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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
第二章 真実
11/55

11 真実は何処に……

お待たせしました第11話を更新しました!


川本市医療センターでの検査と見学が終わり診療所へ戻って来た飛鳥ですが、晴翔君の事は今ひとつ判らずじまいでした。

 朝田(あさだ)さんの面会も終わり、一般病棟へ戻って来ました。

飛鳥(あすか)先生、どうでしたか?」

 どうでしたかと訊かれても、保護室とか自殺とか聞くと、やっぱり普通とは言い難いですね……

「かなりご苦労されてるようですね」

 朝田さんも保護室へ入った事があるんでしょうか……

「まあ、今日は平和な方でしたよ! ごくたまにですけど火災報知器を鳴らしたりする人がいたり、いきなり暴れ出す人もいるんです」

「その時は看護師さんや先生だけで処置するんですか?」

「ナースマンを呼びます」

「ナースマンですか……」

 ナースマンは男性の看護師さんの事ですよね……

「うちのナースマンは筋肉隆々ですからね!」

 ハハハ、その光景は見なくても良いかな……

「ところで、晴翔(はると)君に何か薬を処方してますか」

「はい、晴翔君はちょっと鬱気味ですので、もう少し積極的になれるようにレクサプロを処方してます」

「うん、なるほど!」

「他にも何か処方した方が良いでしょうか?」

「いやそれで充分でしょう。DIDの薬なんて無い訳ですから」

 長谷川(はせがわ)先生はあまりお薬を処方しない方針という事でした。もちろん医師によって違うとは思いますが……

「鬱気味の人って姿勢が悪いでしょう。だから肩が凝ってる人とか多いんですよ。ほぐしてあげると意外と笑顔になる人多いんですよ! まあ、血行が良くなると結構良いみたいですよ!」

 長谷川先生の話は説得力もありますけど、最後はダジャレですよね……

「それと、うちの入院患者には中庭にある花壇でお花を栽培してもらっています。もちろん作業療法士の指導のもとでね! 身体を動かす事は重要なんですよ」

「確かにそうですね」


 ひと通り見学も終わりました。やっぱり精神科医療センターって大変なところですね。結局私達は夕方までお世話になってしまいました。そろそろ失礼しましょう。

「長谷川先生、今日は色々とありがとうございました」

「いえ、いつでも連絡をください。お手伝い出来ることがあれば力になります」

「はい、よろしくお願いします」

 これで検査と見学は終わり、これから清川村(きよかわむら)へ戻ります。帰りの車の中で私は晴翔君に声を掛けました。

「晴翔君どうだった?」

「えっ、あーっ…… (りん)です」

 あっ、そうか上條(かみじょう)PAでソフトクリームを食べるんでしたね、折角なので私も食べようかな! それにしても早々に凛ちゃんと交代してるとは……

 そういう事で、私達は上條PAに寄りました。

穂乃花(ほのか)さん、早く!」

 こうやって見てると普通の親子なんですけどね……

「折角だから私達も食べましょうよ」

 晴翔君と穂乃花さんを見ていた時、(しずく)がそう言いました。

「そうだね、雫はまたミックス?」

「いえ、今日はバニラの気分です。先生もバニラでしょう」

「そうね、今日はチョコにしようかな……」

 結局私達四人でソフトクリームを食べた後清川村へ戻りました。診療所に着いたのは夕方の六時半でした。

「飛鳥、遅かったね!」

 慶子(けいこ)先輩もまだ診療所に残って仕事をしています。

「はい、色々と見学をしてたらセンターを出るのが四時を過ぎてしまいました」

「晴翔君の検査はどうだったの?」

「やっぱりDIDで間違いないです。ただ、イマジナリーフレンドが誰なのか、いつ頃から多重化してたのかは、はっきりしてません」

「まあ、そういう所が判ればカウンセリングも治療もやり易くなるのかな!」

「はいそうですね、そうなると良いんですけどね」

 それに晴翔君がDIDになった原因も判ると良いんですけどね……

「ねえ飛鳥、この事を晴翔君のご両親に伝えなくて良いの!」

 あっ、確かにそうですよね…… でも、晴翔君はアパートで一人暮らしですし…… まあ 麻子(あさこ)さんに訊けば判るでしょうか? 一応晴翔君は旅館の従業員な訳だから。

「明日、麻子さんに訊いてみます」

 私がそう言った時でした。

「今晩、温泉に行くから一緒に行かない」

 先輩にそう誘われました。まあ、そういう事なら……

「行きます!」

 えっ、真っ先に返事をしたのは雫でした。

「飛鳥はどうする?」

 どうするってさっきの話の流れからしたら、それに雫が行くんなら私も……

「はい、行きます」

「私も行きます!」

 今度は華純(かすみ)さんが言いますけど……

「華純には訊いてないから」

 先輩、それは酷くないですか……

「えーっ、訊いてくださいよ!」

 ほら、華純さんのあの悲しそうな顔。

「どうせ訊かなくても来るでしょう」

「はい、行きますよ!」

 えっと、さっきの悲しい顔から一転して何も無かったように笑顔で返事をする華純さん、何だかあの二人は仲が良いのか悪いのか判りませんね!


 そんな訳で、只今午後十時五十分です。今からえびす屋さんへ行きます。

「飛鳥、徳間(とくま)先生の薬の事なんだけど……」

 車の中で先輩が心配そうに訊いて来ました。

「はい」

「あれって、本当に副作用は無いの?」

 えっと、またその話?

「うーん、まったく無いとは言えませんけど、そんなに悪いものじゃないですよ」

「そうなんだ、この間徳間先生が他の患者さんにその事を話しているのを聞いたから」

「えっ、他の患者さんにですか!」

「うん、得意気に話してたよ、今村先生に処方してもらったって!」

「えっと、それはちょっとまずいですね……」

「えっ、でも悪いものじゃないんでしょう」

 あっ、つい言葉に出してしまいました。

「あの、実はあれ…… ただのビタミン剤なんですよ!」

「えっ、ビタミン剤って飲めば眠れるんですか!」

 横から華純さんが口を挟みますけど……

「華純、そんな訳ないでしょう! それって飛鳥どういう事なの! 徳間先生はとても喜んでいたのに」

「えっと…… プラセボ効果を試してみたんですけど」

「プラセボ効果って、新薬の治験とかでよく言われてる事よね」

「はい、新薬だからこれを飲めば治る! そういう思い込み、用は気持ちの持ちようで免疫力が働いて治るとかいうやつです」

「それじゃ、徳間先生にビタミン剤を渡して様子を見ていた訳ね」

「はい、実は私も高校生の時、上杉(うえすぎ)先生にそうしてもらって夜眠れるようになりました」

 まあ、あれはDHAとEPAでしたけど、あれ慶子先輩は何だか思い詰めたように考えてますけど……

「飛鳥、それは徳間先生には言わない方が良いかもね」

 まあ、そうなんですけど、他の患者さんに言ってるんですよね…… この辺が潮時かな。

「徳間先生には私から話します」

「でも、そんな事をしたらまた眠れなくなるんじゃ……」

「たぶん大丈夫です。私も大丈夫でしたから」

 あれから二週間以上眠れてる訳だから大丈夫でしょう。

「ところで飛鳥、上杉先生って誰?」

 えっと、そういえば慶子先輩は知らないですよね……

「私のGIDの主治医です」

「えっ、主治医は(かえで)ちゃんじゃなかったの?」

 先輩も本郷(ほんごう)先生の事を楓ちゃんと言ってるんですね……

「本郷先生は、私が橋本大学に行く事になったから上杉先生に紹介してもらったんです。橋本市から城南市まで治療に行くのは大変ですから」

 そんな話をしながら温泉街の駐車場に到着です。ここからえびす屋さんまで徒歩ですけど…… 私は初めて気付きました。えびす屋さんの入口の横に小さな扉があり、その横には『奥井(おくい)』と書いてあります。

「先輩、あれって?」

 私が指を差して訊きます。

「あれは勝手口じゃないの?」

「それじゃ『奥井』っていうのは?」

「女将さんとこの名字でしょう」

 そうか、麻子さんの名字は『奥井』って言うんですね…… 私の中では晴翔君のお母さんは麻子さんなんじゃないかと思っていましたけど、晴翔君は星野だから…… やっぱり違うようです。

「飛鳥、行くよ!」

「はい」

 私達はロビーに来ました。

「こんばんは!」

「あっ、慶子先生いらっしゃい! 飛鳥先生、今日はありがとうございます」

「いえ、遅くなってすみませんでした」

「いえ、良いんですよ! 晴翔も良い気分転換が出来たみたいですので」

「あっ、それなら良いんですけど、麻子さんそれでこの事は晴翔君のご両親は知っているんですよね!」

「えっ、ええ、知ってますよ!」

「良かった! ちょっと心配だったので」

「さあ、温泉の方へどうぞ!」

 うーん、晴翔君の事になると麻子さんはちょっと可笑しいんですよね……

 さて、今日の大浴場は洞窟温泉です。ここはサウナは無かったはずですよね。

「はあ、やっぱり温泉は良いですね」

 洞窟温泉は照明が暗く、岩がゴツゴツしていて雰囲気も良いんですよね!

「飛鳥、晴翔君の件はどうするの? あれで終わるつもり」

 慶子先輩にそう言われましたけど……

「でも、他に訊きようがないですよ」

 あんまり言い過ぎても良くないですしね。

「そうね、折角来たけど、今夜は撤退するしかないのかな」

 そうは言いましたけど、折角来たので温泉だけは充分楽しみましょう。

 しばらくして……

「先輩、私は先に上がりますよ!」

「飛鳥、今日は早くない?」

 うーん、ちょっと疲れてるのかも知れないですね。そういう事で私は先にロビーへ行き、定番のコーヒー牛乳を頂きます。

「あっ、飛鳥先生来てたんですね」

 ロビーには穂乃花さんがいました。穂乃花さんにも訊いてみましょうか……

「あの、穂乃花さん」

「はい」

「晴翔君のご両親は何処にお住まいなんですか?」

 私がそう訊くと……

「えっと……」

 やっぱり、何だか困った様子です。俯き加減で何かブツブツ言ってるような……

「あの、穂乃花さん?」

「飛鳥先生、明日診療所へお伺いします」

 そう言って穂乃花さんは固まっています。

「穂乃花さん、それじゃ明日診療所で待ってますね!」

 私がそう言うと穂乃花さんは奥の方へ行ってしまいました。明日、何か判れば良いんですけどね……

晴翔君の事を麻子さんに訊きましたが、何だかはぐらかされてしまいました。しかし、同じ事を穂乃花さんに訊いたら、明日、診療所にお伺いしますという事でした。どうなるんでしょう……

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