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実話怪談

【実話怪談】仮病と幽霊

作者: 七宝

 あれは私が小学3年生だった年の6月、私の誕生月のある日のことだった。私はいつものように仮病で学校を休んでいたのだが、どうも今日は母が疑いの目を向けてくる。


 私は学校を休んだ日はゲームをせず、お絵描きやテレビを見るといった『休んだけど許されそうな遊び』をしていた。学校を休んでゲームなんかしていたら怒られるからだ。


 その日も大人しくお絵描きをしていたのだが、母が「元気そうだな」と言ってきたのである。私の顔がいけなかったのだろうか。お葬式のような顔をするべきだったのだろうか。


「元気なわけないよ、頭痛すぎて死にそうだよ」


「子どもが頭痛なんてやっぱりおかしいわ」


 そう言われて病院へ連れていかれることになった。私は母の言った言葉の意味が分からなかった。子どもは頭痛いって言ったらダメなの?


 ほどなくして超巨大病院にやってきた私は母に連れられ受付を済ませ、問診票を書いて待たされることとなった。


 平日の朝の待合室は老人でいっぱいだ。ぺちゃくちゃぺちゃくちゃと大声で話をしている。お前ら全員知り合いなのかよ。んで元気そうだな。元気なやつは病院来んなよ。お前らのせいで待たされてるんだぞ。と老人にブーメランをいくつか投げ終えた頃に、母が私に言った。


「看護師さんと話したんだけど、MRIやるって」


「MRI?」


「CTみたいなやつだよ」


 え、マジ⋯⋯? 仮病なんだけど。CTみたいなやつ怖いんだけど!


「そこまでしなくても⋯⋯」


「いや、子どもの頭痛はヤバい病気かもしれないからって看護師さんが!」


 どうする? MRIやるか? それとも仮病だって言って謝るか? でもそんなことしたらこれから定期的に仮病が使えなくなる⋯⋯! くそ! どうすれば!


「○○さーん!」


 呼ばれてしまった。実はこの時、私は母が鎌をかけている可能性を疑っていた。確かに席は外していたけれど、トイレにでも行ってただけなんじゃないのか。本当に看護師と話したのか? 看護師がそんなこと言うか?


「うーん⋯⋯分かんないから、MRI撮らせてもらうね」


 本当だった! そりゃ分かんないだろうよ、嘘なんだもん! うー、どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしよう⋯⋯


「うわああーん! うわあああん!」


 私は泣いた。泣くつもりはなかったのだが、精神的に追い詰められていたようで、いつの間にか泣いていた。全部自分が悪いのだが。


「○○ちゃん、頭が痛いのね!よーしよしよしよし、痛いの痛いの飛んでけオラァ!」


「すぐにMRIを撮りましょう!」


 というわけでMRIの部屋に連れていかれた。寝転がれる台があって、でっかいバームクーヘンがついてる。バームクーヘンに頭を入れるんだろうな、と直感で分かった。


 どれだけやっていたか分からないが、恐らく20分くらいはバームクーヘンに入っていたと思う。ものすごい音が鳴っていて、めっちゃくちゃ怖かったのを覚えている。


 結局脳に異常は見つからず、先生がお手上げ状態になりそうだったので正直に仮病のことを言った。これ以上事を大きくしたくなかったからだ。先生は怒らなかったが、母にはめちゃくちゃ怒られた。そりゃそうだよな。ごめんなさい。


 これが1つ目の恐怖体験だ。幽霊は出てこないが、本人からすると恐怖以外のなにものでもなかったのだ。


 家に帰ると16時を回っていた。それから母の説教タイムが始まる。今までも仮病だったのか、これからもやるつもりか、などなど。正直、心配してほしかった。目に見える症状はないかもしれないけど、心はどうだ。そう、その時はただの仮病だった。純粋に朝起きたくなかったのだ。


 18時くらいまで説教が続き、それから罰として自転車で買い物に行ってこいと言われた。1番近いスーパーでも自転車だと30分近くかかってしまうが、自分が悪いので行くしかなかった。


 しばらく走っていると、目の前をねずみ色の服を着た人が走っていることにふと気がついた。あれ、いつの間に居たんだろ⋯⋯


 そんなことを思いながらスーパーに向かっていると、突然前の人が消えた。右にも左にも曲がれる道はなく、真っ直ぐしか進めない道なのに、どこに行ってしまったのか。


 その人がどんな見た目だったか思い出そうとしてもなかなか思い出せなかった。男か女かも分からない。ただ、ねずみ色の服を着ていたことだけは覚えている。目が悪いのと、日が暮れ始めていたこともあってぼやけていたが、確かに私の前を自転車で走っていたのだ。


 過ぎたことなのでまあいっかと思いながら、引き続きスーパーへ向かって自転車を漕いでいた私だが、スーパーの角まで来たところでまたおかしなものを見てしまった。


 そこのスーパーは、車道を挟んで反対側にお墓があるのだが、そのお墓から真っ白のワンピースを着た女性が車道を横切る形で歩いてきたのだ。


 信号は青なので、当然自動車はビュンビュン走っている。そんな中を通ろうとしているのか、この人は。そう思っていると、中央線のあたりで彼女は消えてしまった。消えるところを見たわけではないが、ビュンビュン走っている車の中へ歩いて入っていって、こちら側の車線に出てこなかったのだ。消えたと言っても良いだろう。


 一瞬車にひかれたのかと思ったが、その車線の車の流れは止まらなかった。あの女は、自動車の運転手たちには見えていたのだろうか⋯⋯

 MRIの磁気のせいで頭がどうにかなってたとか?


 私は幽霊は信じない派なので、私の脳がおかしかったのか、瞬間移動の達人をたまたま2人見かけたのかのどちらかだと思っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] MRIは怖いですよね。 大人でも怖いのだから子供はもっと怖いでしょう。 最後の女性は何者だったのでしょうか…。 [一言] 仮病はいけませんが、説教2時間もなかなか凄いですね。
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