6ー1 偶然の産物
青春に後悔はつきものだ、と思っている。
あのときああしていれば、もしかしたら……と私は特に人間関係において、大人になった今でもあの頃の至らなさを思い返しては嘆息する。
もしも、一片の悔いも残さず青春時代を送ることができたのなら。
どんな状況でも常に冷静で、器用に、円転滑脱に立ち回ることができたのなら。
そんな人がクラスメイトにいて、未熟な私たちに進むべき方向を示してくれたのなら。
ありえたかもしれないと、現状はもっと違うものになっていたかもしれないと、過去には戻れないと分かっているのに、その可能性をなかなか諦めさせてくれないのが、青春だけが持っている熱の厄介なところなのである。
春である。
去年の秋に私がレイダンの結婚相談員に着任してから半年が経過したわけだが、嬉しいことに、レイダンを利用した人から好意的な声が寄せられるようになった。新たに入会する人も増加しており、これは私だけでなく、スタッフが一丸となって業務改善に取り組んだことで出せた成果だった。最初の頃はどうなるかと思ったが、こうして成果が目に見えてくると、私もここに来た意味を実感することができる。皆で頑張れば、これからレイダンはさらなる進化を遂げていくことだろう。
さて、肝心の成婚退会者の数はというと、まだまだ伸び悩んでいた。会員が増えて層が厚くなれば、より多くの人を円満な成婚へ導ける可能性が高くなる。ともすれば中だるみしそうになる時期だが、初心を思い出して、また日々の仕事に励んでいきたい。
成果が意外な形で現れたこともあった。
ちょうど半年前に入会したタカオさんを覚えているだろうか。先日、彼は交際中だった女性と結婚し、レイダンを退会していった。といっても、レイダンの会員と結婚したわけではない。相手は学生時代の友人だそうだ。それまでは単なる友人としてしか見なしていなかったが、婚活に取り組んだことによって、身近な彼女の魅力に気づき、異性として意識するようになり、交際に発展したのだという。
私はタカオさんの交際がうまくいくように、時に彼からの相談に応じたりした。相手が会員でないからといって、勝手にやってください、と見捨てるようなことはできなかった。タカオさんの婚活を見続けてきた私だからこそ、彼のレイダンで積み重ねた婚活の経験が役に立っていると感じる場面が多々あった。彼がゴールインするまでの道のりを見届けることができて、本当に良かったと思っている。
タカオさんのように会員以外との成婚によって退会していくケースは「ことぶき退会」と呼ばれる。中途解約扱いとなり、成婚料は発生しない。代表は「割に合わないことを……」と文句を言いそうだが、会員である限り親身になって相談に乗ってしまうのが結婚相談員というもの。タカオさんのようなケースは、今後レイダンでは増えていくだろうと予想される。
結果的にタカオさんはレイダンの会員ではない人と結婚したが、彼にとってレイダンに入会したことは無意味なことではなかったはずだ。
入会して恋愛というものを学び、自己を見つめ直したことで、彼はこれまで気づかなかった恋に気づくことができた。それというのも、結婚相談員の存在があったからである。もうけにはならないかもしれないが、私たちがそればかり追求していれば、今回の成婚はありえなかっただろう。タカオさんは相手の女性を私に紹介するとき、こんなに息が合って自然体でいられる相手は他にいない、と言っていた。その言葉に、きっとこの夫婦なら大丈夫だろうと安心することができた。
このように、どんな形であれ、幸せな成婚が増えていくのは成果と言えるだろう。




