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ランはレイさんをどんな風に説得したのだろう。彼から承諾の返事は難なく得られたという。早速、私たちは二人のお見合いのセッティングに取りかかった。日取りは、気が変わらないうちに行おう、ということで、忙しい二人になんとか都合をつけてもらって、今週の土曜日に決まった。そして、前回の反省から、当日は私とランが同席することにした。場所は、レイダンから程近いロベールのカフェ「コロンボ」を選んだ。
そうして迎えた初顔合わせの日。その一部始終は、次のようなものである。
昨夜から降り続いた雪で街は白く覆われていた。マノさんと私はレイダンの駐車場でレイさんの到着を待っていた。寒さに身を縮めながら、ふとエントランスに目をやると、自動ドアが開き、中からランが現れたのが見えた。ランは私たちのもとへ寄ってきた。
「今電話があったわ。レイさん、少し遅れるみたい。この雪で交通に影響が出てるって」
「仕方ないね……。じゃあ、私とマノさんは先にコロンボに行ってるね」
マノさんは寒さと緊張からかずっと震えていた。早く暖かい場所に移動してリラックスした方がよかった。
二人で雪道をよろよろと歩き、十分も経てば、コロンボの前に到着する。私はかじかんだ手で扉を開け、店内へと足を踏み入れた。マノさんは私のあとに続いて入店した。
「いらっしゃいませ。マノさまですね。こちらへどうぞ」
店主のロベールが私たちを出迎え、窓際のテーブル席まで案内した。いまだかつて見たことがない丁寧な応対で、私はちょっと笑ってしまいそうになった。
「ごゆっくりどうぞ」
私はマノさんの隣に座った。そして、お辞儀のあと奥へ戻ろうとしたロベールを呼び止め、今回の謝意を伝えた。
「今日はありがとね。急な頼みを聞いてくれて」
「なんの。レイダンのためなら僕は協力を惜しまないよ」
ロベールが引っ込むと、マノさんは落ち着いた表情でメニュー表を眺め始めた。暖房が効いた店内で、彼女の緊張も多少はほぐれただろうか。
この日はお見合いのためにコロンボを貸し切った。だが、そこまでしなくてもよかったのかもしれない。店の明かりがついていても誰も足を止めない。相変わらずこの店は不人気だった。
「どうですか? 今の気持ちは」
レイさんを待つあいだ、私はマノさんに尋ねてみた。
「正直、不安です……。どんな展開になるんでしょう」
「何かあれば、フォローしますので……。勇気をだしてお互いのことを話し合ってみましょう」
「ありがとうございます。心強いです」
再びマノさんは手元のメニュー表に目を落とした。私はその横顔を見ながら、彼女が沈黙を破るのを待ってみた。マノさんはあまり自分から話したがらない人だった。
とここで、ドアベルの音が店内に鳴り響いた。それはレイさんの到着を意味する音だった。




