穂乃花さんは言いました。彼女は何を知っているのでしょうか……

 私が穂乃花(ほのか)さんと別れた後、先輩達もロビーへ戻って来ました。

飛鳥(あすか)はまたコーヒー牛乳なの!」

 えっと、コーヒー牛乳って定番じゃないんでしょうか……

「でも、お風呂上がりに飲むと美味しいですよ!」

「まあ、そうね! でも、冷たい飲み物ならなんでも美味しいと思うけど」

「それならビールとかでも良いですよね!」

 華純(かすみ)さん、調子乗りすぎです。

「私はやっぱり炭酸飲料が良いですけど、コーラとかラムネとか」

 (しずく)、もういいから……

「それより先輩、穂乃花さんが……」

「そうよ、こんなくだらない事言ってないで早く話をしなきゃ!」

 いや、先輩が言い始めたんですけどね…… って違うんです!

「そうじゃなくて、明日穂乃花さんが診療所に来るんです」

「えっ、どういう事?」

「私が温泉からロビーに来た時、穂乃花さんがいて、晴翔(はると)君のご両親の事を訊いたら、明日診療所へ来ますという事だったんです」

 先輩もそれを訊いて驚いているようです。

「それじゃ、晴翔君のご両親が何処に住んでいるのか判るのね」

「はい、これでまた、晴翔君の事が判るかも知れません」

 それが判れば、また治療に進展があるかもです。


 翌朝、先輩は気になりながらも村立病院へ行ってしまいました。診療所の待合室にはチラホラと患者さんがいらっしゃいましたけど、その中に穂乃花さんの姿はありません。まだ、時間的に早いですからね!

浜田(はまだ)さんどうぞ!」

 華純さんが患者さんを中に入れました。

「あっ、慶子(けいこ)先生おはようございます」

「あっ、おはようございます……」

 いや、最初からこれは…… まあ、浜田さんは認知症ですから仕方ないです。

「浜田さん、今日は慶子先生じゃなくて飛鳥先生だよ!」

 華純さんがそう教えてますけど……

「あれ、そうだっけ」

 はあ、名前とかは、よく忘れてますよね、それとも私は嫌われているのかな…… でも、最近は忘れずに週一で来てもらってますので良いかな。

「それじゃ浜田さん計算をやってみましょうか」

 計算は百から七を引いていく計算です。

「百引く七は?」

 華純さんが一緒にやってますけど……

「えっと、九十三」

「九十三引く七は?」

「えっと、八十七!」

「あっ、惜しい」

「八十八だ!」

「あーっ、上にいっちゃった」

「ありゃ、違ったか」

 いや、クイズゲームじゃ無いんだけど…… 五十一まで進んだところで、大体間違っているのでここで終了です。次は時計の絵を描いてもらいましたけど…… 時計の絵は綺麗に描けてます。

「それじゃ、十時十分の針を描いて下さい」

 そうすると短い針は十の所にありますが、長い針が三の所と六の所に、なんと針を三本描いています。

「うーん、テストの結果はあまり良くないけど…… 話し方とかはあまりお変わり無いようですね」

「いや、物忘れが多いだけですよ、慶子先生!」

「はあ、だから今村飛鳥(いまむらあすか)です」

「ありぁ、違ったか! ハハハ」

 うーん、ひょっとして慶子先輩が良かったのかな…… これは駄目ですね。

徳田(とくだ)さんどうぞ!」

 次の患者さんは風邪のようです。

「どうされましたか?」

「えっと、風邪をひいたみたいで……」

「症状はどんな感じですか?」

「とにかく咳が止まらなくて……」

「雫、熱は?」

「はい、三十九度六分です」

 そういう事で聴診器で肺の音を聴きます。

「徳田さん、ちょっと冷たいですよ」

『ヒュー、ヒュー』

 ちょっと音が可笑しいですね…… 次は咽頭と扁桃腺を確認します。

「口を開けてください。うーん、炎症がありますね…… 華純さんX線の準備をお願いします。

「先生、X線ですか?」

「一応、肺炎ではないと思いますけど診ておかないとですね。雫、採血して! 検査は検査キットで私がやるから」

 私が血液検査をしてる間に華純さんにレントゲンを撮ってもらいました。X線の結果、気道の下が白くなってます。採血の結果も、ちょっと数値が高いので……

「徳田さん、肺炎ではないけど、気管支炎を起こしてます。気道の下の方が炎症を起こしてます。熱も高いので点滴をします。雫、ネオフィリン注250mgバッグを準備して!」

「はい」

 という事で取り敢えず患者さんが途絶えたので、診療は終わりですけど、徳田さんはまだ、点滴中です。

「穂乃花さんは来てる!」

「飛鳥先生、まだ見えてないです」

 うーん、ひょっとして来ないのかな…… それから数分後の事です。

「飛鳥先生、患者さんです」

「はい、診察室に入れて」

「はい、中へどうぞ!」

 そして、診察室へ入って来た女性を見て私はびっくりしました。

「飛鳥さん、元気そうね!」

 えっ、どうしてここに……

美彩(みさ)先生! どうしたんですか」

「あの、すみません。健康保険証をお願いします……」

「ぷっ、フフフ」

 華純さんがそう言うので、美彩先生は堪えきれず吹き出してしまいました。

「えっ、どういう事ですか?」

 華純さんは未だに訳が判らないようです。

「華純さん、こちらは患者さんじゃないから」

「えっと……」

「ごめんなさいね、私は飛鳥先生の友達なの」

 すると華純さんもようやく理解したようです。

「あっ、美彩先生だ!」

「うん、雫さんも元気そうね」

「はい」

 雫も、美彩先生のそばに来ました。

「華純さん、こちらは上杉美彩(うえすぎみさ)先生、私の実家のそばでクリニックをしてるの」

「ああ、飛鳥先生の主治医の方ですね」

「えっと、それは……」

 何だかややこしいな……

「それは、私の主人の方ね! 私の専門は外科と内科と小児科だから、とは言っても今はほとんど内科かな」

 美彩先生も元気そうだけど……

「先生、どうしたんですか?」

「うん、私もたまにはゆっくりしたくて温泉に来ちゃった! 飛鳥さんとも一緒に入りたいなと思って」

 えっと、私は一緒で良いんでしょうか……

「あの、先生は何処にお泊まりですか?」

「えっと、確か湧水庵だったかな」

 そうなんだ、一人で来てるの? クリニックはお休みなのかな…… その時、ベッドの方から声がします。

「あの、先生…… 点滴終わりましたけど」

 あっ、そうでした。徳田さんがいました。

「あら、まだ患者さんがいらしたのね」

「はい、気管支炎で点滴を」

 美彩先生はX線写真を見ています。

「うん、立派な気管支炎ね」

「先生、勝手に見ないでください」

 立派な気管支炎って、どういうの?

「お薬はどうするの?」

「えっと、ライトゲンシロップを処方しようと思ってます」

「うん、そうね、ジヒドロコデインリン酸塩が入ったお薬は咳や痰を鎮める働きがあるからね」

 華純さんが準備したお薬を美彩先生が徳田さんに説明しながら渡してます。美彩先生は遊びに来てるんじゃなかったの……

「先生、午前の診療は終わりです」

「飛鳥さん、一緒にお昼を食べに行きましょうか!」

「あっ先生、私達はお弁当があるんです」

「あら、そうなの」

「先生もご一緒に如何ですか」

 私が美彩先生を誘いますけど……

「でも、お弁当が余分にあるかな」

 雫の言う通りそこが問題です。

「でも、ひとつくらい余分があるかも知れないので訊いてみましょうか」

 華純さんが扇屋さんに訊いてくれています。

「美彩先生、でも湧水庵にお昼があるんじゃないですか?」

「ううん、お昼は取ってないの」

 という事は最初から私とお昼を食べるつもりだったのかな……

「あっ、ひとつ余分があるそうです」

「美彩先生、それじゃ一緒に食べましょうか」

「ええ、食べましょう」

 そういう事で、お昼休みです。


 お昼ご飯を食べてゆっくり寛いでいるときでした。

「ピンポーン!」

 あれ、誰か来たようですけど、急患でしょうか……

「あっ、私が出ます」

 そう言って雫が対応します。

「あっ、少々お待ちください」

 うーん、どうやら急患みたいですね……

「飛鳥先生、穂乃花さんですけど……」

 えっ、穂乃花さん。

「それじゃ、診察室にお願い」

「はい」

 私が診察室へ移動しようとした時でした。

「あら、急患なの?」

 美彩先生に声を掛けられました。

「いえ、患者さんの事でちょっと話を……」

「そう、必要な時は呼んでね」

「はい、その時は……」

 まあ、話をするだけだから……

「穂乃花さんお待たせしました」

「先生、お昼休みにすみません。他の人には聞かれたく無かったので」

「はい、それで晴翔君のご両親は、今どちらにお住まいですか」

「晴翔は、川本市に住んでいました」

 えっ、何…… どういう事?

「最初は家族三人で仲良く暮らしてました。でも、晴翔が小学一年生の頃、父親が暴力を振るうようになって…… 晴翔も父親に殴られながらもやり返していたんですけど」

「それは母親にも暴力があっていたんですか」

「はい……」

 穂乃花さんはそう返事をすると俯いてしまいました。

「あの、ひょっとして晴翔君の母親というのは…… 穂乃花さんなんですね」

 私がそう言うと、穂乃花さんはコクッと一度だけ頷きました。

「でも、私は母親失格なんです。私は晴翔を置いて逃げたんですから……」

「えっと、それはどういう事ですか?」

 私が訊くと、穂乃花さんは俯いたまま……

「主人が会社へ行っている間、私は荷物をまとめて家を出ました。これ以上主人の暴力に耐えきれなかったので…… でも、やっぱり晴翔が小学校から帰って来るのを待ってるべきでした」

「そのあと穂乃花さんはどうしたんですか?」

「私は姉がいる清川村へ帰って来ました。その時、姉に言われて星野家(ほしのけ)のお母さんにお電話をして晴翔を迎えに行ってもらいました」

 穂乃花さんは俯いたまま涙が膝の上に置いた手の甲にポツポツと落ちています。よほど辛かったのと晴翔君にも、申し訳なく思っているんでしょう。

「DVがあったんですね…… 晴翔君は穂乃花さんが母親だと解っているんですか」

「いえ、私が家を出てから晴翔が二十歳になるまで逢えなかったので……」

「それは、何故ですか」

「最初は川本市の学校に通わせた方が良いという事で、星野家から学校へ通ってましたけど、中学生になった晴翔は不登校になって引き籠もってしまったんです。原因は虐めだったようです」

「高校は……」

「高校は通信制の学校に行って卒業してからうちの旅館に来たんですが…… その時から妙な事を言っては急に怒ったり、泣いたりで、姉の友人の先生に相談したのですが、専門外だという事で、良い先生を紹介してもらおうという時に、飛鳥先生に逢ったんです」

 そういう事は晴翔君のイマジナリーフレンドは、やっぱり湊君…… 父親からDVを受けてる時にやり返したという事は湊君が晴翔君を守るために…… うーん、かなり見えて来ました。それにしても大事な事を姉妹で隠していたなんて…… まあ、気持ちは解りますけどね。

穂乃花さんは晴翔君の母親だったんですね…… これで少しは状況が変わるでしょうか……

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