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5ー9

 お見合いを終えた私たちはコロンボを出てレイダンに戻ることにした。私とマノさんが並んで前を歩き、その後ろでランとレイさんが同じようにして歩いた。この間、マノさんは終始無言だったが、どこかそわそわしていた。頬が紅潮していたのも寒さのせいだけではない気がした。レイさんにいきなり交際を申し込まれて、彼女も少なからず気分が高揚しているのではないか。

 駐車場に着くと、私たちは解散した。自分の車で帰っていくマノさんとレイさんを見送って、私とランはレイダンの中に入った。

 私たち二人は、この日の返事を聞くために、事務室でそれぞれ担当している二人から電話がかかってくるのを待った。

 そろそろ二人とも自宅に帰って落ち着いた頃だろうか。温かいお茶を飲みながら作業していると、事務室の電話の着信音が鳴った。

 ランが受話器を取った。

「もしもし……はい、お疲れさまでした。ええ、分かりました。お気持ちに変わりはないと。そのように伝えます。いえ、まだです。はい、待っててくださいね」

 ランは受話器を置いた。

「レイさんから。やっぱり交際したいって。あの様子だと、もしマノさんが断りたいって言ってきたら、地獄の底まで落ち込むんじゃないかな。モナミ、いい返事は期待できそう?」

「うーん、どうかな。私としても、レイさんを強く推したい気持ちはあるんだけど……」

「どうしたの?」

 もし今の私がマノさんの説得を試みようものなら、気が逸るあまり、レイさんを売り込むためのセールストークめいたものをしてしまう気がした。マノさんを尊重しているつもりでも、レイダンの利益のために彼女の気持ちを軽視するような自分もまた存在していることに気づき、嫌悪感を抱いてしまう。

 そう言った私をランは笑ってたしなめた。

「気にしすぎよ。それに、仕方のないことでもある。私たちだって結婚を成立させるために働いてるんだし」

「そうかな……」

「どうしても割り切れない時は、こう考えればいい。モナミは、あの二人がうまくいくところ、見たくないの?」

「もちろん見たいよ」

「二人がうまくいくはずだと思ったら、その直感に従ってみればいい。私たちが信じなくて、どうするの」

 とその時、再び電話が鳴った。ランが出た。

「……ええ、分かりました。モナミ、マノさんから」

 私は差し出された受話器を受け取った。

「お電話代わりました、モナミです」

「もしもし……マノです。先生、今日はありがとうございました」

「お見合い、お疲れさまでした。それで、どうですか。レイさんと交際してみたいですか」

「まだ、決められなくて……。先生はどう思いますか」

「そうですね……。私は、二人はとてもお似合いだと思います。レイさんはもっとマノさんのことを知りたがっていましたよね。マノさんも家族の話をしてみるのはいかがでしょう。きっと正面から受け止めてくれるはずです。ここまでお互いを必要とすることなんて、なかなかないですよ」

「私、レイさんと交際したいのかな。まだ実感が湧かなくて……」

「会ったばかりですからね。当然の反応です。まずは交際してみて、徐々に好きになっていけばいいんです。交際したからといって、絶対に結婚しなきゃいけないわけではありません。気持ちが合わなければ断っても構わないんです。断りにくい場合は間に立ちますので、そうなった時はいつでも相談してください」

「……分かりました。正直、不安もあるんですけど、レイさんと交際している自分を想像したら、少しわくわくしてきました。先生、レイさんとは交際してみたいと思います。よろしくお願いします」

「承知しました。では明日、その旨をレイさんに伝えます。そのあとで、レイさんの連絡先をお教えしますね」

「よろしくお願いします」

「実をいうと、レイさんからはもうマノさんと交際したい気持ちは変わらない、という返事をいただいているんです」

「ああ……よかったです」

「すぐにお付き合いが始まると思います。……そうだ。マノさんに一つお願いしたいことが」

「なんですか」

「二人の交際の進捗状況を定期的に報告していただきたいんです。もしいちいち相談所に出向くのが大変なら、こんな風に電話で構わないので」

「ああ、はい。報告すればいいんですね。分かりました」

「ありがとうございます。助かります」

「……すみません、報告は、電話じゃなくてメールでもいいですか?」

「ええ。でもどうして?」

「電話はどうも苦手で……。私の声、変じゃないですか?」

「いえ、そんなことはありませんよ」

「メールなら、考えをまとめてから送れるし、送る前に文章を手直しすることもできるし。そっちの方が私向きかなと」

「ええ、では、そのように。お願いいたします」

 私は電話を切った。

「モナミ、どうだった?」

 ランが聞いてきた。

「交際するって。なんとかその気持ちを引き出せたよお」

 私はプレッシャーから解放されて、全身から力が抜けていった。

「よかったじゃない。レイさんも喜ぶわ」

「そうだね」

 ひとまず、私たちは安堵する。それも束の間だった。交際が決まったからといって、私たちの仕事はここで終わりではない。成婚にたどり着けるように、的確なアドバイスを挟みながら、彼らを導いていかなくては。

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