表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/79

6ー6 偶然の産物

 仕事が終わり、私とランはロベールのカフェ「コロンボ」に向かった。

 店内に入るとすでにヤツエさんはテーブル席に着席していた。彼女は私たちを見ると椅子から立ち上がった。

「ラン! 久しぶり!」

「……元気そうね」

「高校卒業以来じゃない? あらら、あれからランもすっかり年齢を重ねたね」

 ヤツエさんがランの全身を眺めて言った。

「そのセリフ、そっくりそのままお返しするわよ。ちょっと肌、くすんでない?」

「ひっどーい! モナミさんは若い人にも引けを取らないって言ってくれたのに!」

「モナミ、そんなこと言ったの?」

 お互いに挨拶のように憎まれ口をたたきあう。気を許した者どうしだからこそできるやりとりに思えるのだが、本当に仲が悪いのか。

「お二人とも、まずは座りましょうか」

 私は着席を促した。二人の関係性がまだよく分からない。それでも、顔を合わせればどことなく緊張感が漂う。

 ロベールが注文を取りに来たので、私はいつもの、と言っておいた。

「うちで婚活するんだ?」

「そう」

「オミオの結婚式に行ったんだって?」

「まあね。ランはどうして来なかったの?」

「私は……あの二人の馴れ初めは知ってるし、その気になればいつでも会えるから」

「ズルいなあ、ランは。昔からそう」

 沈黙が降りてくる。なんという空気だ。私は見かねて話を本筋に戻した。

「ヤツエさん。ランに聞きたいことがあったんじゃ……」

 ヤツエさんはそうだった、と言って自分の鞄から何かを取り出した。

「これなんだけど」

 差し出されたそれは、薄い冊子だった。

 表紙に「穀粒こくりゅう」という題字がある。

「これは?」

「カナヅ高校が毎年発行する生徒会誌。これは私とランの卒業年度の号」

 私は手に取ってページをめくってみた。

 はじめに校長、生徒会長のことばがあり、生徒会の一年のあゆみ、学校行事の名場面集、各クラスと部活動の紹介など、見た目よりも盛りだくさんな内容となっている。先生へのインタビューもあった。

「ラン、私が何を言いたいのか分かる?」

「……あれのことかしらね」

 再び沈黙が流れる。二人には通じ合うのかもしれないが、私には何が何だか分からない。

「えっと……あれとは何ですか?」

 私は説明を求めた。

「モナミさん、三年二組のクラスを紹介するページを開いてみて」

 ヤツエさんに言われて、そのページを開く。

「生徒ひとりひとりのコメントが載ってるでしょ。オミオくんのを読んでみて」

 三年生のクラス紹介は特別で、ひとクラスニページが割かれている。全員が写された写真または描かれたイラストと、クラスメイト全員の一言、担任のことばが掲載されている。

 一言のテーマは「十年後の自分へ」。私はオミオくんのものを探した。

 あった。しかし、読んでみたものの、意味が分かりかねる。短くて、難しい文章というわけではないが、卒業生の言葉としては少し変わっている。オミオくんの言葉はこういうものだった。


「朝食は完成してますか?」


 私は顔をあげて、ランとヤツエさんの表情をうかがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ